図書紹介(その2) 本文へジャンプ
図書紹介ーE


「北の百姓記」  齋藤たきち著
  
 東北出版企画 定価2625円
   2005年5月8日 初版第1刷発行
   
   昭和10年(1935年)2月、山形県生まれ。
   現在、水田稲作90アール、果樹60アール、
   野菜15アールを耕作する複合農家。


70年を越える自分史と言っても良いだろう。
政治や広域農協に見切りをつけた著者は、今は「農民」というより「百姓」として生きる決心をした。それは「自給自足」を生活の根とするライフ・スタイルである。

山形県内では今も、“何代も続いた農家”が土地とむらをすてて都会に出てゆく流れは止まっていない。・・・山形県のみならず「日本農業」を支えているのは、60代から70代にいたる高年齢層が中心で、"きびしい作業の割りに低い所得”の現実がある。バブルがはじけたとはいえ、「拝金主義」が根強いが、こうした生き方に背を向けて活きる職業のひとつが「農業」であり、「農」で活きることだといえるだろう。“自らの意思”で「農ある生き方」を撰んだ、所謂“脱都会・脱サラ”による「新農民」の誕生が、小さいながら“社会潮流”になりつつある鼓動を感じると著者は述べている。

「北の百姓記」続   齋藤たきち著
    東北出版企画 定価2310円
   2006年9月25日 初版第1刷発行

「北の百姓記」続編では「百姓としてどう生きるか」を、四季そして月ごとの農作業の手順、更には丹精した果物 [山形県特産として高い評価を得ているソルダム(プラム)・佐藤錦やナポレオン(さくらんぼ)・ラ・フランス(西洋梨)など40種類] を産直として愛好者に届ける際の添え状「齋藤農園だより」の数々は「百姓道」を貫く素晴らしい描写が随所にあり、著者の真摯な生き方には農作業を知らない都会の人が読んでも分りやすく感銘を受ける。さらに付け加えると、果樹栽培の難しさ(土壌作り・颱風・異常気象・病害虫・野鳥の被害など)を克服して収穫した果物の美味しさが、夫々軽妙な表現の文章の添え状によって、一層増している様にも思えてくる。
北の大地(著者が生まれ育った自分史の場、富神の里)みちのく山形盆地のともすると厳しい自然や生活環境を克服しながら、果樹栽培を含む魅力ある農業の重要性を真壁仁の思想を具現化した自らの体験で説いた好著であり、このような背景があって今回第22回真壁仁「野の文化賞」(註)に撰ばれたのは当然と思われる。
今回「野の文化賞」を受賞したのは「北の百姓記」続編ですが、前編も合わせて購読されることをお勧めする次第。(ご購入はお近くの書店に注文されるか或いはインターネットで「東北出版企画の本を購入(セブンアンドワイー本ー)」のサイトで注文されるとお近くのセブンイレブンで24時間受け取れます。)《東北出版企画の本を購入》をクリックすればサイトが開けます。》

註:野の文化賞は、農家や東北地方のきびしい生活を題材とした詩や評論で知られる思想家・文化活動家として活躍した真壁仁(山形県出身、1984年没)を記念し、85年に創設された。





半分田舎の生活」
   生きもの観察と自然の恵み
   放送大学山梨学習センター所長 兎束保之著

   発行所:ヒューマンウィングス有限責任事業組合
    2006年1月20日第1刷発行

長元坊・タラノキの芽・蝸牛・林檎・ミジンコなど都会では普段目にすることの難しくなった30種にのぼる身の回りの動植物の生態系を、自らの専門分野の微生物工学で夫々読み易いエッセイ風に自己表現。読者もいつのまにか“生きもの観察と自然の恵み”を享受する世界に引きずり込まれ、読後結構物知りになった気がします。