◆ 調査の現場は ’机上プラン’の問題点を指摘してくれる! ◆
83,000票の調査票が教えてくれた ’人の気持’!
私が調査会社に勤務していた期間は1社目が8年、2社目が12年でした。 この通算20年間に、マーケティングリサーチの回収票(原票)を検票する機会が13年ほどありました。
記憶に基づいた概算では、1社目で約19,000票、2社目では実査部に所属していた8年間に約64,000票の原票に目を通したと思います。 特に、2社目では回収時に、調査員(インタビュアー)と面談をしながら検票を行ったため、この機会を重ねていくうちに、調査員の心理や調査対象者(消費者)の気持ちをかなり理解できるようになりました。 そして、調査現場の実情も垣間見ることができました。
自らの目で確認した劣悪な実査の現場!
検票作業を通じて感じていた「調査票」のあり方の疑問を検証するため、自ら調査の現場に出て実査作業を行い、調査対象者(消費者)の反応や気持を知る機会を持ちました。
訪問面接調査や会場調査(CLT)で、計80名くらいの調査対象者にインタビューを行いましたが、その際、調査票の問題だけでなく、調査現場(*)の劣悪な環境も自らの目で確認することができました。
(*) : 通常、玄関内で回答してもらいますが、そこは ▷ 暗くて文字が読みにくい ▷ 提示物を広げるための十分なスペースがない ▷ そばで子供がうろうろしたり親に話しかけたりする といった状況
目に余る調査現場の実情を無視した調査票!
このような経験をした結果、調査現場の実情を知らない調査企画部(営業部)の担当者が作成する机上プランの調査票に、一層強い疑問や不安を感じるようになりました。
そこで、実査部から問題点の改善提案を行いましたが、残念ながら、打てば響くような反応は全く返ってこなかったです。 それには、次の三つの要因がありました。
① 調査企画部(営業部)の担当者たちは、クライアントの要望がたとえ無理
難題であっても、それは絶対的なものという考え方があった
② ’実査部 ’を上から目線で見ているため、改善提案に謙虚に耳を傾ける
という意識・姿勢がなかった
③ 調査現場の実情を知らないクライアントの調査担当者が、調査対象者が
うんざりするような煩雑で膨大な量の質問で構成された調査を、なんの躊
躇いもなく要求してくる
③ に関しては、机上プランでは実施可能に思えても、調査対象者の平均的な理解力・集中力、あるいは、調査現場の実情を勘案すると厳しい内容でした。
そのため、クライアントの要求通りに調査を行っても、調査対象者の協力の気持ちが途中で萎えるのではという心配と、そのような状態で強行した調査の結果が信じられるのかという疑問を抱くようになりました。
☆ 調査会社時代は、このように 調査会社の舞台裏、クライアントの姿勢、調査対象者のレベル、そして、厳しい実査環境を見聞することができました。
そのため、調査ビジネスにかかわる者として考えさせられることが多々あったと同時に、調査にどのように取り組むべきか覚悟ができた時期でした。 ☆
調査会社がクライアントに対して強気になってきたのは本当か!?
話は変わりますが、時代の変化に伴い、調査業界も調査会社とクライアントの力関係に、変化が起きているようです。
それは、最近、調査会社の担当者が自分の意見(主張)をクライアントにはっきりと言い、逆に、クライアントの調査担当者はそれにおとなしく従うという傾向が出てきたようです。 (これはあくまでも個人レベルの問題で、全ての調査会社、あるいは、クライアントに当てはまる共通の傾向ではないかもしれませんが
・・・ )
調査会社の意見(主張)が正しい考え方で、クライアントの同意が理解・納得した上でのことなら、喜ばしい傾向と言えます。 そのような形勢の変化が、クライアントのごり押しをなくし、調査の信頼性の向上(回復)に役立つことを願っています。
|
☞ 調査は「受け手」の立場になって考える!
「調査設計」や「調査票作成」の段階で、送り手(調査会社やクライアント)の都合や考え方を優先し過ぎないことです。 その理由は、調査対象者は玉石混淆のため、知的水準や年令によっては煩雑・難解な質問についてこれない人がいる、また、劣悪な調査環境のもとで回答している人がいるからです。
調査の「品質」や「精度」を保つためには、受け手(調査対象者や調査員)の事情や状況、つまり、「質問の設定レベル」、「調査対象者の気持」、そして、「回答場所の状況」をもっと考慮すべきです。
|
|