自主の記録

2005/7/30(土) 〜31(日)
南ア/北岳バットレス 第4尾根


◆メンバー 横川秀樹(L)、伊藤幸雄、山野昭人、山野美香
◆記録 山野美香


 出発前日にY氏から不吉なmailが届いた。「明日は午後から所により雷という予報がでています。アプローチも小休止1回ぐらいで…」この季節雷には充分注意が必要だが、それよりも気が重くなるのは小休止1回というヤツ、あ〜いやな よ・か・ん…。
 芦安駐車場に車を停めて広河原までタクシーで入りさっそく歩き始めるが、いつもよりも(私にとっては)はやいペースについて行けない。一本立てる頃には息も絶え絶え、そこから先は進むにつれて足が重くなり、流れる汗を拭うたびに立ち止まってしまう。先に行く米粒程に小さくなったY氏を見上げている私に「今なら引き返せるヨ…」と悪魔(天使?)のささやきが。素直に応じて引き返せばいいものを、どうにかこうにかC沢に着いてしまったがまだまだ先は長い。
 ハーネス・ヘルメットを装着してブッシュの踏み跡を進む。足場の脆いガレに変わってくるあたりで右へトラバースするが、なんとなく悪くて神経を使うところ。目指すbガリー大滝にはトラバース手前で抜かれた4人パーティが準備をしていたのでここで大休止、のんびりと支度を始めた。
 横川・伊藤組がスタートしようという時、先行パーティからの落石がY氏のザックに当たりヒヤリとした。山野・山野組も続いて大滝を2P登り、横断バンドをコンテで左に上に左にと進みCガリーへと降りて、歩きずらいガラ場を登ると赤ペンキで「4」と書かれているところに出る。さらに登ると左にスラブが現れた。少し濡れているところがあるが慎重に越え平坦になってから20mほどロープを引きずりながら進むと1P目取り付きに着いた。やっと取り付きか…いやはや、大きな山は大変だ。そっとため息をつくが、空模様が心配でそうのんびりもしていられない。
 1P目出だしのクラックは今日の核心その1。フォローで行くがどうもクラックは苦手だ。フットジャムで足が悲鳴をあげていた。リードの山野君に思わず「よく行った!」と拍手。
 その先やさしいピッチでは、登攀にビレイが追いつかずロープを繰り出すのに必死。つるべなのでいまフォローで登ってきたと思ったらそのままリードでと休む暇がなく息が上がる。そして核心その2の7P目、先行横川・伊藤組の登りを観察するも難しいのに変わりはない。ノッペリしたフェースに打たれたハーケンにかけたヌンチャクを横に引っ張りながら右側に上がりなんとか抜けた。
 マッチ箱のピークからの懸垂後フェースを直上し、次のピッチが核心その3。ここで雷が鳴り一人取り残された私は泣きそうになりながらビレイをしていたが、リードで行く山野君もリッジに上がるまでの数手が難しく必死だったようだ。
傾斜の緩くなったところでロープを解きながら、3つの核心みーんな山野君リードだったなぁ…と思ながら、この巡り合わせに感謝…あ、いえいえそんなことはありません。いずれにしてもお疲れ様でした。
 そこから稜線までは広がるお花畑に心癒されながら疲れた身体に鞭打ち進み、いよいよ初の北岳山頂へ。15時過ぎということもありひっそりとした山頂で新鮮な空気を思いっきり吸い込み、ゆっくりと達成感を味わったあと、賑わう肩の小屋へと降りて何はともあれ冷えたビールで乾杯!
 今回の山行はY氏のナビのお陰で取り付きまでスムーズに行くことができたことが成功の最大の要因だったと思う。また、長いアプローチでのバテや、ピッチ数が多くなるとだんだんロープの繰り出しや引き上げで腕が疲れてきてうまく流れない部分があったりと、課題は多く残された。
 今回初めて泊まった肩の小屋は大混雑だったが、食事もまあまあ、ご飯・味噌汁はお替り自由と良心的。小屋の外の広場で素晴らしい景色を眺めながらゆっくりと過ごすひとときはとても貴重な時間だった。
 翌朝は快晴の中、小太郎山まで足を伸ばした。山頂は360度大パノラマのステキな山だった。


【行程】 
30日 広河原の橋(6:00)〜二股(7:40)〜C沢出合(8:30/08:45)〜bガリー大滝取付(9:30/10:00)〜4尾根1P取付(12:00)〜終了(14:30)〜北岳山頂(15:15/15:25)〜肩の小屋(16:00)
31日 肩の小屋(6:30)〜小太郎山(7:30)〜分岐(8:50) 〜白根御池小屋(10:00/10:40)〜広河原(11:50)