(おね・・・・・・がい・・。)
           テープの再生スピードを最高に遅くして再生した時のような声。
          金太は地面に這いつくばりながら、その声を聞いた。
           背骨がとんでもなく熱い。
          自分が撃たれたのだと彼は理解できた。
          (し・・・め・・して)
          (なんだ、また幻聴きいてんのか・・・俺。)
           金太は次第に意識が遠のくのを感じた。
          (せ・・・かいを・・)
          kak
           熱い・・・寒い・・冷たい・・・。
          感覚が次第に消滅してゆく。
          ue
          (死ぬのか・・俺は)
          isuru
           全てなくなる、感情も、感覚も。
          金太自身にそれはどうする事もできない。
          (せか・・・いを・・)
          chikara
          ――怖い.
           もう、幻聴すら耳に入らない。
          その瞬間、彼の頭の中はその言葉で満たされた。
          だが、その感情すら長くは続くまい。
          (嫌だ・・・死にたくない)
          ――死にたくない!!
          (・・・を!!!)
          ズッン!!           
          (!!?)
          その時だった、
          金太の背骨を、脳を何かが走り抜けた・・・。
        
           
            | ズリッ、ズリッ! 
 その少女の背中・・・・およそ現実ばなれした光景を更に助長する物があった。怪物。
 黒い、先鋭的なフォルム、ヒトの筋肉と戦車の装甲が一体化したような鉄の肌。
 まるでまだ制作と中であるかのように、首や間接からは電機コードとも、神経ともつかぬ紐状の物質が飛び出し、チリチリと音を立て、青い火花を出している。
 (機械のようで・・・機械じゃない)
 びくん・・!
 見ればその肌とも装甲とも付かぬ側面が筋を立て、脈打っている。
 (生きている・・ようで生きてない・・・。)
 それを背負ている奇妙な姿の少女より2周り以上は大きいであろう、そう、四肢を持ったソレを、その少女は背負い、引きずっていた。
 その顔・・面というべきかもしれない、鬼のようであり、竜のようであり・・・神話の怪物のようであると同時にひどく機械的であった。
 シャイン・・・!
 三角形に釣り上がったその面の目の中の眼球が機械的に動く。
 赤い曳光が『彼女』を照らす。
 
 「どっち・・?」その怪物を負ぶった少女に気づいた。
 「ねぇ、どっちに行けばいいの・・?」
 「あなた・・・どうして・・ここへ・・?」
 『彼女』はかすれた声で答え、聞き返した。
 「逃げてきたの・・・『彼』のイデアがまだ不完全だったからね・・・だからあなたのちょっと特殊な意識下に紛れ込ませてもらったわ・・・ちょうど小判ざめのようにね」
 お姫様のような姿の少女は表情も変えず答え、更に続けた。
 「どっち?教えてくださいな、急いでいるの・・・・。」
 「あなたは・・・・。」
 『彼女』はかすれ声で返答する・・・。
 | 
        
         
        素体域基底座標:0:0:0///////@'&%$///.///.........ゲンゴ・・・・・・かくてい・・。
                       
        engage///SET A PREZENT FREE
           (何だ・・?)
          更に金太の目の中を何かが走った、文字のようであったが、確認できない。
          (なんだ・・・?)
           消えていた意識が戻る。
          復活した彼の前には、黒い装甲をまとった男の足があった、それは自分の頭を踏みつけてるようだった。
           頭に何か冷たいものが当たっている、恐らく銃だろう・・・。
           だが・・・。
                    s.number:zero
          (今度は幻覚か・・?)
           金太の視界の中ぽっかりと、英文字が浮かんでいたのである・・・。
          現実の世界に現れたたのではない、金太の視界の中にだけそれは現れた。
          金太は気付いていないが・・・。
          それらの文字は金太の角膜に直接浮かび上がっているのだ。
          (普通・・・。)
        
           
            | 「・・・ベター・・・・マ・・・」そこで『彼女』は言葉を切った・・・目を見てしまったのである。
 強い意志を秘めた瞳・・等という表現では手ぬるい、どこか狂気じみた貫通力を持った瞳。
 「急いでるっていったでしょう・・?」
 一歩『彼女』に近づき、その瞳で真っ直ぐに見て言った。
 (ちがう・・・このひとは・・・・)
 『彼女』がその目に射られた刹那、 眼前の少女が初めていらだった様子をみせた
 「早くっ・・・!」
 
  ガシッ。怒鳴りつけながら『彼女』の肩を少女が捕む。
 「どっちに行けば、『彼』にあえるの?」
 あ然としたまま『彼女』は本棚に叩き付けられる。
 お姫様は怪物を背負ったまま『彼女』に顔を迫らせる。
 「どっち?」ごくん・・・。
 『彼女』は唾を飲み込んだ・・。
 
 「お願い・・おしえて・・・」その少女の、痛みと汗に歪んだ鬼気迫る、しかし冷ややかな表情におののいて。
 | 
        
         
        どくん・・・キィィ・・・どくん・・キシュ、ドクッ・・・キイイイイイイイイイイ
          ギィイィンンンンン・・・!!!
        (!!?)
          再び高まる心音がモーターのような・・うなり声のような・・・奇妙な音に変わるのが、金太の耳に聞こえた。
        
           
            | ―――ここは心の中の世界・・・存在してるようで何も無い・・・。ぴしっ・・・。
 彼女たちを囲う本棚にひびが入る・・。
 ぴしん!
 ―――わたしがおきればでられるよ・・・。
 本棚が倒壊してゆく。
 多くの本が雪崩落ちる・・・。
 「そう」
 本の洪水の中。
 周囲の景色がぼやけてゆく。
 お姫様のような少女は『彼女』の肩から手を放す。
 「迷惑をおかけします・・・ 」
 先ほどまでと態度はうって変わって、少女は深々とおじぎをした。
 その背にのせた怪物がずり落ちかけて、小さくうめいた。
 天井が崩れ、光が射す。
 少女は『彼女』に背を向け、光の方を見る。
 光が彼女たちを呑み込もうとしていた。
 
   「・・・・・再起っ!」・・・光が全てをつつんだ。
 | 
        
         
        
         そして・・・。
          彼の目の中に文字列が走った。
        
          @@@@@@@@@@@@@@@@@@@copy\\\\\\\\\\\\\\
          ok
          cccccccgggggggggAAAAAAAAAAttttttttttt
          (こういうときって・・ふつう・・・)
          ok
          011110000000001011100000...............
          ok.......
          ()~('%#%#%&#$'(%('((#$&)#$)%)%)(&%')($'&$&&%#)==
           (走馬灯とか見えねぇ?) 
                   ーengage!!
        
          「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
          「!?」
           金太の頭を踏みつけ、銃を向けていた隊員があとずさる。
          撃たれたはずの彼が突如たちあがったのである。
          絶叫とともに。
           そして。
          彼らが照準を合わせるより早く・・・。
          金太の姿が消えた。
        