自主の記録
2005/8/1(月)
八ヶ岳/稲子岳南壁 左ダイレクトルート
◆メンバー 金沢和則(L)、坂口理子
◆記録 坂口理子
……だってさァ。よくわかんなかったんだよ。
前夜、しらびそ小屋への登山口付近に駐車場に泊(例によって、寝坊する)。たらたらと出発して、小屋を過ぎ、中山尾根に向う登山道の途中から右へ踏み跡をたどる。前回はもう少し先から岩場の基部をトラバースするように巻いたが、今回は、岩場直下へ直登するアプローチをとる。ヤブ漕ぎを少々、ガレ場登りを少々で、南壁の中央付近に登りついた。
さて、荷物を置いて、楽しい岩場見学。去年登った左カンテルートから、中央フェースのあたりをぐるりと散策。が、手にした岩場のルート図と見比べてもイマイチよくわからない。でもまあ、これも人のはいらないアルパインルートの醍醐味か、とかなりムリヤリな納得をする。比較的しっかりとしたピンがあるルートを、今回の左ダイレクト(一応、稲子南壁の中では一番メジャー……らしい)の取り付きと睨み、登攀準備を開始した(余談:この時点で既に昼近く。出発時間は推して知るべし、である)。
さて、ともかく先が見えるうちに、ということで、とりあえず1ピッチ目は坂口がリード。ゆるめの凹角を行く。残置のピンが所々にあるが、手元も足元も信用できない。そろそろピッチを切ろうかなあ……と辺りを見回していたら、左足の体重をかけていた大きな石が、ユラリと動いた。えっ?と、咄嗟に右足に乗り換えたら、人の頭二つ分ほどのその石が、ずるうぅり、と動き出した……「ラクッ!!」……あとはもう、岩壁にぶつかって砕けて煙を出しながら、ものすごい音をたてて転がり堕ちていった。「……か、金沢さん、大丈夫でしたか?」おそるおそる下に向って声をかけると、「だいじょうぶだよー」と、のんきな声。ああ、よかった。金沢さん、すみませんでした。あとで聞いたら「なんとなくイヤな予感がして」(!)、セルフビレイを長めに伸ばしていたそうだ。何とも動物的なカンの良さである。その後もツルベで高度をかせぐ。技術的に少々いやらしいところもあるが、それよりも、浮石の多さ、落石の不安の方が大きい。ガバは抜けるし、スタンスはゆれるし、イヤ〜なクライミング汁がたっぷりと出た。さらに、上部岩壁に出たあたりでルートを失う。岩場の真ん中で「どこなんだよ、ここは!?」とルート図とにらめっこ。このあたりもアルパインらしいと言えば言えるが……。とにかく、上に登りゃー抜けるだろ、と、残置のピンを頼りにあたりをつけてまた数ピッチ登攀を続ける。ほどなくリードしていた金沢さんから「何だかよくわかんないけど、出たよー」との声。この言葉こそ、今回の山行を一言で言い表す名言だ。何だかわかんないまま終了点に達した我々は、山頂でコマクサの群生を荒らし、もとい、愛でつつ、ニュウをまわって稲子湯目指して下山した。
以上、いいかげんな記録ですみません。……だってさァ。よくわかんなかったんだよ。どこ登ったのか。
【行程】 登山口(8:00)〜南壁基部(10:30/12:00)〜稲子岳山頂(15:00/15:30)〜登山口(18:00)