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F】 優秀なリサーチャーになるための努力


F-2 : 座談会のオブザベーション


 消費者の生の声は、リサーチャーやマーケターの栄養剤!


オブザベーションには、目的意識をしっかり持って行こう!

定性調査での座談会(グループインタビュー)は、通常、調査対象者は1グループ6~8名で、1プロジェクト3~6グループで実施されます。
この座談会をオブザベーション
(*) していると、調査対象者(消費者)の色々な発言の中からキラッと光る意見が出て、時には、’目から鱗が落ちる’思いを経験できます。
 
  
(*) インタビュールームに隣接した部屋からハーフミラー越しに観察、あるいは、
       別室にある複数台のモニター画面で視聴



定性調査(座談会 / One-on-one インタビュー)は、次のような目的で行われます。

 クライアントが定量調査に使用するコンセプト(製品説明書)やテレビCM 案
  などを調査対象者(消費者)に見てもらい、主に次のような点を確認する

 消費者が正しく理解できるか?

 魅力に感じる点はどこか?

 分かりにくい点はどこか?

 改善したらもっと良くなる点はあるか?

 既存ブランドの新たな方向性を考える際、ブランドイメージ、長所・短所、改
  善希望点などで現状把握を行う

 新製品の売上げが伸び悩んでいる時、あるいは、既存ブランドの力が低下
  している時、色々な側面から確認をして低迷・不調の要因を探り出す

 新製品や新しいカテゴリーで商品を開発しようとする時、消費者が求めてい
  るニーズ ( Needs ) やウォンツ ( Wants ) を探り出す


オブザベーションを有効活用するためには、その座談会の目的、テーマ、質問項目、質問フローを事前に確認・把握しておくことが大切です。


定性調査でのインプットは、定量調査にも活用できる!

座談会で、コンセプトや製品の評価理由、銘柄選定理由、テレビCM の好嫌理由などを聞いていると、ブランド担当者や広告代理店のクリエーターがベストと思っているコンセプト案やテレビCM 案に対して、消費者目線での厳しい評価・指摘が色々出てきます。

この定性調査で出てくる ’肯定・否定 ’の様々な意見や評価は、マーケターやクリエーターだけでなく、リサーチャーにとっても大変役に立ちます。
それは定量(量的)調査の準備段階や分析段階においても、
有用な知見となるからです。

▷ 「調査企画書」作成時のアイディア

▷ 「調査票」作成時の留意点

▷ 「調査結果」の分析時の視点・ヒント

▷ 「調査結果」と「消費者心理」の関連性を見つける時の糸口


自分の担当プロジェクト以外でも、対象者条件の異なる座談会がある時は、積極的にオブザベーションされることをお勧めします。
また、クライアントの調査担当者やブランド担当者も、自社のプロジェクトがある時は、消費者の生の声を出来るだけ多く聞いて、自社ブランドの姿を正しく理解するために役立ててください。



 座談会をオブザベーションする時のマナー!


座談会は、調査対象者(消費者)の生の声を聞ける貴重な場です。
そこに同席する調査会社やクライアントの関係者は、調査の結論に影響を与えるような言動がないよう、
良識ある態度でオブザベーションをしてください。

注意すべきことは、次の3点です。

 オブザベーション中に、個人的な意見・感想は厳禁!

オブザベーションをしている人の中で、調査対象者が述べた意見と異なる考えを持つ人が、その意見を非難したり、持論をとうとうと語る人がいます。

このような言動は、同席する他の人の解釈に影響を与えたり、また、そのおしゃべり自体が騒音となります。 調査対象者の意見を一言一句聞きたいとかニュアンスをしっかり確認したいと思っている人にとって、大変迷惑な行為ですから慎んでください。


 すべてのグループが完了していないのに、自分の結論を言わない!

座談会を、例えば、対象者条件(性・年令・購入条件など)が異なる6グループで実施しようとしているのに、2~3グループを聞いた段階で、自分の仮説に合っていたとか合っていなかったと、結論を出す人がいます。

同じ質問項目や提示物でも、性別・年代別、あるいは、調査対象銘柄の購入者・非購入者別で、評価が全く異なることがあります。 同席者の前で、性急に結論を出すことは、慎んでください。


 影響力のある人が、自分の意見・見解を主張しない!

ひとつのグループが終了するごとに、ラップアップミーティングを行います。
それは次のような目的のためです。

 司会者に、そのグループでの結論的なことを
要約しながら説明してもらう

 調査対象者間で意見・評価が分かれた点について、 関係者で
統一見解
  
を持つために、司会者の解釈・判断を確認する

 次のグループで留意したり、追加・削除・変更する点がないかを確認する

このラップアップミーティングの場で、クライアントや広告代理店の人の中で影響力を持ちそうな人が、自分の意見や見解を語る(主張する)ことがあります。

そのような発言は、調査会社のプロジェクト担当者が最終報告書をまとめる際、クライアントの発言(意向)に影響を受けて、
結論にブレが生じる危険性があるので、厳禁です。


ミーティングの場は、クライアントの調査担当者が取り仕切る!

上述のようなマナー違反を防止するには、クライアントの調査担当者がオブザベーションやラップアップミーティングの場を取り仕切ることです。
しかし、自分の会社の上司が出席する場合は、どのように制止すべきか対応に困ることがあるかもしれません。

その上司の発言を控えてもらうためには、次のような方法をとりましょう。

 出席予定者全員に、オブザベーション時の注意事項を箇条書きにして、
  事前にメールで送付
しておく

 ラップアップミーティングを開始する前に、メールで送った内容を口頭で
  再度説明
して注意を喚起する

 各人の意見・見解は、後日予定している調査結果のプレゼンテーション後
  にある
ディスカッションの場で述べてもらうよう、予め伝えておく

このような方法をとれば、関係者の気分を害することなく、良識あるオブザベーションに協力してもらえます。




 座談会を定量調査の代用にするのは危険!


定性(質的)調査の座談会が、誤用されることがあります。

例えば、テレビCM のアイディア3案の中で、どれがどのような理由で評価が一番高いかを確認して、最終選択を行うケースがあります。
これはセレクション(選択)テストになりますから、定量(量的)調査で行うべきです。


製作費や売上げに関係することを、僅か十数名の座談会の意見で判断するのはかなり危険が伴います。 その理由は、数字的な裏付けが何もないため、調査対象者の発言だけが拠りどころとなりますが、そこに関係者各人の思惑や利害が絡みだすため客観的な判断が出来なくなるからです。


 そもそも、十数名の意見で正しい判断が出来るなら、数百名で実施する定量調査は不要ということになります。 定性調査を、定量調査の代用にするのはやめましょう。 


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