「ムメイサンジュクって何?」
「イワサキモトオって誰?」
冬山を始めたいけど何をどうしたらいいのか全く分からなかった私は、たまたまインターネットで「無名山塾」ホームページにたどり着いた。入会についての説明は分かったようで分からなかったけれど、まぁいいか、と思い切って飛び込んでそろそろ1年になる。
しかし、2年生になろうとしている今になっても、「無名山塾ってどういうところなの?」という他人からの質問に上手く説明できる自信はあまりない。
なんとか答えるとしたら、
「夏は沢がメインだなぁ」
「岩もゲレンデで少々」
「アブミの講習もやるし」
「冬山も、雪洞やラッセルとかやるよ」
「アイスクライミングはひと冬に1回かな」
「救助訓練やサバイバル訓練も勉強になるね」
「本番ルートはほとんどないかなぁ」
「泊りの場合は、基本的にテントだね」
「講習料金はそれなりにかかっちゃうな」
と、講習の概要を説明し、最後にふとこう付け加えるかもしれない。
「無名山塾というのは、あれこれと基礎的な登山技術を学んでいく以上に、岩崎元郎という人の山に対する考え方を聞くっていう場所なんだと思うよ。まぁ、好き嫌いがあったりとか、考え方が若干違っていたりとか人それぞれなんだけど、そういう中で岩崎さんの話に影響を受けつつ、最終的には、各人が『自分なりのヤマ』を見つけていく・・・そういう感じかなぁ」。
と、こう書いてはみたものの、『自分なりのヤマ』を私が見つけたかと言えば、答はノーだ。わずか一年でことが果たせるほど山の世界は薄っぺらなものではないということだろう。
ただ、現段階で私が夢中になっているのは『岩登り』。だから、しばらくはその方向へズンズン進んでみようと思っている。
三ツ峠や伊豆・城山などのゲレンデでマルチピッチ・クライミングの経験を積み重ね、北岳バットレス第4尾根、一ノ倉沢南稜、滝谷ドーム中央稜といったクラシックの入門ルートに自分たちの力で挑戦できるのはいつになることだろうか。その日が来るのを楽しみにしつつ、トレーニングに励みたいと思っている。
そして、ちょっと行き過ぎたかなと思えば、また逆方向に戻ってくることもあるだろう。そうやって行きつ戻りつしながら『自分なりのヤマ』を見つけていく。そういうことができるのが山塾の良さなのかもしれない。
無名山塾・会報「C-UPワールド」2003年1月号に掲載