今月のTIPS (No.8) 〜スタティックに行こう!〜

 スタティック(static)。

 本科1年次生には、あまり聞きなれない言葉かもしれませんね。意味は「性的」、いや失礼「静的」。「static electricity」というと、「静電気」。スタティックの反対語はダイナミック(dynamic)です。

 スタティックとダイナミック。山の世界では、わりとよく使う言葉で

 【スタティック・ロープ】伸びないロープ。フィックスロープ、レスキュー向き。リード不可。
 【ダイナミック・ロープ】岩登りで使うロープ。墜落の衝撃を、ロープの伸びで吸収します。
 【ダイナミック・ビレー】制動確保。雪山などで、ロープを流しながら徐々に止める技術。
 などがあります。

 そして、今回のテーマとなるのが、【スタティック・ムーブ】と【ダイナミック・ムーブ】。

 岩登りは『スタティック・ムーブ』が原則です。
 フリー・クライミングやボルダリングなどが盛んになった今では、「ランジ(ダイノ)」(=ジャンプすること)や「デッド・ポイント」(=両手で一気にひきつけた瞬間、次のホールドを取るムーブ)といったダイナミック・ムーブが普通に行われるようになってきました。

 特にデッド・ポイントは、皆さんが意識していないかもしれませんが、深川SCクライミングウォールの山塾貸し切りデーにおいて、1年次、2年次、研究生を問わず、よく見られますし、言い換えれば、次のホールドが遠いとき、つい気軽にやりたくなってしまうテクニックです。

 ですが、さらに上を目指すならば、デッド・ポイントを駆使して完登した課題を、今度はスタティック・ムーブ(つまり、静止した体勢から次のホールドを取りにいく)で登れるように練習をしましょう。当然、デッド・ポイントで登るより難しく、正しい動きが要求されます。
 アルパインルートでは、デッド・ポイントはほとんど使い物にならない技術です。いちかばちかのギャンプルは避けたほうが賢明です。そのため、スタティック・ムーブの練習が重要になります。

 ぐっとこらえた体勢からの次の一手。これが正確にできるようになれば、クライミングのレベルは一段高い次元に入ったと言えるでしょう。

無名山塾・本科会報「月刊 岩小舎」に連載