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C】 調査の現場で見聞した知識や経験


C-3 : 「調査の信頼性」を左右する人たち


 「調査の信頼性」 は、どのような人たちが関与したかで決まる!


会合で参加者たちに 「あなたは調査を信用しますか?」 という質問を、時々行っています。 その結果は、「信用する」 と 「信用しない」 がそれぞれ2割くらいで、残りの6割くらいが 「なんとも言えない」 になります。

残念ながら、現状では、どの見方も正しいと言えるでしょう。 その理由は、それぞれの調査にどのような人たちがかかわったかで、その調査の信頼性が変わるからです。


各担当者の「適性」と「責任感」の問題!

「調査の信頼性」 は、ひとつの調査にかかわる
受注者(調査会社)側の各担当者の意識・責任感・注意力の強弱、そして、発注者(クライアント)側の調査担当者の見識・責任感によって決まります。

また、調査が正しく実施されたとしても、その調査結果を利用する
発注者側の関係者に恣意的な解釈や使い方があると、周囲の人たちに「調査」自体に不信感を与える原因となります。

ここでの担当者や関係者とは、次のような人たちです。

<受注者側>

 調査設計 / 調査票作成の担当者とその上司
 実査担当者とその上司
 調査員 / (座談会での) 司会者
 (会場調査 / 座談会での) 調査対象者のリクルーター
 集計担当者とその上司
 分析 / 報告書作成の担当者とその上司

<発注者側>

 調査担当者とその上司
 ブランド担当者とその上司
 経営幹部(マーケティングディレクター、事業本部長、社長)




 クライアントの心の通った協力が必須!


「調査の信頼性」を維持・向上させるためにはクライアントの協力も大切で、調査会社の努力だけでは成し遂げられません。


調査会社での協同作業とチェックシステムの有無が鍵を握る!

ひとりの人間に100%の正確性や完璧性を求めることは不可能です。
調査の信頼性を失う主因のひとつに、人間がおかすミスがあります。 その「
ミスの防止」には、調査会社の各部署の担当者とその上司が、各作業のどの段階でどのような方法で間違いや勘違いのチェック作業を行うかが大きなポイントとなります。

また、ミスの防止には
チェックシステムが必要ですが、これは調査会社によってかなり差があります。 それは調査会社の企業理念や、各担当者とその上司の素養・責任感にかかっているからです。 【 関連項目 : E-1 チェックシステムの確立


クライアントの調査担当者も重要な鍵を握る!

クライアント側では、調査会社と実務のやり取りを行う調査担当者とその上司が重要な鍵を握ります。 この人たちは調査会社が行う作業プロセス (調査設計 → 調査票作成 → 実査 → 集計 → 分析 → 報告書作成) の内容を理解でき、かつ、各段階で起きそうな問題を想像できたり、それに対応・対処できるだけの知識・経験が求められます。

その理由は、調査会社のチェック作業が残念ながら完璧とは言えないことと、担当者の中にはビギナーレベルの人がいるため、その上司の監督・指導が行き届かないとミスが発生するからです。 そのため、
発注者側の調査担当者も十分に目を光らせている必要があります。

調査の品質管理は調査会社の仕事・責任だから、クライアントがそのような範囲まで気をつかう必要はないという考え方をしていると、問題だらけの調査結果を得ることになります。 それでは、調査担当者の責務を果たせません。


クライアントの経営幹部は、調査結果への関与は慎重に!

クライアントの
経営幹部の方が調査結果を恣意的に解釈したり、私意を差し挟むことは絶対してはいけないことです。 そのような行為は調査結果の読み間違いを招くだけでなく、部下からも信用・信頼を失います。

特に、
定性調査の場合、数字に基づいた判断ではなく、調査対象者が発する微妙なニュアンスを持った意見(言葉)を基に結論づけることが多いため、影響力の強い人から無理強いをした意見・反論・解釈などが出ると、分析結果に影響を与えます。


 「調査の信頼性」を保つためには、クライアントが調査会社の仕事ぶりを監視・評価できる能力を持つことと、調査結果のフェアな見方・扱い方を心がけることが大切です。 




  クライアントの姿勢が「調査の信頼性」の鍵を握る!


調査の品質管理は、調査会社の仕事・責任という考え方は間違いではありません。

ところが、それが現実的には無理な状態の中で 「調査の信頼性」 を求めるなら、
クライアントが調査会社に熱意や誠意を示し、調査会社に適度な緊張感を与えることが必要です。

そのようなことを煩わしく思う
クライアントの調査担当部署の責任者担当者は、多分、調査の仕事には向きません。 なぜなら、調査の仕事は 色々な角度からの人間の視点や思考 が常に求められるからです。 自動車や家電製品のようにオートメーション化しておけば、一定の 「精度」 を保ちながら出来上がるものではありません。

しかし、調査会社はクライアントのこのようなサポートに頼らないで、自らの努力と創意工夫で「調査の信頼性」を維持・向上できるような態勢を、早く確立してもらいたいと思います。


     
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