2006年 技術委員会コラム 「こちら技術委員会」


1月 <雪の降る夜は>

 今期、雪山シーズンでの講習トップを飾ったのが例年12月に行う富士山・・・ではなく、富士山に雪がないので谷川岳(天神尾根周辺)と相成った。
 豪雪地帯とは言われていた日本海側の地域、それも最近では過去のこと・・・だったが、今年は多い、ドカッと降る降る。様々な障害を生じ大変であることが報道されてくる。まだ水上から土合周辺なら少しは大丈夫と思っていても、その洗礼を浴びた。
 17日(土)の夜、土合に車で向かう。駅前にはそこそこ雪がある。「なんか雪山って感じ!」などと軽口がでる。やがて雪は強く降り出し、吹雪いてくる。どんどん降る。朝方は車のドアが動かないくらいに積もっていた。「本格的に吹雪じゃん!」「関越も一部通行止めだし、遅れてくる人もいる」「ここから車脱出できないかも、中止か?!」なんてドタバタがあったが、ある意味、絶好の雪山訓練日。吹雪が強く降雪量も半端でなく雪崩れる可能性もあり天神尾根にでるよりも、近くても十分講習になる斜面を選択しての講習となった。腰くらいのラッセルやら、急斜面では雪面が崩れ、ミニ雪崩といろいろ楽しめた!?。
 これだけいっぺんに降り積もると、均質でいかにも積雪って実感できる。そう言えばまたこの上越周辺の山、3月にも講習があるんだな。そうそう「雪洞泊で山に登ろう!」で平標山に。これだけ多いと3月ころはどうなっているだろう。均質な厚い層ができているだろうか。寒暖の差が少なければ氷のような層は少ないかな、春先大きくまとまって落ちることもあるな、などなど3月に答えはわかるだろう。
 今は、積極的に山行に雪洞泊を取り入れ計画することはないだろう。ひと昔いやふた昔前、テントが軽くなかったとき、普通でも重さがいまの3倍近くあり、山行が長くなると湿気を帯び、凍結し益々大きくなり、とんでもない代物になった時代。そんな時の積雪期長期山行でそのテントの欠点をおぎなうために利用されたと話には聞く。戦後はじめて、劔から槍までの積雪期縦走隊では雪洞利用だったとか。ウ〜ン、そんな気力がある? いや今の軽量テントであっても、そんなに長い時間を山に使う状況でもないしなー。いま実際に使うとしたら、テントを風で飛ばされてとか、ポールを破壊されての緊急避難として想定されることが多いと思う。そうでなければ、はじめから「泊まるぞ雪洞に!」で体験学習路線。中での宴会も楽しそうだし。
 雪洞掘るのに横穴式とか縦穴式とか言うけれど、縦穴は平坦面や緩斜面に縦穴に掘り下げて上にシートなどでかぶせ屋根とするタイプ。時間的には短時間で造れるが、大雪が降ると困るか。居住性は悪いな。ほんとに緊急時、ビバーク向き。大きな樹木の脇はそんな穴を掘るのは楽そう、風が避けられれば大きく違う。生き延びるためにはね。いつも造るのは時間に余裕がある!?ので横穴タイプ。斜面を横に掘り進み部屋を造る。しっかり造ると壊すのがもったいないくらいに・・・本当か!
 そうそう掘るときは結構濡れるんだな、これが。手袋がその一番に上げられる。普段の山行にはもっていくことはないけど炊事用のゴム手袋が意外といい、そんな話しもある。でもなんか冷たそうかも。ま、はじめから余計に予備の手袋用意するのもいいかと思う。それからオーバーヤッケも防水性が高いほうが有利だ。そのために雨具にすることもないだろうが、多少なりとも防水性はあるといい。雪面に体が入って仕事できる余地をキープするまで根気がいるが、諦めずやるしかない、きょうはそこで泊まるのだから。ピッケルを振るって掘らないと進まないほど堅く締った雪に諦めかけたときもあったが、なんとかなるものだ、内心焦っていたけど(笑)。
 一息つける内側は風の影響はほとんどなく、暖かくすら感じる。雪に含まれる空気の部分と、人が入ることで少し湿り気をかもし出す零度の水分、これは周りから比べると暖かいので寒い外部より「いい感じ!」となるらしい。湿気っぽいのはしょうがない。外では厳しい吹雪でも内側は静かで楽しい雪洞ライフが過ごせるのだから。もっとも降雪が多いときは出入り口が塞がれないように除雪も必要かも。気を付けよう雪の降る夜は酸欠とガスもれ事故?!