◆ 調査の着眼力や発想を養う人間ウォッチング! ◆
定量調査の結果を見ながら分析をしている時、ある顕著な特長・傾向が見つかると、さらに、それを幹としていろいろな枝葉に分かれて、新たな分析ポイントへ拡大していくことがあります。
また、定性調査をオブザベーションしていると、調査対象者(消費者)の発言や行動から、その後の言動に関心を持ったり予想したりすることがあります。
このような着眼力や発想を養うためには、日頃から、世の中に存在する様々な事柄に興味・関心を持ち、調査テーマの探索を試みることが大切です。
その題材は街角や電車内に多数存在しています。
私の事例を3点ご紹介しましょう。
≪ 街角で人間ウォッチング ≫
東京の渋谷・表参道・銀座などで、街を歩く人たちの様子をウォッチングしていると、色々な調査テーマが見つかります。
そのテーマは10~20代の若者が多い渋谷、ちょっとお洒落な20~30代の男女が多い表参道、落ち着いた40~60代の夫婦が多い銀座など、地域によって異なります。
そして、そのウォッチングによって ◇ 最近の流行や価値観 ◇ 世の中の変化 ◇ 人間の癖 ◇ 男女や年代による差異 ◇ 新製品開発のヒント といった様々な題材や視点が目にとまります。
銀座の歩行者天国で ’バッグ ’の所有状況に興味!
これは銀座の歩行者天国で、人間ウォッチングをしていた時に気づいたことです。
道を行き交う人が老若男女を問わず、何らかのバッグを持っていました。 (バックを持たない人を見つけるのが大変なくらい ・・・)
種類は、男性はショルダーバッグ、ビジネストート、リュック・デイバッグなどを、女性はハンドバッグ、ショルダーバッグ、トートバッグ、ポシェットなどです。
種類・形状・銘柄は千差万別でしたが、いろいろな種類や価格帯でメーカーは鎬(しのぎ)を削っていることだろうと思いました。
そして、そのような所有状況を見ているうちに、 バッグ業界の売上高はどのくらいか? 市場の成長率はどうなのか? 不況の時代はやはり影響があるのか? と余計な心配をしてしまいました。
バッグの持ち方は十人十色!
このバックに関して、もうひとつ興味をもった点は、バッグの持ち方が人それぞれだということです。 ビデオカメラを使用しての私の ’お遊び調査’によると、その持ち方は次のように分かれました。
● どちらかの肩に掛けている人 ・・・ 全体の約40%がこのタイプで、掛ける
肩は右と左がほぼ半数
● 斜め掛けにしている人 ・・・ 約25%がこのタイプで、ショルダーベルトを
肩から反対側の腹部・脇腹・でん部に掛けるのが、右肩からと左肩からで
ほぼ半数
● 腕の肘の部分を ’く’の字に曲げて、そこに掛けている人 ・・・ 約20%が
このタイプで、これも左右の割合はほぼ半数
● 手に持ってぶら下げている人 ・・・ 約15%がこのタイプで、これも左右の
割合はほぼ半数
利き手が「右」の人は成人人口の9割前後ということですが、これと相関がもう少し高いと思っていたところ、このように左右がほぼ均等に分かれたのは意外でした。
この結果を更に性別・年代別でブレークダウン(内訳)して見ると、更に、興味深い傾向が出てくることでしょう。
今回のような ’お遊び調査’ではなく、正式に調査を行って専門家の見解を聞いてみたくなりました。
街角でのウォッチングは気軽に出来ることですから、時間のある時にトライしてみてください。 自分の習慣・センス・好みなどを考え合わせながらウォッチングをしていると、新たな発見がありとても楽しいです。
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≪ 電車内で人間ウォッチング ≫
これは私がサラリーマン時代に、電車内で観察していたことです。
通勤電車内で乗客は何をしながら過ごしているか!?
毎朝、自宅の最寄り駅からほぼ同じ時間に乗る通勤電車内の様子を注意深くウォッチングしていると、面白い題材が色々あります。 ただし、満員の電車ではちょっと無理なので、多少空いた時間帯や電車(急行ではなく各停)でのことです。
朝の電車内で座っている人はハードワークでお疲れなのか、居眠りをしている人がかなりいます。
しかし、起きている人や吊革や手すりにつかまっている人たちは ◇ 新聞を読んでいる ◇ 本を読んでいる ◇ 仕事関係の書類に目を通している ◇ デジタルミュージックプレーヤーで語学の勉強や音楽鑑賞をしている ◇ 携帯でメール作成をしたりゲームをしている ◇ 何もしないでいる など様々です。
そこで、更に ◇ 読んでいる新聞は何新聞? その人の風貌は? ◇ 読んでいる本は小説、ビジネス書、雑誌? ◇ 書類に目を通している人の雰囲気や風貌は? ◇ 携帯の色や形状は? ◇ ビジネスバックの形状や色は? その人の風貌は? など観察ポイントを広げていくと、新たな発見やさらに確認したいテーマが次々と出てきます。
人間の今の行動(状態)から次の行動を予想する!
自分が、寝不足のために車内で座って眠りたい、あるいは、仕事の書類にゆっくり目を通すために座りたいという時があります。 そのような時のために、座っている乗客の行動をチェックしておくと便利なことがあります。 これは通勤客の生態を知る上でも、興味深いことです。
● しっかり寝込んでいた人が、突然目をさましてポケットから携帯を取り出し
てボタンを操作し、その後、外を見て走行している場所を確認したら、その
人は2~3駅後で降りるはずです。 つまり、この人は寝過ごして降りそこ
なうのを防止するために、バイブレーター機能で目覚ましをセットしていた
のです。
後日、座りたい時に、その人を見かけたら、取りあえず、その人の前に
立っていることです。
● 新聞や本を読んでいる人が、読むのをやめてカバンなどにしまいだしたら、
その人は1~2駅後で降りるはずです。 しかし、その時の顔の表情が
眠そうな人は、その後、眠りにつく人がいるので、がっかりしないでください。
● 毎朝、ほぼ同じ時間帯に乗る車内には、よく見かける人が数名います。
そして、その人たちの中には、自分が乗車してから数駅先で必ず降りる
人がいます。
乗車してその人を見かけたら、まず、その人の前にさりげなく立って、座る
優先権を確保しておくことです。 ちょっとみみっちい考え方ですが ・・・。
通勤に電車を利用されている方は、一度、試してみてください。 車内という限られた空間にもかかわらず、乗客の色々な行動や様子が観察でき、すごく楽しいです。
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≪ スポーツジムでウォーキングをしながら路上ウォッチング ≫
私は自宅近くのスポーツジムに週3~4日(平日2~3日 / 週末1日)通っています。 トレーニングメニューのひとつに有酸素系運動として、マシン(トレッドミル)を使ってのウォーキングがあり、毎回、30分間行っています。
その時の ’お遊び調査’を、ふたつご紹介しましょう。
■ ’気配り ’が出来ない人たち!?
ある日、ウォーキングをしながら眼下の道路を見ていた時のことです。
’信号待ち’で止まるクルマが、前に止まったクルマとの車間距離を取る際、ドライバーによって個人差があることに興味を持ちました。
その車間距離は、1,800ccクラスの普通乗用車の長さを基準にして見ると、① 0.5台分未満、② 1台分くらい、③ 1.5台分以上と、3つのパターンに分かれました。
その割合は、5:3:2くらいでしたが、③ は間隔が空き過ぎて、見た目にはちょっとだらしない感じがしました。
また、この ③ のようなドライバーに限って、信号が青に変わってからの反応(発進のタイミング)が遅いことでした。 このように後続車への気配りをしないドライバーが、交通量の多い交差点で、渋滞の列を一層長くする要因を作っているのではないかと想像しました。
■ ベンツ と BMW に焦点を合わせた実態調査!?
やはりウォーキングをしながら、ある一週間の平日と週末に、目の前の道路を走る普通乗用車(タクシー、商用ライトバン、軽を除く)の通行量をチェックしてみました。
片側 1.5車線の道路ですが、ウォーキングをしている午前11時台の30分間で、平日は平均163台、週末は平均189台でした。
そのチェック中に気づいたことは、ベンツやBMWの台数がかなり多かったことです。
その時、かつて、テレビのコメンテーターが 「(このスポーツジムの所在地である) 横浜市青葉区はベンツとBMWの所有率が全国で一番高い」 と話していたのを思い出しました。 真偽の程は定かでないですが
・・・。
● 通過台数が多かったのは、平日はベンツで週末はBMW!
そこで、その後の平日8日と週末4日のウォーキング中に、午前11時台の30分間でベンツとBMWの通過台数をカウントしてみました。
その結果、平日の平均はベンツが12台、BMWが5台で計17台(普通乗用車の通行台数の10.4%)、週末の平均はベンツが10台、BMWが15台で計25台(同13.2%)となりました。 この出現率が高いか低いかは別として、興味深かったのは平日と週末で、ベンツとBMWの出現率が逆の結果になったことです。
● ドライバーはベンツが女性、BMWは平日が女性で週末は男性!
この逆現象に興味を持ち、ジムからの帰り道に、外からの瞬間的な観察ですがドライバーの年代や性別をチェックしたところ、ベンツは40~60才代の人で、男女比は平日・週末とも3:7くらいで女性が多かったです。
一方、BMWは30~50才代の人で、男女比は平日が4:6くらいで女性が多かったのに対して、週末は7:3くらいで男性が多かったです。
このようにベンツとBMWの年代別の違いと、BMWの平日・週末別での性別の違いが興味深かい結果でした。
観察場所や時間帯が固定のため正しい調査ではありませんが、ウォーキング中に頭(記憶)と両手の指を併用してカウントした ’お遊び調査’でもテーマが拡大していき、色々な傾向を知ることができます。
● 人生は ’楽あれば苦あり (苦あれば楽あり) ’を教えられた!
余談ですが、この ’お遊び調査’で気づいた面白い傾向をご紹介しましょう。
それは30分間でのベンツとBMWの出現の仕方に、色々なパターンがあったことです。
◇ 両方が、30分間にほぼ満遍なく来た
◇ 前半はベンツ(あるいは、BMW)が集中し、後半はBMW(あるいは、ベンツ)
が集中した
◇ 前半でどちらも頻繁に来たのに後半はぱったり来なくなり、逆に、前半は
どちらもほとんど来なかったのに後半で立て続けに来た
昔、会場調査(CLT)を実施していた時、同じような事例がありました。
それは対象者条件に適合する人の出現の仕方が、一日の中で上述のような傾向を示したのです。
午前中の出現率(完了数)が順調だったからと気を緩めていたら、午後は出現率が低下して、夕方になって焦ったことがありました。 逆に、午前中の出現率が悪くて一日の完了予定数を達成できるか心配していたら、午後から出現率が急に上昇し、予定通り終了しました。
どちらのケースも ≪ 物事が順調に進んでいる時はあまり気を緩めず、そして、思い通りにいかない時はあまり悲観的にならないで、最善を尽くしながら、順調に進む時がくるのを待て
≫ という、まるで人生での心構えを教えられたようです。
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