今月のTIPS (No.9) 〜やればできる〜
やればできる・・・・って、今回はかなり精神的なタイトルですが・・・・、
そう、やればできるのです。
まず、私の経験からお話します。
去年の秋、日本を代表するクラックの名ルート『小川山レイバック』に挑戦したときのこと。一回目はトップロープ。岩が濡れていたこともあって、私には難しく、かといって講師は下ろしてくれず、何度もテンションを掛けたあげく40分ぐらいかけて泣きべそをかきながら登りました。
しかし、他パーティーの登りを見てからの2回目。最初のトライで精神的にも肉体的にもかなりのダメージを受けていましたが、ビックリするほどあっけなく登れました。そして、3回目は、カムをセットする練習をしながら余裕を持って、さらに4回目はリードの練習もしてみました。
何を言いたいのかと言うと、2点あります。
まず1つめ。最初のトライで苦労したり、落ちたりすると普通は精神的にまいってしまうものです。ましてや他の人が登れて自分が登れないという状況になると、とてもめげてしまいます。再び落ちるのが恥ずかしい、再び登れないのが恥ずかしい、そんな気持ちになりがちです。
でも、やればやるほど、そして、回数を重ねれば重ねるほど、たとえ登れなかったとしても、どこかしら必ず上達しています。最近の経験では、11月末、伊豆のとある講習会に参加した私は、やはり数え切れないぐらい落ちまくって相当ボロボロになりました。しかし、インストラクターから、「もう一回やりますか?」と聞かれたら、必ず「はい」と答え、再び気合を入れなおして、良いイメージを描きつつザイルを結んで岩へと向って行きました。別に、自虐的でも、格好を付けているわけでもなく、『やればやるほど必ず進歩する』ということを知っているから(信じているから)、時間が許す限り、順番待ちをしている他の人に迷惑を掛けない限り、登ることにしています。
そして、2つ目。ルートは一回登って終わりではありません。2回目は、さらに無駄なく、さらに正しい動きで登る意識をしてみましょう。そして3回目はさらに上を目指して。数多くのルートを登るほうがもちろん楽しいですが、ひとつのルートを集中して登ることでも上達は間違いなく実感できると思います。
クライミングの練習には、いろんなやり方があります。それぞれの皆さんが自分にあったやり方でやって構わないと思います。でも、このことは頭の片隅に置いておいて損はありません。
やればできる。
やればやるほど上手くなる。
無名山塾・本科会報「月刊 岩小舎」に連載