人工壁が世の中に登場するより遥か以前、その出現を予言し、「ボルダー公園」という近未来エッセイを書いた人がいる。無名山塾主宰、岩崎元郎氏その人である。
岩崎さんは、今でこそ、人工壁に対してあまり肯定的な捉え方をしていないが、もし30年ほど前に人工壁があったなら、現役バリバリ当時の岩崎さんは、雨の日などに足しげく通われたのではないだろうか・・・と勝手に想像したりもする。
さて、人工壁。つまり、クライミング・ジム。
人工壁が上手く登れる人は自然の岩場もスイスイと登れ、自然の岩場が上手く登れる人は人工壁でも軽々と登れることだろう。
では、どちらから練習するのが良いのだろうか。
これについては、意見が分かれるかもしれないが、人工壁は手足の置き場所がはっきりわかるので、教える側からしても教わる側からしてもやりやすそうに思える。
しかし、人工壁でしかクライミングをしたことがない人は、自然の岩場に色付きのテープが貼ってないのに驚くだろうし(?)、それ以前に、クライミングに潜む危険性をあまり理解していないと言ってよいのではないかと思う。だから、そういう人たちが本番のアルパイン・ルートへ踏み出す際には、外で起こりうるリスクについて一から勉強することが必要となってくる。
そうしたことを踏まえて考えれば、日和田山の岩場は、山塾本科生のスタート地点として相応しいし、そこから始めるのが最良の選択のような気がする。そして、日和田@ABを受講した後、人工壁でも並行してトレーニングを重ねていくのが上達への早道となるだろう。
人工壁でのトレーニング方法についてはいろいろなやり方があると思うので細かい点には触れないが、バランスを意識して「正対」と「振り」の両方を正しく習得することから始めるのが良いようだ。
東京近郊には10カ所以上のクライミング・ジムがあるので行きやすいところで練習をするのも良いだろうし、あるいは『本科生の本科生による本科生のための人工壁トレーニング』を毎週水曜か木曜の夜、パンプ2(JR南武線・中野島駅徒歩約8分)で実施しているので、興味がある方は下記までお問い合わせ下さい。cupcolumn@yahoo.co.jp
無名山塾・会報「C-UPワールド」2003年7月号に掲載