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B】 調査会社とクライアントの実情


B-1 : 調査会社の苦悩と反省点


 調査は「人力」に頼らざるを得ないところが難点!


調査会社は仕事の受注量が限界を超えると、連日の残業や週末出勤などで対応を強いられます。 これは調査業界の仕事が労働集約型産業の典型で人力に頼らざるを得ないため、止むを得ないことです。

ところが、超多忙時にかぎって、調査結果に大きな影響を与えそうなトラブルが発生したり、我がままなクライアント(調査の現実を知らない担当者)から無理難題を言われて、その対応に追われているうちに、二次災害的な問題が発生することもあります。



人材・態勢・意識の面での苦労!

多忙時に混乱状態に入りこむ背景には、次のような問題点があります。

 季節性などで受注量にバラツキが生じて、繁忙期と閑散期の差が大きい
  営業グループ、あるいは、好況な業種のクライアントを担当する営業グル
  ープが超多忙状態になった時、遊撃隊が
サポートする態勢がない

 クライアントが不信感を抱きかねないトラブルが発生した時、
問題解決
  向けて早急に取組む
態勢が不備なため、迅速かつ的確な対応がとれない

 調査の成果物(集計テーブル、プレゼンテーション資料、最終報告書)に
  関する内容の
チェックシステムが確立されていないため、単純なミスが
  頻発する

 調査の基礎が分かりだした入社2~3年目の人に退職者が多く、長年勤
  務したことによる
学習効果が期待できない
  そのため、ビギナーへの教育やトレーニングが常に求められるが、そこま
  で手が回らないために悪循環を繰り返す

 調査の本質を熟知し、調査設計・調査票作成・実査・集計・分析の分野で
  精通した人たちが経営幹部になったり、転職や定年退職をした後、それに
  続く
後継者の間にギャップが目立つ


ここ数年の問題としては、

 調査業界のグローバル化による調査会社の統合・合併、あるいは、海外
  の調査会社やコンサルティング会社が開発した調査・分析手法の導入など
  で、
移行期の苦しみの段階にある

 インターネット調査の台頭で、調査に対する緻密な考え方が失われている
  感がある


 リサーチャーとしての熱意責任感を持った人が少ない


これらは、程度の差こそあれ、どの調査会社も共通の問題点と言えます。



「実査」を軽視する傾向が、調査の品質の低下を招く


調査の品質や精度は「実査」で決まる!

調査は 調査設計 → 調査票作成 →
実査 → 集計 → 分析 という作業プロセス
を経て、調査結果が出てきます。

コンピューター用語に ’
Garbage in, garbage out - ゴミを入れれば、ゴミが出てくる ’ という格言があります。
調査も 「
実査」 の段階でいい加減な作業(データ収集)を行うと、全く役に立たない結果しか出てきません。


このように実査は、調査の作業プロセスの中で重要な部分です。

 実査が的確・正確・誠実に実施されたか否かによって、その調査の「品質」
  や「精度」が決まる

 実査がひとたび開始されると、途中で、調査設計や調査票のミスを修正す
  ることは出来ない

 実査完了後に、調査設計、調査票作成、実査方法などで致命的なミスが
  あった場合は、実査自体をもう一度やり直すしかない
  ミスがあってもやり直しが利くのは、多少の時間的ロスは生じるが、集計と
  分析だけである


「実査」 のやり直しはダメージが大きい!

実査のやり直しはあってはならないことですが、もし、そのような事態が生じた
場合、次のような問題が生じます。

 実査費は、調査費全体の55~70%を占めるため、調査会社に責任があ
  るミスの場合は、経費面で多大な損害が生じる

 実査を再度行うと、スケジュール上で大幅な遅れが生じる

 実査を前回と同じ条件・状態で実施することは不可能で、 ▷ 対象者が変わ
  る ▷ 実査時期がずれる ▷ 担当調査員が変わる といったことが原因で、
  厳密に言えば、調査結果にズレが生じる



「実査」 は重要な機能なのに、その認識が欠如している!

調査の作業プロセスにおいて、実査は大変重要な部分ですが、現実には、次のような問題を抱えています。

 調査会社内で、実査部を軽視する傾向がある
  【 関連項目 :
C-1 調査会社時代の学習


 コンサルティングを銘打っている調査会社は、維持・管理が大変な実査組織
  の保有を避ける


● 実査環境の変化や低価格の受注による実査費への圧迫が、実査の部分で
  諸問題を誘発する



「調査の信頼性」を高めるためには、影響力が最も強いこの「実査」の重要性
もっと認識し、重視することが求められます。





  
リサーチャーは、もっと自負心や責任感を持ってほしい!


クライアントは調査結果に基づいて、重要な判断や決定を行います。

そのため、
調査会社の各部署の担当者は重要な役割を担っていますから、リサーチャーとしての「自負心」や「責任感」を強く持って、誠意のある仕事をしてほしいと思います。 そして、経営幹部の方たちには、より仕事がしやすい環境作りのために、物心両面の支援が求められます。

なお、
「実査」の重要性について、一度、じっくり考えてほしいと思います。



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