―――・・・・・!?
「ちがうのぉ・・。」
 幼い男の子・・・金太は、じっと目の前でうつ伏せになってになって倒れる老人を見ていた。
「金太、それはな。」
老人はうつ伏せになったまま金太に話かける
 と、その時。
 弾ッ!!
突如、老人の身体が跳ね上がった。
そして、呆気に取られる幼い金太の背後にまわり・・・。
「・・・!」
 その腕が逆の方に伸び、老人の背に仰向けの体勢で背負われる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
地面にそのまま金太は向かう。
頭から落とされる!!
 そう思った時、金太の頭が何かに支えられた。
「これを当てる・・・。」
老人が金太の片足を引っ張ったままうそぶいた。
金太の頭を支えていたのは、老人の足の甲だった。
「投げた相手に足刀を当てる・・・でなければ相手を仕留められん、だだの技に過ぎぬ」
――――――じぃちゃん?

 ばしゃ・・・ばしゃ・・・。
金太は岸をめざし、水路を進んでいた。
(おねがい・・・示して・・。)
「何なんだ・・・?」
 記憶が、不可解な記憶がフラシュバックしていく・・・。
(いつか・・・あの子達が大人になった時のため、それが・・)
(私の薔薇・・・私の王子様の為・・・・貴方へ。)
「何だ・・・・。」
 映像、そして言葉が一気に頭の中を循環していくようだった。
だが、そいずれも断片的であり、認識できるには至らない。
(昔々、ある所に、お父様とお母様を亡くし、深い、深い悲しみにくれる幼いお姫様がおりましたー)
(じゃッァ、てめぇは王子様殺しだな?アハッ!)
(『分子製造機』?ははは・・・まるでお空に浮かぶお城の様なお話だ。)
「っ!?」
――魔物を倒すはずだった勇者は、いまや魔族の王となってしまいました。
――えーー・・じゃあぼくだったら・・・勇者なんかならないな。
――じゃあ、何になるの?
――えーっとね。
 さっきよりも、やや鮮明な記憶・・・幼い自分自身の姿だった。
――うーんとね、ぼくも魔物になる!!
――えっ?それじゃこの勇者と同じなんじゃ・・・?
――ううん、ぼくは魔物をやっつける魔物になるんだ!!
――でも、それじゃ人間もやっつけちゃうの?
――うーーーん・・・・・・・悪い人間ならやっつける!!
『金太、それを『修羅』と呼ぶのだよ。』
 金太の前に立つ老人。
『善も悪も無く・・・唯、倒すのみ・・。」
――おじぃちゃん、ぼく『しゅら』になれるの?
老人が振り向いた。
『なりたいのか?―・・・・・・・。』
「だから、何だってんだよ!!!」

 現実の金太の叫びが、走馬灯のようなフラッシュバックの奔流をせき止める。
金太の足が水路から、コンクリートの岸にかかった。
 先刻、腹に膝を入れられたせいか・・・。
ひどく熱い痛みが腹から上へ込み上げてきていた。
「ごほ・・・・・ごほ、ごほ・・・がはっ!がはっ・・・・。」
 金太は咳き込みながら屈んだ、彼の口の中一杯に鉄のようなにおいが広がってきた。
と、その時、金太は口を押さた手の中に何かがあるのに気付いた。
 血の固まりでも吐いたのか?いや、それにしては妙に固い。
金太は手をゆっくり開いた。
「これは・・・。」
 その手中に奇妙に輝く一握りの光があった。
血や唾液にぬれた、灰色の指輪であった
「たしか・・・夢の中で・・・。」
 再び、記憶のフラッシュバックの波が金太に襲い掛かろうとした。
(オレは、一体・・・。)
ゴゥ、ゴゥ・・・と。
 水の流れる音のみが彼の耳に届いた。

 

 

(オレは、一体どうして・・・)

 

 

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