<仮想レスキュー>
このところ忙しかったけれど、あしたの休日は時間が空いた。そこで近くの岩場ゲレンデにいこうかなと考えMを誘った、そんな週末。
携帯の着信記録と留守電メモに気が付く。
[きょう下山予定のS山、日帰り予定でしたが、時間切れP峠でビバークします]
どれどれと計画書を見直してみる。11月初冬にもあたるS山、歩きの自主山行だ。少し雪はあるようだが声は元気そうだったし、緊急の様子もない。出発前にアドバイスしておいたし、ビバークの準備はしているし、大丈夫やろ(笑)
翌日の朝。ゲレンデにいくなら携帯が入るとこにしようか。それなら何かあっても大丈夫・・・と思いつつ、コースやその日の状況考えて、昼過ぎまで連絡ないなら少しは対応策も意識しておかないとな・・・(在京本部じゃないか、リスクマネジメントという意味でも)・・・次の日はどうも天候が悪くなりそうだし・・・
「そうだ京都に行こう!」
じゃない、少しでも現地に近いところに進もうか。後からゲレンデでなんかで遊んでいてなんて言われないように。結果的には何事もなく、そんな行動が笑い話で終わってもいいじゃない。そのほうが本当はいいんだし(笑)。
ところで何ゆえに行くかって!?
山での事故。
実際、岩場ルートでなにかある場合って、たいていはすでに結果が出ている。軽傷とか重症とかすでに・・・と、ある意味、できることも決まってくるし、ポイントも探しやすい。それに対して、縦走など歩く計画では場所の特定や、また特定できていたとしても、パーティ全員が同じ時間軸での環境にいるので、時間が経過すればするほど全体の消耗がひどくなり、全員に影響がでてくる可能性もある。今回はその後に天候の悪化の要素もあるので、対応は早いほうがいいと考えられる。居ながらにしても得られる情報はあるが、よりリアルな現地の状況や情報は、はやく多く得られたほうがいい。昼過ぎから動いては到着は夕方になってしまうところにあるS山。実質1日無駄になる。
もっともこの段階では、全員召集なんてことは考えてないし、いたずらに連絡をする段階ではない。仮になにかトラブルがあり、連絡が夕刻になってもとれない場合にはじめて、規定での下山予定の日を越えるので動きだすことになる。
でもな・・・そうなる前の先遣隊。とは大袈裟だけど、情報の収集ができていれば対応も的確にできるし、先遣隊だけで対応できてしまうかもしれない。また公的機関(警察その他)への対応も手早くできるだろう、これ結構重要なところとなると思う。これだけの動きができるなんて山塾の危機管理も結構いけてるじゃないか(自画自賛!?)。理由はそんなところか。もっとも、自分に多少時間の融通がつけられる状況であることが大きいのかも(笑)。
理屈はともかく、途中で無駄になってもそれはそれで面白い旅になるかも。途中で帰ることになったら・・・そこから近い山に遊びにいけばいいのさ。
さっそく雪山対応もできる装備を取りに戻り、いざ出発。車で高速を西に飛ばす。秋の風景から初冬を思わせる空気感に沈む山並が連なりはじめる・・・
[無事下山できました。元気です]そんな携帯が入ってきた。ホッ。
[ともかく元気でよかったね。お疲れさま]
ところでどうする?この後。ここから帰る途中のZ峠まで登ろうか時間あるし・・・
「どうしたの、携帯鳴ってるよ、それにゲレンデだからってちゃんとビレイしてよ、ロープ弛んでるよ」とM。
「あ、ごめんボーッとして」
「もしもし、あ、無事下山。了解。ともかく元気でよかったね。お疲れさま」