今月のTIPS (No.12) 〜書くこと・読むこと・登ること〜
「今月のTIPS」は今回で最終回となります。最後のテーマは、上達のためのマル秘テクニックをお教えします。といっても、「足を切る」ような技術的なことではありません。また、「やればできる」というような精神的なことでもありません。
じゃぁ何、って思いました?
思いませんよね、タイトルに書いてある通りです。
ひとつは、書くこと。
山へ登ったら、岩を登ったら、沢を登ったら、是非記録を書いてみて下さい。岩小舎のためでなく、自分のために。短くてもいいです。難しい部分をどう登ったか、どんな場面でひやりとしたか、アプローチはどうだったか、どこで道に迷ったか、天候の急変にどう対処したか・・・。人間は忘却の動物です。書かなければ忘れます。忘れたら、自分の血や肉になるはずのものを捨てたのと同じです。記録担当にならなくても、ぜひ、自分自身の記録を書き留めて下さい。
二つめは、読むこと。
山の本には、二種類あります。技術やルートを解説した本と、それ以外の本。これは、やはりどちらも読みたいですね。技術の勉強はもちろん大切で、私も山塾に入りたての頃、「沢登りの本」、「最新クライミング技術」、「生と死の分岐点」、「2万5000分の1 地図の読み方」などを真剣に読みました。またそれと並行して8000m峰初登頂の話や、日本のアルピニズムの歴史、また新田次郎の小説、クライマーの伝記、遭難の記録等も読みました。これも、山と深く関わっていく上で欠かせないことだと思います。
そして、三つめは登ること。
これは、ある程度、回数も必要です。岩、沢、雪、氷、スキーと1〜2年間でひと通り経験したら、少しずつ自分の進みたい方向が分かってくるでしょう。そしたら、その方向へ重心を移動して、そこで集中的に経験を積み重ねていくのもひとつの方法です。
そして登ったら書く。登れないときは読む。この3つを上手く組み合わせていくことで、自立した登山者へ一歩ずつ近づけると思います。
無名山塾・本科会報「月刊 岩小舎」に連載