岩崎元郎のミニミニLecture (後半)
(1999年6月9日)
その13 ロッククライミングの入門から習熟まで
<三点確保を学ぶ会>
 不安のない小さな岩場を教室とし、三点確保によるバランスクライミングを反復トレーニングする。傾斜の緩い斜面で肩がらみによる懸垂下降、岩場に下ろしたロープでクサリ場の登下降をのトレーニングをする。
<ロッククライミングを学ぶ会>
 子供岩での基本練習(三点確保、ロープの結び方、エイト環による確保と懸垂下降など)の後、男岩、女岩の入門ルートでのトレーニング。
<ロッククライミングと友達になる会>
子供岩での復習と肩がらみによる懸垂下降、ブルージック登攀の講習の後、男岩、女岩でトレーニング。
<ロッククライミング・マスタートレーニング>
日和田山、幕岩、その他ロックゲレンデで積極的にトレーニングする。
<リーダーズ・チェック>
本科2年生を対象とした研究ステップで、登山靴(冬靴)で日和田山の入門ルートをリードするプログラム。ランニングビレー、アンカービレーなど習熟度がチェックされる。
           1999年6月9日確認のためまとめる 岩崎元郎

その14 山登りってほんとに楽しい
 「あんなつらい思いをして、山登りのどこが面白いの?」とは山を知らない人が決まってする質問です。この質問を聞かされるたびに「誤解なんだよな」と内心でぼくはつぶやいています。”あんなつらい思い”と言いますが、どんな状況を思い浮かべているんでしょうか。おそらくは身体の倍する、でっかいザックを背負って、とめどなく流れる汗をぬぐおうともせず、苦しさ、つらさ顔をゆがめながら、急な山道登っていく登山者の姿を想像しているんでしょう。
 つらい思いをさせられる登山というのは確かにありますし、そこに大いなる喜びを感じられることも事実です。つらい思いのどこが楽しいのか、山を知らない人に説明するのはいささか難しいので、おいおいご理解していただくことにして「あんなに楽しい思いができるのになんで山に登らないの」という話をさせていただきましょう。
<その1>空気がうまい。あったりまえのこと。だれだって想像がつきますよね。
<その2>水がうまい。JR中央線の山梨県・大月郊外に滝子山という1590mの山があります。ある年の夏の真っ盛りの一日、山頂目指してスタートしました。沢からのコースです。ぼくの調査不足だったのですが、その沢は下流域がゴーロで伏流だったのです(石がゴロゴロしている河原をゴーロと呼びます)。炎天下のゴーロ歩きでのどはカラカラ。ゴーロ帯を過ぎて流水と出会ったとき、ガバっとよつんばいになって口をつけ、ゴクゴク飲んでしまいました。その水のうまかったこと。冷たくて甘いんです。
<その3>緑がきれい。登山というと、ロッククライミングを想像する人もいるようですが、わが国の登山のほとんどは、森や林の中に開かれた登山道をたどって行くものです。春の芽吹き、初夏の新緑。山を歩いていると、いや応なく心の奥の方までさわやかにしてくれる、グリーンシャワーを浴びることができるのです。山に登るということは森林浴することでもあるんですね。盛夏の深緑も気分がいいものですそして秋ともなれば
<その4>、紅葉がきれい、になるのです。

その15 上手な教え方
 上手な教え方、上手な教えられ方の基本は「いい人間関係を作ること」という結論に落ち着きました。
 そのためには、会のリーダー会員がお互いのコンタクトを多くすること、集会に出来るだけ顔出しをすることであるとーーー。

その16 登山が内包する危険
 今年で2年目になる救心の健康登山講座3会場(仙台、福岡、横浜)無事終了してホッとしています。いずれも1,000人を越える参加者で改めて中高年のブームを実感させられます。
 中高年登山者の事故の増加があちこちで取り上げられるようになっていますが、大きな原因の一つに、登山が内包する危険に対する認識の低さが挙げられると思います。9月3日からのドロミテハイキングを楽しんだ帰路、シャモニに立ち寄ったのですが、そこで訪れる日本人登山者の面倒をみて下さっている神田さんから、旅行会社が連れて来るモンブラン希望者のうち半数は資格がないと思える。モンブランというネームバリューの憧れだけで体力も技術もない、そんな人を送りこまないでくれと言われてしまいました。
 岩崎に言われても困ることののですが、そういう方の大半は、お金さえ払い込めば頂上に立たせてもらえるものと思いこんでルンルンとシャモニにいらっしゃる。しかし体力も技術もないのですから登れるはずもなく、現地ガイドにあなたは無理だからここで下山するということで登頂できないと旅行会社にクレームになってスッタモンダがよくあるという神田さんのお話でした。

その17 山行計画は早めに提出のこと
 もし万一、アクシデント発生となったら、所属の山岳会は総力をあげて事後処理に当たらなければならなくなります。いきあたりばったりの計画でなにかがあって呼び出されるんじゃ迷惑千万。自分が何をしたいのか、具体的なプランとしてどんなことを考えているのか、早め早めにアッピールしましょう。ゲレンデや表丹沢クラスの沢登りならともかく、それなりのプランを今日の集会で提出して、今度の日曜日に実行というのはチョットマズイんじゃないか。そして、まずいことに、そういう届けを許可する側の許可基準は
甘くなりがちです。よかれ、という気持ちが勝って「よし、行ってこい!」って言ってしまうのです。フトッパラの方がカッコイイじゃない。
 各位の自覚と協力を呼びかけたいと思います。そして、ゆるやかな上昇カーブで経験を積んでゆくという山塾のモットーに多くの登山者が共感してほしいとも思っています。

その18 グレードだけで判断しないで
 10月も下旬に入ってようやく寒くなってきました。北海道や東北では夏の暑さがウソのようにいきなり寒波が入り込んで、例年より早い降雪、11月上旬に予定していた白神山を、来年6月上旬に延期しました。
 さてグレードをAB表示からGW表示へ変更した件、目的としては、グレードに多角的な関心を持っていただきたいということです。内容的にはAA→GGとなりA→G、B→W、C→HWとなっただけですが、難度というのは数字やアルファベットだけで表示できるほど単純なものではないということです。同じ水平距離、高度差でも路面が赤土か岩かガレ場か腐葉土かで全然違いますし、天気によっても異なります。グレードだけで判断するのでなく、記録などを見てその山を研究してほしいと思うのです。

その19 中高年のトレーニングのこと
 春がやって来ました。山歩きが軽快に楽しくなって来ましたがスギ花粉が悩みの種という方も多いようです。めげずに山に行ってください。
 そうそう、中高年の方のトレーニングのやりすぎにご用心。疲労が残ちゃって山に出かけていくのが辛いといのでは、シャレにはなりません。トレーニングは目的を明快にして、必要やや不十分くらいでいいんじゃないかというのが岩崎の持論です。もちろん岩でも雪でも基本をしっかり習得しておけば、山の世界はぐーんと広がって、安心・安全・楽しさは10倍になりますが…。

その20 エイト環とATC
 この半年間、エイト環とATCを眺めてきましたが、それぞれに一長一短、問題はいかに使いこなせるかという所にしかないようです。広瀬氏はエイト環の方が守備範囲が広いという意見でしたし、西川氏は流行なんじゃないですか、という意見でした。
 新しい道具が考案されると、当然一つメリットが加わっている訳ですから、それなりに評価されます。だからといって、すぐにそれに飛びつくという姿勢はスタイルの確立とはほど遠いものだと思います。
 今まで使ってきたものに代わるだけの優れた機能が付されているならともかく一長一短であるなら、今まで使ってきたものを使いこなすことによって新しいものと同等に出きるとしたら、スタイルがあると評価できるのではありませんか。
 物事を考えるときの一つの物差しとして、ベーシック・スタンダード・アドバンスという考え方を提案したいと思います。確保のベーシックは肩がらみ、スタンダードはエイト環、半マストをアドバンスとしましょう。ATCは個人の自由選択。もう一つ例をあげておきます。雪山のテント設営に際して、竹ペグを用意するのがベーシック、ペグを持たずに臨機応変がアドバンスです。

その21 繰り返し登る山
 道を学ぶのに、昔から伝わる言葉として<守・破・離>というものがあります。守とは教えを守る、具体的に説明すると、そっくり真似をするということです。習字で言えば、師の書いた字の上に紙を重ねてなぞる、日舞でいえば師の振りと全く同じ振りをあきずに繰り返すことで、いつしか心がこもるようになってきて、その人の字となり舞となる。
 次から次ぎへと目先を変えて山に連れてってもらっている方をよく見かけます。連れってくれるリーダーや講習会のパターンに対処する技術がその方の登山技術になっているのを感じます。できれば、連れてってもらったら、その次に、それと同じ山や、その近くの山にそっくり真似して自分がリーダーになって登ってみたらどうでしょうか。その山を2倍以上楽しめることうけあいです。

その22 安心登山の十ヶ条
安心登山の十ヶ条
 1、家族の理解を得ておく
 2、装備・服装を整えておく
 3、体力を養成しておく
 4、技術を習得しておく
 5、知識を貯えておく
 6、計画を万全にしておく
 7、いい仲間を身近に育てる
 8、リーダーシップが発揮できる
 9、メンバーシップが発揮できる
10、山岳保険に加入しておく

その23 冬眠対策
 朝夕がようやく涼しくなってきましたかね。いかがお過ごしでしょうか。 冬になると寒いとか雪山は危ないとかの理由で冬眠してしまう方がいらっしゃいますが、これはもったいない話です。寒かろうと暑かろうと、大自然の中に飛び出して身体を動かすことが健康に直結する訳ですから。危ない雪山はたくさんありますが、安心な雪山もたくさんあります。ウェディングドレスをひっぱり出すまでもないでしょうが、まっ白な雪山はすっばらしいですよ。
 ではでは ベルグ・ハイル!

その24 3原則と5つのポイント
生涯の趣味として山を続けるには、シナイ3原則
1,重たくしない
2,競争しない
3,自慢をしない

山でバテないゆっくり歩き5つのポイント
1,歩幅を小さく
2,足音を立てない
3,靴裏を見せない
4,2本のレール
5,パクパクはダメ、まず吐く

山に学ぶもの2001
「山に学ぶもの、企画力・行動力・忍耐力」

山に学ぶもの1986
「山に学ぶもの、行動力、忍耐力、集中力」

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