今月のTIPS (No.2) 〜8の字結び〜

 無名山塾の研究生10人中、3人しかできなかったこと。それは何だと思いますか。

 その答の前に、山で使う代表的なロープの結び方を挙げてみましょう。まず、8の字結び。それにクローブ・ヒッチ(インク・ノット)。あとはガース・ヒッチとプルージック。
 とりあえず、これだけできれば初心者としては充分で、山塾の講習(基本ステップ)ではそれ以外はほとんど必要ありません。その中でも、8の字結びはハーネスとメインロープを連結する際にも使われ、おそらく最も重要、且つ、いろんな場面で役立つ結び方と言ってよいでしょう。

 ところが、この基本中の基本がきれいにできる人は山塾にはほとんどいません。先日、天覧山で実施した技術委員会主催の「岩の技術研修会」では、ハーネスにメインロープを結ぶ際、完璧な8の字結びができたのは10人中3人だけでした。研究生以上を対象にしてこの状況ですから、本科生ではおそらくそれ以下でしょう。

 8の字結びはきれいに結ばれることによって、初めてその真価が発揮される結び方です。ねじれや交差があればその部分で強度が低下しますし、また、一度強いテンションがかかってしまうと、ほどきやすいはずの結び目は堅く締まりどうにもならなくなります。

 8の字結びは奥の深い結び方です。ハーネスに連結する8の字(Figure-8 Follow-through)の他、ループを作ったり(Figure-8 on a Bight)、2本のロープを連結したり(8の字束ね結び)、中間者を連結したり(In-Line Figure-8)、8の字にもう半ひねりを加えて強度を増したり(Figure-9)、さらには、支点の構築やセルフビレーのセットで使うラビットノットなど様々なバリエーションがあります。

 本科生の皆さんには、将来、8の字のバリエーションをいろいろ覚えて頂く上でも、まず基本の8の字でメインロープをハーネスにきれいに結べるようになってもらいたいと思います。自分の結び方が完璧かどうか、今度参加する講習会で、研究生にチェックしてもらうことをすすめます。研究生の8の字結びは、天覧山以降、完璧になっていますよ。

無名山塾・本科会報「月刊 岩小舎」に連載