自主の記録

2005/7/31(日)
丹沢/モミソ沢〜ナガレの沢〜新茅ノ沢


◆メンバー 野中達也(L)、松永己幸
◆記録 野中達也


 昨夜は遠くで時折稲光がしていたが、今朝は薄日も差しまずまずの天気だ。
 今回の沢はモミソ沢を遡行し、ナガレの沢を下降、新茅ノ沢を遡行して尾根に出ず、そのまま下降するといった都合4本の沢トレーニングである。
 目的としては、行動時(遡行時)のロープの扱いをスムーズに行うこと、滝の登攀を含め沢を本番と捉え、許された時間の中でどう消化していくか等に重点を置いた。

 一本目のモミソ沢遡行地点に立つ。右側にある懸垂岩ですでに3名の男性のパーティがトップロープをまさにセットし終えたところだった。しかし何か様子が変だ。
 リードしていたクライマーが降りてくるのを見ると、顔や腕が見る見る膨れ上がってくる。終了点に蜂の巣があり、全身を刺されたとのこと。「ポイズンリムーバー」なるもので処置をしていた。不思議に思ったのは、セットしたトップロープを一体、次に誰が登るというのだろうか・・・。
 入渓してすぐ現れる滝をシャワーで登る。ものの本には「涸滝」となっていたはずだが。F2-11m滝をA0で登り終えると、セカンドの私をビレイしてくれていた松永さんからスリングやカラビナを使ったほうが良いと指摘を受ける。確かに、落ちなくて良かった。しかしながら見守っていてくれたとの安心感も同時に湧いた。その後もゴルジュを抜けチョックストーンを越え、この沢の核心であるF4-12m滝が現れる。この滝は最後の落ち口の部分がちょっとたっていていやらしいが、特に問題はなくクリアした。それからしばらくはゴーロを詰め、藪漕ぎもなく大倉尾根に出た。全体的にはこじんまりとしているが、変化があってウォーミングアップにはちょうど良い沢だと思った。
 一本取った後、大倉尾根を塔ノ岳方面へ歩く。堀山の家が現れるすぐ手前から尾根筋を外れ、ナガレの沢下降地点(源頭部)へと下った。そこには確かに水場があった。堀山の家の方が使っているのだろうか、そんなことを考える間もなく、下降を開始する。特筆するようなポイントは特にはなかったが、途中2、3度ザイルを出した。水無川本流に出る直前まで来た頃、大粒の雨がバラバラと落ちてきた。行程を半分残し、いや、今回の遡行のメインでもある新茅ノ沢を目にする前に天気が崩れては無念、などと考えている間に、幸運にも雨粒は消えてしまった。

 戸沢キャンプ場で水無川を渡り、戸沢林道を再び塑渓地点に向かって下って歩くこと十数分、ガードレールのある小さな橋が見えてきた。そのたもとには「新茅ノ沢」と丁寧に表示板が掲げられていた。近くの踏み跡をたどり、沢へ降りる。新茅橋をくぐり遡行開始する。すぐに小滝が目に飛び込んでくるが、辺りの樹木や岩の圧迫感からかなんとも重い空気が漂っているように感じられた。悪い胸騒ぎであってほしくないと、心を落ち着かせながら小滝をいくつかパスしていくと核心の滝、F5-12m大棚が現れる。傾斜は結構たっていて水量が多く、水勢もかなりある。流れの右側から松永さんがリードで登る。飛沫の近くでビレイしながら佇んでいると寒くなってきた。クライマーはさぞや冷たいのであろうなどと、私はもっとクールにビレイしていた。どうやら落ち口を乗り越す辺りが少し手強そうだ。私の番となり、ルートの中間辺りではまさに強力なシャワーを浴びて登ることになった。午前の沢と比べ水はかなり冷たく、鼓動が早まるのが良くわかる。おまけに眼鏡は水滴と曇りでほとんど用を足さない。ほんの瞬間、先ほどの遡行開始地点でのいやな感覚が襲ってきた。が、とにかく無心に、冷静になることを自分に言い聞かせた。何事もなくここもクリアし、F9を過ぎた倒木を遡行終了点とすることにした。一本取った後は、烏尾山を目指すのではなく、再度新茅ノ沢を下降した。F9からF6まではアンザイレンしたまま降りた。この沢最初の懸垂下降となる大棚で、先に下降した松永さんの様子が変だ。なかなか私に降りていい旨の合図がない。ザイルが引けなかったのだ。何度かザイルを煽って引けるようになり、私も下降することができた。この時気付いた、今まで確認をしていなかった・・・・。
 その後は順調に、手順通り懸垂を繰り返し、遡行時と同じく、F5からF1まではザイルを使用した。

 私にとっては今回の経験が2度目となる数少ない自主であるが、講習で講師や先輩方に教わりながらの安心感を逆に実感した。しかし、だからこそ自分の力の無さ、経験の浅さもよく理解できた。
 いろいろな意味で今回の自主山行は、私にとって山への出発点となる、充実した忘れがたいものであった。


【行程】  モミソ沢遡行開始(8:00)〜新茅ノ沢下降終了(16:00)