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C】 調査の現場で見聞した知識や経験


C-2 : クライアント時代の学習


 調査会社時代に痛感した問題を改善目標とした!


受注者(調査会社)側から発注者(クライアント - 外資系メーカーの菓子事業本部)側に移り、正社員時代(14年)と定年後に継続勤務した嘱託時代(5年)の計19年間、マーケティングリサーチ / コンシューマーインサイト の部署で「消費者調査」に取り組んできました。

クライアント側に移ってからは、調査の「品質」や「信頼性」を保つために、調査会社時代に痛感したことを踏まえて <調査対象者に負担をかけ過ぎない> と <調査現場の実情を考慮した調査設計や調査票作成> を心がけてきました。



 調査会社では得られなかったクライアントでの様々な知識と経験!


調査会社時代とは異なったアングルで調査を究めるチャンスが到来し、この段階で「調査の本質」を理解・認識することが出来ました。


 有意義だった定性(質的)調査のオブザベーション

2,300名の調査対象者(消費者)の ’生の声’が私の栄養剤に!

調査には定量(量的)調査と定性(質的)調査がありますが、クライアント側に移ってから定量調査は19年間に約230プロジェクトを担当しました。 そして、定性調査は座談会形式と One-on-one (一対一)形式がありますが、やはり19年間に約80(座談会 67 + 一対一 13)プロジェクトを担当しました。

その80プロジェクトのうち9割以上を
オブザベーションしました。
人数で言うと、約2,300名の調査対象者(消費者)の意見を座談会 (67プロジェクト x 0.9 x 平均5グループ x 7名) と One-on-one (13プロジェクト x 0.9 x 平均20名) で聞いたことになります。



ひとつのブランドにおいて、同時期に「定量」と「定性」の両面から密度の濃い知見を得れることは、まさにクライアント側にいたからこそ出来たことです。
消費者の生の声は 「人間の心理」 を理解する上で多いに役立ち、また、定量調査の調査設計・調査票作成・分析のためにも有効的でした。

定性調査のオブザベーションは、私がリサーチャーとして成長していく上で、強力な栄養剤となりました。


消費者の声が、問題解決のヒントや手がかりを与えてくれる!

「菓子」というカテゴリーに限定した定性調査でしたが、インタビューの様子を観察したり、消費者の生の声を大量に聞いたことによって、次のようなことを学習・確認できました。

 言葉で語りにくい(表現しにくい)テーマを、どのようなアプローチで行うと調査
  対象者は興味を持ち、そして、意見が出やすくなるか

 調査対象者の参加意識を最後まで持続させるために、インタビューフローや
  質問項目で留意すべきことは何か

 調査対象者の発言がホンネかタテマエ(時には、ウソ)かを見分けるために、
  どのような点に注意・注目すべきか

 定量調査の結果で解明できない点の答えが、定性調査でのある対象者の
  何気ない発言の中から見つかることがある

 定量調査の Tracking Survey (時系列調査)などに現われている傾向(例 :
  ある銘柄が主要項目で、スコアが上昇・下降トレンドを示している)の原因解
  明に役立つことがある

 消費者の意識下や無意識下での評価・判断が、事柄によっては「人間の本
  能的な反応」で行われていることが分かる


 インターネット調査の草創期における経験

2000年代に入ってから、定量調査の新たな調査手法となったインターネット調査に関して、色々な経験を積むことが出来ました。

このインターネット調査については調査会社3社と仕事を行いましたが、どの会社も導入直後の段階だったため色々な問題が発生し、正に調査会社と一体となって実務に取り組みました。

導入から1~2年後には、インターネット調査の
利便性経済性を痛感すると同時に問題点も把握でき、本格導入にあたっての留意点やミス防止のためのチェックポイントを学習することが出来ました。
【 関連項目 : 
D-1 インターネット調査の台頭と課題


 調査会社をアウトサイダーで観察

クライアント時代の19年間に、常時、調査会社3~4社に仕事を発注していました。

実際に調査業務を委託した会社は計11社になりますが、その中には次のような問題を抱えた調査会社が多数ありました。

 「調査の本質」 を分かっている人が、管理職になって現場を離れたり退社し
   てしまうと、後任者との間に大きな落差が生じる

 「調査」 という仕事に対して、熱意や責任感を持っている人が少ない

 新しい調査プロジェクトに対する提案力が弱い

 「実査」 の重要性を理解・認識している人が少ない

 問題点の改善を求めても、組織が弱体なために対応できない


11社の中で淘汰されて、最終的なリストに残った会社が3~4社でしたが、それらの会社も大なり小なり問題を抱えており、
調査会社の維持・管理には常に頭を悩ましていました。
各社共通の問題点は、担当者の出入りが激しいことでした。 リサーチャーとしては初心者の人に色々指導をしてあげても、ある程度成長した2~3年後に退社してしまうため、その後任者が同じ失敗を繰り返すという状態でした。

口幅ったいことを言うようですが、調査会社のこのような不安定性や非効率性が、調査の「品質」や「精度」を求めるクライアントにとっては精神的・時間的な負担となり、気の抜けない毎日を強いられました。


■ 
ブランド担当者の大きな勘違いが理不尽な要求をしてくる

対内的には、ブランド担当者の「調査」に対する認識・知識・重視度合に個人差があるため、時には、
理不尽な要求・注文をしてくる担当者への対応で苦慮することがありました。

その要因のひとつは、ブランド担当者がブランドごとの
調査予算を握っているため、自分は発注者で調査担当者は受注者だから、発注者の意向を受け入れのが当然という大きな勘違いをする人がいるからです。

中立・公正を求められる調査担当者(リサーチャー)は、当然、「調査の信頼性」を優先しなくてはいけません。

【 関連項目 : 
E-3 ブランド担当者に求められる調査の知識


 他メーカーのリサーチャーとの情報交換は有益

他のメーカーで調査を担当している人たちとの飲み会は、調査に関する情報交換の場として有益でした。

他社では どのような調査手法を使用しているか? 調査業務のどのような点に苦労しているか? 調査会社の管理を、どのように行っているか? などを聞くことによって、自分の調査に対する考え方、および、管理方法の妥当性や正誤を確認する上で、大変役に立ちました。

この他、調査会社情報として < A社のOOさんは調査の知識・経験が豊富で、考え方も道理が明確なので安心できる >、< B社の XX さんの対応は雑で、ミスも多いので信頼できない >、< C社は最近ベテランの人が次々と退職し、クライアントもかなり失っているらしい > といった生々しい話も耳に入り、調査会社の管理・選定の参考になりました。


クライアントでの数々の経験が、私に「調査の本質」を教えてくれたため、リサーチャーとしての「
信念」をしっかりと築くことができました。




  クライアント側もリサーチャーとしてのプライドを持とう!

クライアント時代は、対外的には調査会社と仕事をした時の苦労や喜び、また、対内的にはブランド担当者と仕事をした時の苦労や達成感、あるいは、経営幹部から依頼や相談を受けた時の苦労や充実感 といったことが回想されます。

社内の人たちと
リサーチャーとしての良心の中に葛藤が生じたことも多々ありましたが、そのような経験が私に強固なリサーチャー精神を植えつけたと思います。

クライアント側にいても調査会社と仕事の内容について対等な議論ができ、また、社内でも信頼される調査担当者(リサーチャー)となるために、プライドを持って毅然とした態度で仕事に臨むことが重要です。


 
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