「待つ」

 暑い・・・ビアマウントにいこう。

 遅めの朝。五日市駅から市道山そして高尾山へと向かう。メンバーはKとMとS。
 エアリア範疇のコース。山をなめているわけではないがこのメンバーなら問題になるところはなかろう。それぞれのペースで適宜いこうと途中一・二ケ所ポイントでの顔合わせ以外は単独行の三パーティ!?。
 時々走り?!ながら夕暮れ近くちょうどいい時間に高尾山ビアマウント。

 「いやー混んでるねー」 そこはケーブルで上がってくる人の山。さすが雑誌「日経おとなのOFF」に掲載させるくらい営業に力入れているだけのことはある。整理券が配られ1時間待ちとのこと。待つのが嫌いなKは即「高尾の駅前だって飲み屋はある」。一気に下山。高尾駅前にしちゃ小洒落た(失礼)お店で乾杯。これがいいんだな(笑)

 そういや『イーブンな関係でいけることを目指して』なんてこと話したっけ、最初のころの技術委員会で。ところでロープ(ザイル)を使うようなルートでの複数チームでの場合ってどうなんだろう。たとえば自主計画で二人ユニットが二組。同じ計画の同一パーティだ。先行はガンガンいけるメンツ。後続も別に心配はない。多少場数が少ない程度。
 状況として、天候は順調、行動も時間的に切迫した状況ではない。では先行はガンガン終了点まで先にいってしまっていいのか。悩むところだ(悩まないか?)。 
 何事もなければいいけれど。何かあった場合は・・・などと考えるとチーム間はワン・ピッチ下降できる程度以上は離せなくなる。というかそう思ってしまう。

 『そんな負担なこと考えなきゃいけないこと自体イーブンな関係じゃないのでは』という意見もある。確かにそうではあるが、それがいつでもそうかというと、そうではない。

 ここに、
 『わらじの仲間』の月報記念で『沢登り技術メモ』というのかある。これはリーダー会員が作成した沢登りの基本技術やトラブル対処法・遭難対策などを編集した読本のようなものだ。基本的な遡行技術についての項目の最後に『パーティで遡行する場合、時々後続がついてくるかどうか確認する。後ろがリーダーといえども、どこでズッコケルかわからない』というのがある。

 沢と岩壁(岩稜)・オーダーはちがうにしても、
 イーブンな関係って相手を信頼してるから放っておくことだけじゃなく、ダメなときはダメと伝えることや、また相互で援助(交際じゃない)などが平易にできる関係と共に、さりげなくの配慮もイーブンな関係ではないかと思う。パーティとして来てしまった以上、終了までの展開を考えた行動でいかないと『なかなか上がってこないね』でずっと待っていても、実は後続はトラブっていて動けない。そんな時、そこまで何ピッチかの下降で戻るというのは実は大変な作業だし、そもそも状況もわからない。その手前で『未然に防げる対処があったかもしれない』なんて後から考えるよりは、少しめんどうくさくても途中で待って様子を見るとかね・・・

 『残雪期の鹿島槍ケ岳東尾根』でこんなことがあった。

 雪稜に続いて岩塔が現れる。ルートの核心部分だ。下から見えていた先行はかなりの人数。それぞれふたりがロープを組み、リードとセカンドで登っている。それはそれでいいのだが、人数が多いだけに僕らが基点についてもまだ残っていた。元気で若い班はガンガンいってしまったが、疲れも見える中高年班が悪戦苦闘。ランナーの取り方が少々悪く、おまけにセカンドも疲労困憊でその処理にパニックしている。ロープを引くこともできず、登ることも進まない。『このままじゃ日没間近かなのに、こっちが遭難しちゃうよ』と思いつつ、ついに待ちきれず追い越しをかける。あ、もちろんパニックしているチームのフォロー(講習?)も忘れずにですよ(笑)。

 先行集団のはやい班はすでにテントに入ってしまっていたが、僕らは追い抜いた勢いと月夜なので!?さらに足を延ばし、ピークを越えテント設営で一息。

 『先行さん班の組み立てが悪いよな、元気なのが先にいってしまい後続のフォローをしていかないで・・・』などといってみたが、善意に解釈すれば、後続は信頼されていたけれどたまたま不調だったのかも。
それでも何かある。そんなことを察知できなかった、状況をつかめていなかった。これはある意味、先にいった班と後の班がイーブンな関係ではなかったのかな・・・

 ま、先行にしても、いつもいつも気にしていたらリズムも崩れるし、『甘やかし過ぎだ』なんて。後続にしてもいつもいつも気遣われていると『小さな親切大きな(余計な)お世話じゃ』(笑)
そんなときは『ガンガンいってよ』とか『先にいっちゃうからね?』とか言えばいいんだよね。それがイーブンの始まりだから。

 そのあたり、タイミングを察知するのはなかなか大変なのかな・・・
 色々考えてしまうと・・・

 「ね、どうしたの。ボ〜ッとして。ビールグラス空いたままだよ。」
 「・・・あ、ほんとだ・・・考え事してた。めずらしく(笑)」
 「スミマセ〜ン。ギネスひとつお願いします。」