<残された届け>
「エアリアマップの実線ルートの計画なら自主研修山行届けを出さなくてもいいんじゃないのかな」いつだったかそんな声が。
「出さなくてもいい」なんて規定は無い。「出していない計画」には責任を持たないというお約束はあるけれどね。
「ダカラさ責任は自分でトルからさ、出さなくてもいいんだよね」
確かに。複数の山岳保険に入っている人もいるしね。ちなみに当会員が入っている山岳保険は、認知された計画以外では保険対象にはならない。
ここでまとめておくけど、「自主山行できる」会員同士での山行計画はなんであれ出すのが原則と考えている。マル秘山行にしたいのなら各自の責任で、いわゆるプライベート山行か・・・
ところで「会への届けを出していない計画については何かあっても責任は持たないのが原則」これらの考えはお互い会員の中でのものだ。何かあっても責任側もそれで突っぱねるし、本人もそう理解してのことだろう。が、果たしてその家族などにおいてはどこまで認識してもらえているか? 届けを出した山行と届けを出していない(会員同士の)山行とを区別して認識してもらえているのだろうか。また、責任側もどこまで規約違反なので「各自の自己責任で」とつっぱり通せるか。
ま、そうするであろうけど、それぞれに確執だけが残るだけ。
(ここで少し話がシフト)
ねっとりした雪が降り続く。ここは2月のJ岳。J岳のバリエーションに通っていたころの話しだ。ねっとり雪の吹雪で不安定なため、ぼくらは再トライとバリエーションルート途中より撤退した。そして日を改め同じ山域に入山、そのアプローチ途中で知った顔を見かける。確か何か山関係の会でお見かけしたS氏、どうやらS氏の所属する(たしか代表だったか、または中心となっていた方と記憶する)N山岳会で遭難があったとのこと。J岳となりのP岳だ。ちょうどぼくらが撤退した日時と重なる。一般ルート(エアリア実線)を登ってのことらしい。まだ行方不明とのこと。消えてしまったのはN山岳会所属の20代後半の男性と会員外の20代の女性ふたりパーティだそうだ。夫婦ではなく、ただの男女パーティ。計画書云々というよりは言葉でどこどこに行くといった内容らしい。ともかくP岳らしいとのこと。そこでN山岳会の数人で手がかりを探しているとのこと。
その後、ほくらは何度かその山域に入る。そしてなぜかいつもS氏を見かけた。ふたりはなかなか見つからない。会のメンバー2〜3人と一緒の時もあれば、S氏ひとりのときも。長期戦になると大変だ。N山岳会ではどう規約があるかは知らないが、会員外との山行は認めない会もある。計画書だって正式には出ていないのだ。それでいけば会を挙げての援助もしなくてもいい・・・ってことで止められたらいいんだろうけど、そうもいかないこともあるのか、責任感で続けているのだろうか。山岳会名で情報提供のポスターまでつくられた。結局、春になり雪解けはじめたころにふたりとも見つかった。そして確か秋口かその翌年だったか、その一般ルートに小さな遭難碑がつくられていた。それには女性の名が刻まれている、両親名と共に。想いが込められたつくりだ。そこにはメンバーの男性や山岳会関係のにおいは見当たらない。
遭難したふたりがどんな関係であったかなど知る由もない、残されたその男性の家族やその女性の家族、その山岳会との関係はどんなものだったのか、いろいろあったのかな、そのような遭難碑ができたことに象徴されるものがあったのかと適当な想像を加えてしまうのが関の山だ。
適当な例ではないかもしれないが当人が責任を持つからといって何かあっても、それだけで終わらない場合もある。無雪期のエアリア実線ルートだから何も無い保証はない。それを思えば、とくに会員同士の計画は「プライベートなんや」と当人たちは会とは関係ないと認識していても、世の中的には何かあった場合、そうお気楽にはことが運ばない場合もある。何らかの場合、組織(会)・当事者・当事者を含めた家族においてスムーズにことを進められる下地のために、ここはやはり「いつ、どこへ、誰と」の数行は届けておく必要はあろう。まあ、要はコミニュケーションが取れているかどうかなのだが。?山行を望むならそっと耳打ちしてくれればいい。とやかく言いはしない。実際、何事もなく終わってしまえばそのままなのだから。また、ほとんどの場合そうなるのだし。ただ何かおこる可能性はゼロではないので、そのときのためにも・・・という話だ。
「おいおい無届山行や会員外を含めた山行が多そうな?!お前がなにをエラソウに」と言われてしまいそうだが(笑)。
あ、じゃ夫婦とも会員の場合でプライベート山行はどうなるの。「これってプライベート届けなんていらないじゃん」 そうそうこの場合は・・・おそらく世間も会員同士であっても、「しゃあいな、プライベートやん」で会へ対応やら、いろいろな面でスムーズに納得してくれるのでは・・・だから責任側では都合悪くなったら、計画書を出していても、あ、それってプライベートな山だったようで・・・な?んて逃げちゃうこともできるわけで(ウソウソ・冗談です・笑)。それから会員外がメンバーに入った場合は?など挙げればキリ無いけど、要はいかにきっちりコミニュケートされているかどうかだろう。そうすることで、山は広がるし、なにかあってもお互いそこそこ不幸な思いをせずことを運べるのではないかと考える。