スノーシューとワカン。
この優劣については、それぞれの支持者がいろんな場所やいろんな誌上で、いろんなことを言ったり書いたりしている。そのせいもあって、へっぽこアルピニストとしては、結局どっちがいいのかよく分からない・・・。
それなら実際に両方を使ってみようということで、2月16日のタカマタギ講習に研修参加し、ワカンとスノーシューを途中で付け替えて、その感触の違いを確かめてみた。
それぞれの使用感については、独断と偏見が入っているかもしれないが、その点はご容赦願いたい。(スノーシューは、踵が固定される山岳用のタイプを前提としている)
まず、その前に、客観的に誰もが同意できるポイントとして、次の4項目で優れているほうを書くと、次の通りとなる。
1.価格 ワカン
2.大きさ ワカン
3.重量 ワカン
4.接地面積 スノーシュー
上の4点からは、ワカンは経済性に優れ、軽量かつコンパクトであるが、フカフカの新雪では、スノーシューのほうが歩きやすい(平坦地の場合)であろうことは誰にでもわかる。
ここまではよいとして、問題は山ではどうかという点だ。まず、トレースのない新雪の場合を考えてみると、
5.登り スノーシュー
6.急な登り スノーシュー
7.下り スノーシュー
8.急な下り 引き分け
となるだろう。登りについては、急になればなるほどスノーシューのキックステップが威力を発揮する。軽く蹴り込んでいくだけで、急斜面を楽に登っていけるのは、実際にやってみればすぐにわかる。
ただし、急な下りの場合、山岳スノーシューといっても踵の部分がそれなりに長いので、怖さを感じてしまう。そんなときは、横向きになって斜め下へ降りるようにすれば快適だ。
次に、踏み固められたトレース上や、締まった雪では、こんな評価とした。
9.登り 引き分け
10.急な登り スノーシュー
11.下り ワカン
12.急な下り ワカン
登りにおけるスノーシューの長所は、足とスノーシューが一体化しているということだ。ワカンでキックステップを多用すると、靴がずれてきて紐を結び直さなければならなくなることがあるが、スノーシューでは締まった雪でもガンガン蹴り込むことができるので、締まった雪においても、新雪同様、急登には強い。
だが、そんなスノーシューも、固い雪の下りは苦手だ。まず膝への衝撃はワカンより大きいし、多少のデコボコがあるとけっこう歩きにくい。また、トレースのある急な下り坂では滑りやすいのでこれがとても厄介だ。わざとトレースを外して新雪を下れるようなら、まず間違いなくそのほうが下りやすいし、もしくはいっそのことグリセードにするか、あるいは、どちらもできない状況ならば、後ろ向きになって下るのが安全だろう。
以上が、両方を使ってみての感想だ。
トラバースについては、スノーシューは弱いとされているが、柔らかい雪では問題ないし、固ければ、斜面に正対してキックステップをしながらカニのように横移動すればよい。アイスバーンでは、状況に応じてアイゼンに付け替えるような臨機応変な対応が必要かもしれない。
そして、これらを総合的に判断すると、ワカンよりスノーシューのほうが良い道具だと感じている。
最後に、この両者を使い分けるとしたら、ラッセルの可能性が高いと最初から分かっている場合にはスノーシューを、そして、ラッセルの可能性はあまりないが、万一に備えて持っていくということであればワカンを、ということになるのではないだろうか。
無名山塾・会報「C-UPワールド」2003年2月号に掲載