講習山行の記録
2005/4/2(土)
谷川岳・湯檜曽川/雪山サバイバル
◆メンバー 金沢和則(講師)、工藤寿人、坂口理子、久野眞由美、福田洋子、伊藤幸雄、横川秀樹、山野昭人、山野美香、福島彰男、尾久一朗、松永己幸、ゲスト1名
◆記録 尾久一朗
初めて降りた土合の駅は、期待を裏切らなかった。谷川岳の歴史が染みついているようだった…。おっと、浸ってはいられない。私ともうひとり、本科生2名が遅刻だ。乗換駅で「あれっ?あるはずの電車がな〜い!」新潟県中越地震の影響で上越線が臨時ダイヤになっていたのだ…。土合駅の駐車場には、すでに講師や先輩方10名以上がずらり待っていた。「乗換駅で身支度をすませておいてよかった」とホッとする。
すぐに出発。参加要項によれば、1日目の目的地は一ノ倉沢出合だ。快晴。気温も高く、シャツ1枚でちょうどいい。右手には湯檜曽川が、すでに水面をのぞかせている。春らしい流れの音が心地いい。川幅は3〜5mほどだろうか、それでも「いつもの年よりかなり狭く、今シーズンは雪が多い」らしい。この暖かさと雪の多さからすると、雪崩の危険は少なくない。実際、山がせり出した対岸では、ところどころに雪崩の跡があった。いつもより周囲をきょろきょろしながら歩いた。
1時間足らずでマチガ沢出合。沢を渡り少し上った平坦地で、トレーニングと幕営をすることに。去年と同じ場所らしい。一ノ倉沢出合で岩壁を見上げながらトレーニングするのかと期待していたので、人知れずがっかりした。
まずは「ビーコンによる捜索」。装着時の動作チェックに続き、捜索時にどの位の距離からビーコンが反応するかの体験をした。目標(埋まっている人)からの距離で次のように反応した。(山塾からレンタルしたオルトボックスのデジタルビーコン、電池残量85%)
@40m〜 :反応なし
A30〜40m:ビーコンの音だけかすかに聞こえる。方向指示のLEDかすかに点灯
B〜30m :距離表示が出る。近づくにつれての表示の減り方もほぼ正確
C至近距離 :あと70センチ、あと30センチの違いもほぼ正確に識別
思った以上に「頼りになる」印象だった。しかし、いくらビーコンを使っても、実際に埋まっている人を探すのは簡単ではないこともわかった。雪に埋めたビーコンを探すトレーニング(4人がかり)では、目標物の付近までは数分で達していながら、掘り出すまでには13分もかかってしまった。結果的には自分たちの足の下(ここは掘れない!)にあったのだ!
時間がかかった原因は、ゾンデ棒で場所が特定できず、近辺を手当たり次第に掘ったためだ。人数的に余裕があったのだから、誰かひとりがビーコン係になって、常に探りを入れていた方がよかったように思う。見つからないと、段々「場所が違うのかも」と疑心暗鬼になってくるからだ。「ここだ、ここだ、間違いない」と声がかかっていれば、必死さも違ってくるはずだ。
また、「埋没体験」では、雪崩に埋まったらまず身動きがとれないこと、顔の前に空間があることの大切さ、埋まった人の声がなかなか聞こえないことなどを実感。
「搬出移動」では、埋没していた人は低体温症になっていると考えてむやみに動かさないこと、ツェルト、ザック、カラビナ(または雪玉)、スリングなどで担架をつくり搬送することなどを体験した。
4時間ほどでトレーニングを終え、テントを設営。横川さんや伊藤さんが屋外に作った雪の大テーブルをみんなで囲んだ。宴は日没後も続いた。風がなかったからとはいうものの、本当に暖かくなったものだ。
【行程】 土合駅(10:40)〜マチガ沢出合(11:30)〜幕営地(11:40)〜サバイバル訓練〜終了(15:30)