プロ野球人事部の独自指標(三訂版)について


 
1.基本的な考え方

前回の独自指標に対しては、多数の疑問・反対意見を頂戴しました。
また、自分でも攻撃ポイント、投手ポイントの数値がピンとこなかった為、野球選手を評価する指標を再考しました。

野球は攻撃と守備に大別でき、それぞれで求められる結果が大きく異なります。

攻撃(打者、走者)
 1.1つでも多く塁を奪うこと(得点はその結果です)
 2.アウトにならないこと(攻撃を継続することが勝利への近道です)

守備(投手、守備)
 1.1つでも多くアウトを奪うこと(守備を終了させる為の近道です)
 2.出塁、進塁させないこと(失点回避はその結果です)

野球の公式記録を用いて評価することが難しいのは走者と守備です。
走者としての実績は、盗塁の成功/失敗と得点数が公式記録から得られますが、進塁数が得られず、走者としての評価は困難です。
守備も、守備率や補殺数、刺殺数は得られますが、それらの数値から守備貢献度の測定は不可能です。

反対に打者と投手としての評価は概ね可能です。
 打者は、奪塁数(塁打数+四死球数+盗塁数)、被アウト数(打数−安打数+併殺打数+盗塁失敗数)
 投手は、奪アウト数(投球回数)、与塁数(安打以外の出塁数+塁打数)、対戦打者数
上記により、不完全ではありますが基礎数値が得られます。

なお、犠打、犠飛、投球妨害、走塁妨害は被アウト数や与塁数には含みません。
前回指標は勝利への貢献度を計測するものでしたが、今回は打撃実績と投手実績を計測するもの、という観点の違いによるものです。

この考えに沿って、改訂版の独自指標を作成しましたが、これを投球回数や打点数イメージとなるよう
再改訂しました。

 
2.評価方法 2015.12. 5更新

攻撃に求められることは塁を奪うこと、守備に求められることはアウトを奪うことです。
塁を奪わなければ得点は出来ませんし、アウトを奪わなければ試合は終わりません。 今回の指標は この視点での評価に特化します。

(1-1)野手の攻撃実績(仮想打点数)
 打席に立った結果は、出塁すれば成功、アウトになると失敗です。
  成功の度合いは、塁打数と四死球数で計測(=長打は大成功、四死球や単打は成功)
  失敗の度合いは、アウト数で計測(=併殺打は大失敗、アウトは失敗)
 走者も同様に、成功は盗塁数、失敗は盗塁死の数で計測します。

 奪塁数 = (塁打数 + 四死球数 + 盗塁数)−(併殺打数 + 盗塁死数)

 野球は4つの塁を奪うと1点獲得できる競技なので、奪塁数4で1打点獲得と同じと考え、仮想打点数を1とします。
 この変換により、その打者が何点分の仕事をしたのかを表します。 通常の打点と同等のイメージを持つことが出来ますので、
 例えば仮想打点数100というのは100打点と同様に達成するのが難しいレベルにあると見なすことができます。

 2015年度実績で仮想打点数100以上は、山田哲人選手(ヤクルト)と柳田悠岐選手(ソフトバンク)の2名、80以上は
 この2名の他に5名です。 打点は100点以上は4名、80点以上は4名の他に8名となっており、差異の少ない人数となっています。

(1-2)投手の投球実績(仮想投球回数)
 打者と対戦した結果は、アウトを奪えば成功、出塁させると失敗です。
  成功の度合いは、アウト数で計測
  失敗の度合いは、与えた塁打数と四死球数、暴投数、ボーク数で計測

 奪死数 = アウト数 − (簡易塁打数[※] + 四死球数 + 暴投数 + ボーク数)

 ※投手の被塁打数が公式記録に存在しない為、本塁打を除く安打数と塁打数の比1.22(=塁打数÷安打数)を用いて算出します。
   簡易塁打数=(被安打数−被本塁打数)×1.22 + 本塁打数×4

 野球は3つのアウトを奪うと1投球回となるので、奪死数3で仮想投球回数を1とします。
 走者を出さなければ投球回数と仮想投球回数は同数になり、走者を出すと投球回数から与えた塁数に相当する分をを減じたものが
 仮想投球回数となります。

 なお、仮想投球回数は投球回数と同様に表記しますので、3に満たない奪アウト数は小数点表記とします。
 (奪アウト数6→仮想投球回数2.0、奪アウト数7→仮想投球回数2.1、8→2.2、9→3.0、10→3.1)

(2-1)野手の攻撃能力(奪塁率)
 攻撃実績(仮想打点数)は、打者または走者として塁を奪った塁数を数値化しました。
 これに対し能力評価は、打席に立った際に塁を奪う確率とします。

 奪塁率 = 奪塁数 ÷ 打席数 = (塁打数 + 四死球数 + 盗塁数 − 盗塁死数 − 併殺打数) ÷ 打席数

 奪った塁数から失った塁数を減じ、1打席数あたりに1塁を獲得する確率を求めたものです。
 奪塁率が5割であれば、塁を一つ奪う確率は5割となり、2打席で1塁を得る能力があることを示します。
 50%以上

(2-2)投手の投球能力(奪死率)
 投球実績(仮想投球回数)は、塁を与えずにアウトを奪った数を数値化しました。
 これに対し能力評価は、対戦した打者から塁を与えずにアウトを奪う確率とします。

 奪死率 = 奪死数 ÷ 対戦打者数

 打者と対戦した際に、アウトを奪える確率を求めたものです。

(2-3)奪塁率と奪死率の評価水準を考える
 選手を評価する際の目安を考えてみます。
 奪塁率の分母となるのは打席数、奪死率の分母となるのは対戦打者数です。 それぞれ試合数と同数以上の選手を対象とします。

 ちなみに 2015年シーズンで143打席以上の打者は154人、対戦打者数が143人以上の投手は158人でした。
 この人数が支配下登録選手に対して占める割合は、野手は37%(154/414人)、投手は38%(158/412人)です。
 また、全選手の年俸を高い順に並べると、野手の154番目も投手の158番目も共に2600万円となります。
 この数は、中堅以上の選手をカバーするに十分な人数になると思われます。

 野手と投手を それぞれ、奪塁率と奪死率のレンジ単位に集計したものが以下の表です。
 
野手人数 奪塁率/奪死率 投手人数
1 70%〜 -
1 60%〜69% -
17 50%〜59% 1
65 40%〜49% 19
54 30%〜39% 54
15 20%〜29% 61
1 10%〜19% 22
- 10%未満 1
154 合計 158

 野手の上位2名は歴代打者と比較しても傑出した成績を残した、ソフトバンクの柳田悠岐選手(打率.363、34本塁打、32盗塁)と
 ヤクルトの山田哲人選手(打率.329、38本塁打、34盗塁)、投手トップはソフトバンクのサファテ投手(41セーブ、防御率1.11)です。

 10%のズレはありますが、奪塁率と奪死率は同様の分布となっています。
 奪塁率50%以上/奪死率40%以上を記録するのは 2015年度支配下登録選手の5%(野手19人、投手20人)。
 奪塁率40%以上/奪死率30%以上は同じく20%、奪塁率30%以上/奪死率20%以上は33%の選手となります。

 おおよその目安として、奪塁率40%以上/奪死率30%以上であれば「一軍選手として水準以上の成績」、
 奪塁率50%以上/奪死率40%以上は「素晴らしい成績」と評価することが出来そうです。


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