講習山行の記録

2005/8/28(日)
八ヶ岳/稲子岳南壁〜ニュウ

◆メンバー 金沢和則(講師)、坂口理子、宮下卓宏、黒田記代、福島彰男、野中達也、松永己幸
◆記録    野中達也


 天気は前日より回復し、ときおり晴れ間が広がる。予定時刻の通り集合場所のみどり池入り口ゲート前から、みどり池に向かって出発する。小1時間も歩くと、登山道に朽ちた軌道が現れる。その昔は資源採取が盛んだったのだろうか。
 みどり池を過ぎると、少し視界が開けるところがある。そこから今回の舞台となる稲子岳が一瞬現れる。巨大な航空母艦のようにも見える。
 登山道をそれ、林の中を南壁の取り付きに向かう。辺りにはまだ木々ばかりなのに、ところどころ岩が不釣合いにすわっている。その木々もなくなる頃、先ほどの状況が理解できた。大岩がごろごろとしてかなりガレている。落石の巣窟といった風だ。その大岩をさらに取り付きを目指し登っていくが、かなりの大きさの岩でも不用意に体重を掛けると急に目を覚ましたかのようにグラリと揺れ動く。一手、一歩、気を張ったまま取り付きに着く。アプローチでこれほど気を使ったことは今までの山行では無い。講師よりくれぐれも落石に注意するようにとのアドバイスを受ける。
 ギアを身に着け、2・3・3の3パーティに分かれ左カンテルートを登攀開始する。我がパーティは3組目、1P目はパートナーのリードで何の問題も無くクリアする。2P目は私がリードさせてもらう。終了点に着き、後続のビレイをするため、確保器(ピウ)をセットするが一瞬上下の向きが解らなくなってしまう。そうなると更に焦り、確保器とロープの方向も不安になってくる。セットを3回4回と繰り返し、何とか正しい向きを確認する。
 更にまたまた私がリードの4P目はガレ(といっても私にはこの稲子はどこもそう感じるが)のトラバースという感じ。終了点までほとんどプロテクションを取るハーケンやボルトがない状況で、落石に神経を使いながらの登攀。今まで講習で経験したことの無い緊張感を味わう。
 5P目となる最終ピッチもリードさせてもらう。先輩方が(待ち飽きたかのように?)待つ終了点にたどり着く。支点が1箇所しかなく、ヒントをもらい潅木も使って支点を構築する。最後に講師が終了点に着き無事全員集合となる。
 時折吹く風が火照った肌を冷まし、緊張感から開放されつつも少し秋を感じさせる。小休止後、苔むした道を辿り最後の目的であるニュウに着く。講師からニュウの語源やその遷り変りなどを聞きながら北八ツの眺望を少し楽しみ下山する。
 今回の講習では、登攀の難易度はさほどではなかったが、落石などに対する気の使いようやマルチピッチのリードを初めてさせてもらい、たくさんの失敗からロープワークの重要性を痛感した。何よりもゲレンデとは違う面白さを、多分ほんの少しなのであろうが知ることができた。


【行程】  みどり池入り口ゲート前(6:00)〜南面取り付き(9:00)〜終了点(14:00)〜みどり池入り口ゲート前(16:30)