自主の記録

2005/5/29(日)
谷川岳 一ノ倉沢烏帽子沢奥壁 中央カンテ


◆メンバー 横川秀樹(L)、山野美香(SL)
◆記録 横川秀樹


 駐車場を出る。闇の中、ヘッドランプに照らされた空間にキラキラと光るものがある。小雨?ちょっと違うようだ。でも、霧でもない。露が降りてきているのかなぁ・・・。いろいろ考えるが自然現象には詳しくないのでよく分からない。いずれにせよ、岩の状況が心配だ。

 一ノ倉出合までの道は乾いている。しかし、出合の駐車場を見るとしっかりと濡れていた。夜中に雨が降ったのは間違いないようだ。

 トイレや準備を済ませて雪渓へ。ちょうど薄明るくなってきたが、ガスであまり視界が利かずテールリッジ末端も見えない。岩が乾くまで少し待つことになりそうだな、などと考えているとようやく末端に到着。5本爪軽アイゼンを外して、3級−程度の岩場をフリーで越え、テールリッジを登っていく。

 きのうは最初からザイルを結んでコンテで行ったが、二日目なのでノーザイル。パートナーの様子も危なげない。足元もアプローチシューズのまま。

 中央稜基部から烏帽子沢奥壁側へ回り込むところは、ちょっとガレた感じでいやなところだ。もちろん、落ちるとひとたまりもない。60〜70mほど進むと、壁にペツルのボルトが一本打ってある。その左が2〜3畳ほどの平坦なテラスになっていて、中央カンテの取り付きである。

 相変わらずガスって岩も湿っぽいので予定通りしばらく待つことにする。そうこうするうちに、南稜へ向かうパーティがいくつかやってくるが、中には、南稜テラスが見えないためにとても苦労している集団がいたりした。のんびり他のパーティの様子を見ているのもなかなか面白い。

 7時。次に来た二人組は、凹状岩壁へ行くという。取り付きから2ピッチ目の終了点までは、中央カンテと同じなので、先に行ってもらう。そして、そのあとを追って我々もいよいよ出発・・・、しようと思ったらデジカメを落とした。カラン、コロンという乾いた音を立てて烏帽子スラブの急斜面を転がり落ちていく。あ〜、メモリーカード込みで6万円以上もした私のFinePix F810の寿命は一年も持たなかった。残念。

 気を取り直す暇もなく、1ピッチ目の出だしはトラバースから。かぶったところを、カラビナをつかんでA0で越える。既にフリーにこだわろうという気力は、カメラを落とした時点で失せていたのかもしれない??? そして凹状となったルンゼに入る。傾斜は強くないが、脆い岩が多く、つかんだホールドがそのままはがれてしまう。滑りやすい泥が付いている岩も多く気が抜けない。40mほど進んでピッチを切る。支点は新しくしっかりしていた。

 2ピッチ目も同じような泥と脆い岩の斜面。途中に2箇所、ビレイ点らしき古い残置ピトンがあるが先行パーティはさらにその先でピッチを切っている。ここは50m一杯に伸ばすはずなので、私もそこまで行こうとする・・・、が、どうもおかしい。こんなに直上していいのだろうか。よくみると、今いる地点より、ずっと左側にきれいな確保支点があるのを発見。おそらく、最初に見つけたビレイ点から左上していくのが正解だったようだ。といっても、いまさらトラバースはしにくいので、とりあえず上まで行くことにする。美香さんにも上がってきてもらって、そこから下り気味に左へ移動。この作業にかなりの時間を費やした。

 さて、ここからいよいよ中央カンテ3ピッチ目のスタートだ。しかし、左上するバンドはビッショリと濡れている。トポにも「濡れていることが多い」とか「濡れていると悪い」と書いてある。内心、さっさと下降するかなと思ったが、パートナーの手前、そういうそぶりは微塵も見せずトライしてみる。右から一段上がって、そこからバンドに乗り上がればよいのだが手がかりがない。乾いていれば、ヒザもフルに使ってのマントリングという手もありそうだが、見える範囲に残置ピトンもなさそうなので無理はしないことにする。バイルをドロドロの草付きに打ち込めば何とかなったかもしれないが、そこまでして登る気はなかった。

 続いてパートナーからのアドバイスにより、確保支点から真上のフェースを登って、左上バンドの途中に合流するというルートをトライ。しかし、これも今ひとつという感じで、結局下降することに決めた。

 ここからの下降は、斜めに降りる感じなので手間取ったが、1ピッチ降りた箇所(1P終了点)で、中央稜4P終了点から空中懸垂してくるパーティと合流。どこかで見た人だと思ったら、元山塾講師で3月の小同心クラックのときもありがたいアドバイスを頂いた広瀬ガイドであった。ということは・・・、さらに下降してくる人に、山塾同期で3月に退会された日浅さん、もう一人、山塾の先輩で日野さん、と知った顔が続く。

 ここからもう1ピッチ降りて、取り付きに戻り、中央稜基部に移動してひと休み。広瀬さんが若かりし頃、南稜フランケルートだったかの冬期単独初登を狙って、3年間続けて12月24日に一ノ倉に通い、最後は幽霊?に恐れおののいて退却したという面白い話を聞いて、下山。

 それにしても、中央カンテの1P、2P、そして登れなかったが濡れた3Pといい、どれもおよそ快適とは言いがたいクライミングで、先行パーティからの落石にヒヤリとさせられた場面もあった。

 次、再度トライするかどうかは、現段階では何とも言えない気分だ。


【行程】  ロープウェイ駅駐車場(3:00)〜一ノ倉沢出合(3:45/4:05)〜テールリッジ(4:30)〜取り付き(5:30)〜登攀開始(7:10)〜2P終了点(9:00)〜下降開始(9:15)〜中央稜基部(11:00/11:15)〜一ノ倉沢出合(12:15/12:25)〜駐車場(13:10)