元西独シュミット首相の話
平成15年11月16日テレビ東京の日高義樹レポートで元西独首相シュミット氏との対談が放映された。これまでの経歴が示すように、シュミット氏から世界の政治情勢など極めて含蓄のある話を聞くことが出来た。
ただ気になる発言が二つあった。第一はドイツは周りの国に謝罪は終わっているが、日本は謝罪をしていないと述べた事。第二は中国の軍事力強化に対する日高氏の質問に対して、軍事力の強化をしているのはアメリカであると述べ、中国の軍事力の強化については何一つ触れなかった事である。
第一の事については、やはりドイツ人はそういう認識であるのかという事である。今までもドイツ人からはそういう発言があった事はしばしば色々な所で聞かされている。彼のような世界情勢に明るく見識のある者でも、そういう認識をしているという事を知った。
ドイツは全ての責任をナチスに負わせたのである。しかし当時ドイツ人は殆どナチスに陶酔していたではないか。ナチス=ドイツであったのだ。彼らはナチスが悪かったという論理を構築して、一般のドイツ人の責任を逃れたのであろう。その負い目があるが故にドイツ人たちは、日本は謝罪をしていないと言いふらしているのであろう。彼のような見識のある者もそれに組している事が分かった。
近代以前のヨーロッパでは、謝罪する事は相手の復讐を甘受する事であった注(1)と言われている。その様な伝統は今も残っているのであろう。それでドイツでは謝罪の対象としてナチスを選び、ナチスを復讐の対象とする事に成功した。我国では国民全体として謝罪をした。文化の違いであろうか。我国の方がナイーブなのであろうか。そのために日本は今でも復讐の対象にされているのではないだろうか。その上、我国民の中には周辺国に便乗して謝罪を要求している者がいる。これもドイツ国民との甚だしい違いであろう。我国民の中にそういう事を言う者がおれば、それを大いに利用しようとする国が出てくるのは当たり前である。
しかしこの様な考えが世界に行き渡っている事は、中国や朝鮮半島の国々からの発言が世界中に強くなされているからであろう。これは我国にも責任がある。そういう事を言われても、言われっ放しになっているのであろう。外務省の怠慢である。日高氏がその場で訂正したかどうかは分からなかった。
しかし味を占めた連中は今後もカードとして使い続けるであろう。中国の諺にも曰く「水に落ちた犬は更に叩け」と。
第二の事であるが、ドイツの周りには現在軍事的に脅威のある国は存在していない。平和な状態が保たれている。ソ連が健在であった頃はアメリカの力に頼っていたが、ソ連崩壊後の今はソ連の脅威はなくなった。寧ろ現在はアメリカの一国覇権が目障りになってきたのではないだろうか。、ドイツにとっては中国は脅威にはなっていない。むしろ経済のマーケットとして魅力のある国なのである。いらぬ発言をして中国を刺激したくないのであろう。
彼はやはりドイツの立場を考え、国益を考えて発言している事を強く感じさせられた。
[注(1) 会田雄次:リーダーの条件(新潮文庫) 52頁]
(2003/12/05)