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岩崎元郎のミニミニLecture (前半) |
(1999年6月9日) |
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その1 奥秩父はグリーンアルプス
日本を代表するアルプスは、何と言っても北アルプス・南アルプスです。しかし奥秩父だってそれに負けないくらい魅力を持ったハナマルに山が連なっています。奥秩父はまさしくグリーンアルプスと言えるのではないでしょうか。
その2 山における困難性と知的レベル右図のような関係があると思います。面積はその取組みの人口をあらわします。
知│
的│ /
レ│ /歩 /
ベ│ /く /溯 /
ル│ / /る /攀 /
└────────────
困難性
その3 山登りにもシュンがある
若い会員の一人が6月に谷川岳をドーノという計画を持ってきました。最近は情報が過多で、食べるものばかりでなく山登りでも季節感というか、シュンがわからない時代になってしまったなあと、その彼女ががんばりやであるだけに、ちょっと淋しい気がしました。
夏は夏山、冬は冬山、山はてっぺんに登る。山登りはそれが本来のすがたです。で、梅雨の季節には、草付きのやばい谷川など計画しない。この時期シュンといえば、ウォータークライミング系の沢登りとか、湿原系の山歩きですよネ。山登りだってやっぱりシュンがおいしいんだから・・・。
その4 山行計画は早目に提出のこと
もし万一、アクシデント発生となったら、会は総力をあげて事後処理に当たらなければならなくなります。いきあたりばったりの計画でなにかがあって呼び出されるんじゃ迷惑千万。自分が何をしたいのか、具体的なプランとしてどんなことを考えているのか、早目早目にアッピールしましょう。ゲレンデや表丹沢クラスの沢登りならともかく、それなりのプランを今日の集会で提出して、今度の日曜日に実行するというのは、ちょっとマズイんじゃないか。主宰の許可基準は甘すぎるという指摘がリーダーの一人からありまし
た。よかれ、という気持ちが勝って、ゆるやかな上昇カーブで経験を積んでゆくという山塾のモットーを忘れてしまっていたかな、という反省があります。
会員各位の自覚と協力をお願いします。
その5 たかが山登り、されど山登り
無名山塾の山登りは、自分の内面にむかう旅であり、あるいは自分の裡(うち)に漂泊することであり、そしてまた詩(ポエム)である。
山登り−山登り−山登り−山登り(ぼくの選択)
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スキー \
ハードフリークライミング
たかが山登り、されど山登り、生命賭の遊びなのだから、なによりもまず自分のスタンディングポジションを明確にすること。
その6 遡行図って面白い
沢登りには山の面白さのエッセンスがつまっている。山の面白さの第一はなんてったて、山のてっぺんに立つこと。第二はワイルドな自然。ワイルドな自然がそのまんま谷にはあって、その谷を遡って山頂に立つという沢登りなんだから、その面白さは並たいていのもんじゃない。
沢登りにつきものの遡行図ってやつだが、これを勉強してみると、否応なく地図読みの勉強ができる。その日、遡った谷の遡行図をとってみる。ただそれだけのことで、その谷が自分の谷みたいに思えてくるのもうれしい。書く人によってそれがてんでんばらばらってのも愉快だ。
遡行図をどんなふうにしてとったらよいかは、拙著「沢登りの本」(白水社刊)を参照してもらいたい。2万5千分の1の地形図、磁石、高度計、これだけでも、我々現代の沢ヤさんは有利なはずだ。ゴーロが尽きて、ゴルジュとなり、渕となる。高巻くか、強引に突破か。その取り組み方を考えたりするのも面白い。滝が出てくるとやみくもに直登するのではなく、地形を考えて、ある時は直登し、ある時は高巻くという、知的な取り組み方が出来るのも沢登りならでの面白さ。なにはともあれ、無名山塾で一度一緒に沢登りをやってみませんか。
その7 下山報告
ヤッホー、西の方では早くも梅雨明け宣言、困ったもんですが我が関東地方は3週間くらい後に梅雨明けになるらしいです。まっ、我々は雨の中でも楽しい山登りをクリエートしてゆきたいと思っています。夏に向かって、夏ゆえの安心感から、山行計画の提出と下山報告がルーズになりがちなことに気をつけてほしいと思います。
便りがないのは無事の証拠といいますが、便りがなくて無事というより、無事下山の連絡をもらった方が安心ではあります。
常識的に事故の考えられないハイキングとか、万一事故ってもそばにいる人になんとかしてもらえるゲレンデならともかく。岩、沢、雪山・・・では責任を自覚してプランニングし、山行計画の提出は早めに、そして下山報告は山から降りて最初に出会う公衆電話(最近では、携帯電話の圏内に入ったらと読み替えなくちゃだめだけど)から行うようにして下さい。山岳遭難保険に入ったから、助けにきてもらえるなんて思っていたら、ち、
ち、ち・・・。ハンコなんてぼくも時代遅れだと思うけど、山行計画書が提出されてて、届け出団体の長のハンコが押されてないと保険はおりないことを知っていてほしいです。
その8 山のバックボーン
先日の山塾の集会で、ぼくは反省会が嫌いだと述べました。あーすればよかった、こーすればよかったと並べ立てても、山の場合には、行かなければよかったということに尽きてしまうのです。山に行かなくてはいられないというのが、ぼくたちなのですから。
じゃーどうしたらいいか、それは、万一の場合のバックボーンを作っておくことしかないと思います。バックボーンを作るということは、所属の会のメンバーがビビットに山に登っていて、同時にメンバー全体がよくコミニュケーションがとれていることだと思います。絶対安全な登山はないのですから、せめて発生した事故をスムーズに処理してゆけるようなバックボーン作りに心したいと思います。
その9 マウンテニアリングプロセスデザイン
マウンテニアリングプロセスデザインーーー初めて耳目にする言葉だと思いますが、これが私からの提案です。素敵な山との関わりを意識してクリエートしてゆきたいということです。歩くことだけで充分文句なしなのですが、テクニックを修得すると、山とビビッドな関係をもちやすくなります。より高きより困難を目指す目的でなく山とちょっといい関係になるために(安全で楽しく)、マウンテニアリングの基礎的な技術を学ぶこととマウンテニアリングのプロセスをデザインすることを二つ並立して意識してほしいのです。
その10 安心登山のこと
「安心登山」という言葉は92年の秋頃から使うようになったものですが、考えてみるとけっこう昔から、ぼくは安心登山の人だったといえるようです。
安心登山の考えの根本は、ゆっくりと確実に、ということであると思っています。実際の行動も山に対する考え方もゆっくりと確実にです。
その11 汗喜の法則
マロリーの「そこに山があるから」という言葉は、広く人口に膾炙されていますけれど、昨今の登山ブームを説明するするには不十分過ぎるでしょう。
そこでぼくは考えました。すると頭にひらめいたのです、「そうだ。これだ!」それが「汗喜の法則」だったのです。
ヒトという動物はパンだけでなく「うれしい、たのしい、おいしい、etc」といった「善」をも糧としなくては生きていけません。そんなことはだれもが本当は知っていることなのに、バブルがはじける昨日まで大勢の人が知らないふりをしていたんだと思います。汗をかかない快適さの方を選んでいたのです。本当の喜びは汗を流す中にある、と気付いた人たちが歩くことを始め、山に登ることを始め、それが会社の仲間や地域社会を巻き込んでブームと呼ばれるまでに成長したんだろうとぼくは思っています。「なぜ山に登るのか」という質問の数ある答えの一つとして「山登り・山歩きは汗喜の法則を証明してくれるから」とぼくは答えたい。
その12 山を知り己を知らば、百山するも危うからず
4月の浅間山での遭難に関して朝刊紙のコラムに「登山者に熟年が多くなったというより、気軽な旅の延長に登山という分野が入ったのではないか。増える中高年登山者遭難の背景にそんな昨今の山登りの姿が見えてくる」とあって共感。
今夏の玄倉川の事故は山の事故ではありませんでしが、根っこは共通しているように思えて仕方ありません。常々お話していますように「山を知り己を知らば、百山するも危うからず」をよろしくお願いします。 後半へつづく
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