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D】 調査環境の変化


D-2 : 調査会社のグローバル化の光と影


◆ 功罪半ばする調査会社のグローバル化!?


海外の大手調査会社がクライアントにグローバルなサービスを提供するために、自社にとって組織が手薄な国にある調査会社と合併・統合などを行い、グローバルな調査機能を築き始めました。 日本の調査会社もその対象となり、
調査業界の勢力図に変化が起きています。

合併・統合した会社では、調査会社としての規模の拡大やクライアントへのサービス体制の拡充で、社員のモチベーションが高まったという話を聞く反面、企業理念や企業風土の異なる会社が統合したことによる違和感や摩擦から退社する人が多い、あるいは、売上げが規模の拡大に伴った結果を出せないという話も聞こえてきます。 まさに、
移行期の苦しみを感じている時かもしれません。



 マーケティングリサーチで、世界共通の物差しは存在するのか!?



調査業界のグローバル化に伴い、日本で活動する外資系企業の中には、海外の 本社がマーケティングのコンサルティング会社や調査会社から提案されたモデルや調査手法を導入して、各国のマーケティングや調査を世界共通の物差しで管理・指導を行なおうとする動きが出てきました。

この方法は本社の経営幹部にとっては便利かもしれませんが、これにはふたつの疑問を感じます。


■ 調査手法の導入決定段階で、調査に精通した人が関与していない!?

本社がその調査手法の導入を検討した際、決定権者(経営幹部)へ説明・提案を行うために選定作業を行った
実務者レベルのメンバーに、「調査」に精通した人が存在していなかった節が見受けられることです。

そのため、コンサルティング会社や調査会社のセールストークを鵜呑みにしてしまい 
その調査手法が自社の商品カテゴリーに本当に適するのか?  「世界共通の物差し」が各国の市場で本当に通用するのか? といった点を、事前に十分確認しなかった様子が窺えます。

その影響が、導入から1~2年後に出ています。
 それは 「調査」 自体に精通し、かつ、新たに導入した 「調査手法」 の長所・短所を十分に理解・把握した責任者(担当者)が存在しないため、導入1~2年後に、その調査手法に何か再検討や修正・改善を要する問題が生じても、本社で対応できる人がいないという状況です。 

食品を例にみた場合 
消費者の味の好み  品質に対する消費者の要求レベル  パッケージのあり方  テレビCMの長さ(秒数)や評価する際の視点・感性  販売チャネル  価格  商品カテゴリーや競合銘柄  消費者の生活習慣や意識 などが、国によって状況がかなり違うため、調査の実施段階で違和感や疑問に感じる点が多々あるようです。


 調査目的によっては、世界共通の物差しは無理がある!?

国によって市場の環境や状況が異なる中、世界共通の物差しとして使われる調査手法の調査結果が、本当に信頼できるのでしょうか。

自社商品の市場規模、マーケットシェア(市場占有率)、性・年令といったデモグラフィック(人口統計)での購入者層などを、国別に把握する程度なら特に問題はありません。

ところが、ブランドプランや戦略を立案する時のベースになる調査結果を、世界共通の物差しで測ることには疑問を感じます。
その理由は、調査対象となる商品カテゴリーの市場規模、市場成熟度、マーケットシェア、競合銘柄、(日常生活での)必要性・重要性、価格、価値観 といった要素の重みが、国によって差があるからです。

ブランドの重要な方向性を決める調査には、各国の
独自の要素を優先・反映した調査の内容や方法で把握すべきだと思います。




  「自社商品」に適する調査手法か見極めが大切!


海外のコンサルティング会社や調査会社が独自に開発したモデルや調査手法の中には、マーケティングマネジメントの観点から見ると興味を引かれるものもあります。

ところが、それらの中には、各国の
市場環境調査環境の違いをあまり考慮していないもの、あるいは、多くの国や商品カテゴリーに採用されることを目ざしているため、総花的で調査結果に深みを感じないものがあります。

大切な
ブランドの命運を託したり、膨大な調査費を費やしますから、導入にあたっては、自社商品に適する調査手法であるか否かを、慎重に検討されることをお勧めします。

【 関連題目 : D-3 コンシューマーインサイトへの移行と課題



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