自主の記録

2005/5/4(水)〜5/5(木)
槍ヶ岳 北鎌尾根


◆メンバー 金沢和則(L)、坂口理子、横川秀樹、山野美香
◆記録 山野美香


 この山行に参加するかしないか随分迷った。重荷を担いでの渡渉、トラバース、雪壁etc…エスケープルートもないことから、途中で何かしらの迷惑をかけることになったら大変だ。でも…こういう機会というのはタイミングや巡り合わせや縁といった、よくわからないけれどなにかしらのエネルギーがそこに集まって形になる…そんな気がして、行かないなんて選択肢はないとも思える。悩んだ挙句、軽量化の為にちょっとの投資をし、出発までに体力強化を図ることを心に決めて参加させて頂くことにした。

 夜行列車…初めての体験だったがこれには参った。ほとんど眠ることが出来ずに信濃大町駅に着き、タクシーに乗り換えて高瀬ダムへと向かう。時間が早いせいか巨大なロックフィル式ダムに人影はなく、ゆっくりと身支度を整えて出発。
 ひんやりする長くて暗いトンネルを過ぎると、そこにはエメラルド色の静かな水面が広がっていた。良く整備された道を約1時間、ここから登山道らしくなってくるがほぼ平坦な道なので重荷もそれほど気にならない。

 硫黄の香りが漂いはじめた頃、対岸に晴嵐荘が見えてきた。ここ湯俣温泉は厳冬期の北鎌尾根に逝った加藤文太郎が最後に待避所として目指したところだそうだ。その先の吊り橋を渡り、トラバース気味に時折フィックスロープを頼りにしながら進んで河原へと降りる。水俣川の水量は想像以上に多い。
 しばらく河原を行くとまた踏み跡に導かれるようにトラバース道へ入るが、頼りないワイヤーに不安定な足場ということもありロープを出して慎重に進むことにする。が、トップの横川さんが少し進んで戻ってきた。支点が朽ち果てて外れ、ワイヤーの末端が川の中へ落ちている。その先にも支点らしきものはなくとても進めるような状況ではないらしい。
 河原へと戻り渡渉できそうなところを探すが、轟々と凄まじい勢いで流れる水はとても私たちを受け入れてくれそうな気配がない。そうはいってもこちらだってここで引き下がるわけにもいかず、まず様子見がてら横川さんがサンダルに履き替えスボンを脱いで川の中へ入るが少し進んだだけで既に腿くらいまで深さがあり、その上水流が強く先まで進めそうにない。少しでも浅そうなところがないかと河原を行ったり来たりし、残るメンバーも短パンになって水の中へ足を踏み入れるが冷たい雪融け水の激流に阻まれ、3時間ほどの格闘の末結局断念することになった。

 初日で撤退を余儀なくされ、早々に河原に幕営。河原で一杯飲みながら明日からの予定について相談し、場所を移して白馬主稜にでも行こうかということに話はまとまった。
 翌朝高瀬ダムまで戻るとちょうどタイミング良く登山者を降ろしたタクシーに乗ることができ信濃大町駅へと向かった。駅で今後の天気予報を確認すると明日から雨とのこと。白馬主稜プランも断念し、私の5月連休は不完全燃焼のまま幕を閉じた。


【行程】
5月4日(水) 信濃大町(6:00)<タクシー>高瀬ダム(6:50/7:10)湯俣温泉吊り橋(10:00)〜水俣川河原(11:00)渡渉断念(15:00)〜河原にて幕営(16:00)
5月5日(木) 起床(3:30)〜出発(5:10)〜高瀬ダム(8:30)<タクシー>信濃大町駅(9:00)