自主の記録
2005/9/23(金)〜25(日)
南アルプス/奥西河内
◆メンバー 田中良一(L)、阿出川忍、渡部吉実、宮下卓宏
◆記録 全員
(渡部吉実)
9月23日(金)東海フォレストの椹島を10時すぎに出発し、長い奥西河内沢経由赤石岳への旅は始まった。今週は残業続きで睡眠時間が足りず、二泊三日の荷物を背負って沢通しに歩くことがきつい。しかし今日距離を稼いでおかないと明日、あさってと非常にきつくなる。
今年は大雨や台風の上陸が少なくこの谷にしては水量が少ないのだろう、ずっと本日のビバーク地点までは「沢歩き」であった。途中取水堰堤がありその上は本来の水量を取り戻し巨岩の間を自由奔放に展開する流れだった。(しかしがぜん沢歩きの世界)午後3時ころ支流北沢合流付近でぽつぽつときて暗くなったので万が一の事態でも避難できる高台が左岸側にあったのでツェルトを張り釣りをさせていただいた。竿を出すとまもなく24cm級の天然物が来たので思わず「さすが奥西河内」と叫んでしまった。「これは入れ食いなのか」と思ってみたがあとが続かず結局この他1匹で納竿となってしまった。
晩飯を食べ梅酒で乾杯したがいまいち酔いが回らない。ずっと焚き火にあたり空を見上げると何と星がまたたいていた。台風はいったいどこに行ったのだろうか。天気が良いほうに外れてくれているようだ。明日は4時起床5時出発なので早々と寝た。
オキを頼りに焚き火を起こし雑炊を腹に入れ5時すぎに出発。今日も快晴のようだ。目の前に聳える稜線付近はガスがかかっているものの良さそうだ。本谷と上砂沢出合には先行パーティのテントが張ってあった。ここを本谷に入りしばらくすると大滝が人を寄せ付けないという威厳を保ち落下していた。見たところ80mくらいの落差があるのではないか。西丹沢の同角沢で見た60m滝よりひと回り高い。ここを田中さんを先頭とする我々4名は右の涸れ沢を詰め支尾根に取り付いた。講習で使う西上州・赤岩尾根のような獣道をすすむ。(赤岩尾根より踏み跡が少なくもっと急峻な道だった。)80mの高度差を埋めるべく支尾根を詰めたあと沢を乗越しまた別の支尾根を捉えて詰めたら滝の落ち口上流に出たようだ。沢への斜面はなだらかで苔むした斜面だった。
大滝上流の本沢は急におとなしくなり様相が一変した。源頭の斜面は穏やかですり鉢状だった。ハイマツとシャクナゲがうるさいので右のガレた斜面を登っていくと窪んだところに石を積み上げた四角い室があった。田中さんにきくと昔の荒川小屋の跡ではないかとのこと。このあとすぐに登山道に出た。しかし本日出発した北沢出合付近の標高が1660mで、目指す赤石山脈の盟主赤石岳は3120m。沢経由で約1500m登ることになる。なかなか足どりが重い。小雨もパラつくなか森林限界を越えた道を行く。途中バテバテだったが16時すぎに赤石岳避難小屋に到着。しんどかった。避難小屋はあと一週間で小屋を閉めるということで小屋の食べ物を使って別パーティの人たちがふんだんにふるまってくれた。精神的、肉体的に疲れていたのがとたんに吹っ飛んでしまった。
翌朝3時30分起床、4時30分出発で椹島発10時20分発の一番バスに乗ろうという考えだ。昨日撮らなかった赤石岳頂上で写真を撮ろうとしたがシャッターが下りなかった。急な道を下り、沢で南アルプス天然水を汲んだあとひたすら下る。(しかも沢靴で)
今日もバテバテになる。丁度丹波にあるサオラ峠の急坂が延々と5時間続いているという感じの道だった。しかし取り囲む森林は丹波とは違いカラマツなどの朝のすがすがしさをさらに引き立てる森だった。9時30分さわら島着で、予定通り朝一番のバスに乗り畑難第一ダムまで進み、忍号で入浴無料という「しらかば荘」という温泉に入る。ヌルヌルとする温泉で掛け流しのようだ。
入浴後はヤマメの塩焼き、油で炒めたむかご、凍った鹿刺しやら地の物で空腹を満たし運転を宮下君にお任せして帰路についた。
南アルプスは山が大きくてそこから流下する沢も当然規模が大きく初めて南の沢に行ったけれど苦しかったが生涯忘れられない山行であった。私が60才をすぎてもきっとこの旅の一部始終を覚えていて語れるであろう。その頃までこの昔の湯治場を思わせるような「しらかば荘」が健在であってほしいと思うのは私だけか。いつか赤石沢を攻めてまた来ようと思っている。
(阿出川忍)
奥西河内に関しての資料・遡行図が無い為、1/25000地図だけを頼りに遡行開始、交代で先頭を歩きました。ここで徒渉、ここは高巻き、自分の好きなように歩くのはとっても楽しい。
昨年の教訓で、軽量化に努めたせいか、足取りも軽やか〜。
大変だった所は1箇所、大滝の高巻きです。命がけみたいな所も何箇所かあり、1時間半緊張しっぱなしの高巻きが終わった時には、みんなぐったりお疲れモードでした。
夜には、渡部さんが釣ってきてくれた「岩魚」で乾杯!満天の星空の下、焚き火を囲んで暖まりました。
2日目は赤石避難小屋に泊まったのですが、小屋番さんがとても良い人でした。山塾では小屋に泊まることはあまりないと思いますが、たまには小屋に泊まって、山小屋のご主人・小屋番さんと飲んで、じっくり話してみるのもいいもんだな〜と思いました。
(宮下卓宏)
情報が少なくって、スケールが大きくって、やさしい沢で、魚影が濃くって、大高巻きがチョット大変な、最高な沢。
アクセスが悪くって、焚火前で熟睡して風邪ひいて、完全にエネルギー切れをおこしブッ倒れた、最悪の山行になってしまい、今回も大反省。やはり自主山行は大変勉強になることが多いと改めて実感。主宰、お休みお願いします。
山はハートで登りたい(田中良一)
今年は私が赤石岳の頂に初めて立ってから35年目だ。赤石岳に恋して、東面は赤石沢・北沢を遡った、西面は小渋川・本岳沢を遡った、南面は赤石沢・クズレ沢を遡った(当然本流も)、北面は岩崎さんと北壁を冬に擧った。唯一残ったのが奥西河内、望みは本科の自主山行で今年叶えられた。
頂きに立つのが登山であって、ルートを追い求めて山頂を踏まないのは遊びかスポーツの世界ではないかと私は思う。テクニックは必要だが十分な条件ではない。ハートがプラスされてすばらしい山の世界が広がってくると思う。
この度赤石岳を全方面から完登することが出来て、3人の良きメンバーに感謝しています。
私の好きな南アルプス、私を育ててくれた南アルプス。これからも南アルプスを熱いハートで登っていきたいと思っている。
【行程】
23日 入渓(10:15)〜北沢出合(16:00)
24日 北沢出合(5:15)〜上砂沢出合(6:15)〜大滝下(9:30)〜大滝上(11:00)〜大聖寺平(13:20)〜赤石岳(15:50)〜赤石避難小屋(15:53)
25日 赤石避難小屋(4:40)〜赤石岳(4:43)〜椹島(9:20)群馬県自然の森(8:10)〜田代湿原(9:05)〜武尊避難小屋(10:50)〜中ノ岳(12:15)〜山頂(13:05)〜避難小屋(14:55)〜駐車場(16:40)