自主の記録
2005/9/10(土)〜11(日)
宝川 ナルミズ沢
◆メンバー 山野美香(L)、田口浩昭、山野昭人
◆記録 山野美香
閃光とほぼ同時に天も地も割れんばかりの凄まじい音に包まれた。メンバーの姿は確認できる位置にいるものの、ヘルメットやレインウエアを痛いほどに叩く雹まじりの大粒の雨で目をあけていることができない。荒れ狂い乱舞する雷が遠のくまでの30分間、祈るしかすべがなかった。ダメかもしれない…ほんとうに、そう思った。
明るく開けた河原の先にはコバルトブルーの淵、太陽に照らされて眩しく輝くナメや小滝が続く。そして源頭部の草原でのビバーク&焚き火が今回のメインイベントだ。
ウツボギ沢出合にステキな親子のパーティ、既にテントを張り今日はのんびり過ごすらしい。魚止の滝にもう1パーティ、こちらはここでしばらく釣りをするようだ。この日ナルミズ沢を遡行するのは私達3人だけのようなので、ゆっくりと、静かに、そして時にはしゃぎながらこの美しい沢を満喫していた。
深い釜を避けて高巻いている途中ぬかるみに足を取られて大騒ぎしたり、次の釜ではなんとか濡れずにへつろうとズボンを腿の上までたくし上げ頑張った甲斐あってうまく渡れたり(約1名パンツまで濡らしていたけれど、足の長さの違いかなぁ…)。
眩しい空を見上げても、透き通る水を見ても、それぞれ思い思いに進む姿を眺めても楽しくて、下界にいてちょっと苦しかった数日間から開放されて少しずつ心が安らかになっていく。
この沢のハイライトである草原へと続く道へあと少しというところで雲行きが怪しくなり雷が遠くで聞こえ始めた。急いで水を汲んでとにかく沢から上がろうと笹薮の斜面を15mほど登った時のことだった。あっという間に冒頭の豪雨。瞬く間に細い沢筋はものすごい水量に膨らんで濁流となり、今まで遡行していた沢を埋め尽くした。
雷から身を隠すにも辺りは低い熊笹だけ。斜面を伝い流れる大量の雨水に身体ごと浸すようにうずくまり、熊笹を握りしめて冷えと恐怖に震えていた。
雷が遠のき雨が小降りになったのを見計らって急斜面を登り、安定した場所でやっと一息ついたが、安堵と不安の入り混じる気持ちは皆同じようで、あまり言葉が出てこない。
傾斜の緩やかなところまでさらに登り、熊笹の上にツェルトを張った。断続的に降り続く強い雨でツェルトの中も足元からジワッと水が上がってくる。交代でシートに溜まった水を逃がしながら乾いた衣類に着替えて簡単に食事を済ませ、シュラフカバーに包まった。するとまた閃光と雷。もういいかげん疲れてきたので、運は天に任せることにしてとにかく明日に備え寝ることにする。
翌朝も相変わらずの雨。昨日の雷雨、そして夜中も降り続いた雨でおそらく今日の下山ルートにある沢の徒渉は難しいと判断し、林道終点に止めた車の回収は大変になるが、白毛門を経由するルートに変更し出発する。
幕営地から1時間ほどでジャンクションピークに出た。ここからは一般登山道なので一安心だ。みんなの緊張もほぐれ、やっといつもの調子に戻ってきた。「下山したら温泉行こう」「宝川温泉は混浴なんだって」「よし!じゃぁみんなで一緒に入ろう!」ということに話はまとまり、朝日岳をめざす。
ちょうど朝日岳の湿原あたりで雨が止んで一ノ倉沢の雪渓まで見渡せたが、笠ケ岳の避難小屋に着くころにはまた本降りとなった。
時間切れで残念ながら混浴の温泉には入れなかったので、次回リベンジだ!?
【行程】
10日 宝川林道車止めゲート(8:30)〜林道終点(9:10)〜ウツボギ沢出合(11:00)〜大石沢出合(12:00)〜ナルミズ沢右俣・左俣分岐(14:30)〜幕営地(16:30)
11日 幕営地(6:30)〜ジャンクションピーク(7:30)〜朝日岳(7:50/8:00)〜笠ケ岳避難小屋(9:15/9:45)〜白毛門(10:30)〜土合橋(13:30)