講習山行の記録

2005/4/30(土)〜5/2(月)
八甲田山/山スキー

◆メンバー 工藤寿人(講師)、沢口千鶴子、伊藤幸雄、伊藤栄子、福田洋子、久野眞由美、シニア1名、遠足1名
◆記録 久野眞由美(4月30日)、伊藤栄子(5月1日)、福田洋子 (5月2日)


[4月30日(土)天候・晴] 報告者:久野眞由美

≪宮様ルート≫
 三々五々、昼に酸ヶ湯温泉に集合。冬に、青森では市内でも1メートルを越える積雪があったおかげか、酸ヶ湯周辺でも昨年よりも積雪が豊富でした。集合日、天気も良く、じっとしているのは勿体無いと、早速、ひと滑りしに出発しました。
 ロープウェイ山頂駅から、ホンの一歩きで1326mのピークへ。地元ではこれを「田茂萢岳」と呼び慣わしているそうですが、地形図上では南東すぐ隣の1324mのピークを「田茂萢岳」としています。ちなみに地元では、これを「ニセ田茂」と呼ぶそうです。
初日の足慣らしという事もあり、優雅に(?)「宮様コース」と呼ばれるルートを滑ることとなりました。板を履き、まずは大きなコルに向けて無立木の斜面を軽快に滑り降り、広い雪原を横断して行きました。宮様コースに入ってからは、下り・登り織り交ぜながらの延々と長〜いトラバースが、毛無岱の広々とした台地まで続きました。この台地も延々とパタパタ歩き、歩き飽きてくる頃に、やっと短い急斜面のツリーラン。その後もゆるゆるとした歩き・滑り。流石「宮様コース」、このルートはせかせか滑るのではなく、ゆるゆると優雅に景色を楽しみながら辿るツアーコースなのでしょう。
 樹林の切れ間から、酸ヶ湯温泉の屋根が見えると、温泉の玄関・駐車場に開けた急斜面。下には観光客ギャラリーが・・・。ツアーコースの最後のハイライトはこの斜面のようです。冷やかし、冷やかされながら、一人一人ポンポンと初日最後の滑りに飛び込んで締めくくりました。明日以降、酸ヶ湯に戻るルートは全て、ここがその日の最後の見せ所(?)になるのだろうなあ〜。♪

【行程】 酸ヶ湯集合(13:00)〜酸ヶ湯(13:55)〜バス・ロープーウェイ〜ロープーウェイ山頂駅(4:15)〜「宮様コース」〜酸ヶ湯(16:12)



[5月1日(日)天候・晴] 報告者:伊藤 栄子

≪箒場岱ルート≫
 ロープウェイ山頂より目の前の赤倉岳目指し、眼下に広がる平坦地に向かい一気に滑り降りた。シール登行の始まりで重いスキーを引きずりながら進む。雪の無い所に近づくと斜度も上がり、苦手なトラバースをなるべく避け、クライミングサポートのお蔭で直登で頑張ったつもり。しかし、トップにピッタリついてピョンピョンとついていく遠足会員のパワーにはいつも驚き!
 意外と短時間で残雪終了点に着き、スキーをザックに取り付け雪解けの水溜り・ぬかるみを行くが靴もウェアも泥だらけ。けれど、童心に戻りグチャグチャと歩けるのも楽しく、山頂に到り東面まで降りた。
 暖かな日差しの中、遠足会員様より新茶のもてなしを受けランチタイム。360度どこでも自分の好きな所を滑ってイイよと言わんばかりの斜面が広がり、誰でもワクワクすると思う。20°弱?の斜面下の木立に向かい、順次スタートし柔らかい雪と程よい斜度に「楽しい!」の声が飛ぶ。
 次に待っていたのは辛い斜滑降でのトラバースで、トップが飛ぶように滑っていき姿が見えなくなり、続いて追っていくと回り込んでいて更に斜滑降継続・・・休憩したいのだが歩行は嫌だと思いとにかく進む。山スキーならではの面白さ?辛さ?かな・・・。辿り着いた時にはメンバー達も太ももをパンパンにした一場面で思わず座り込んだ。進行方向の確認をするとルート表示板が現れだし、ブナ林に入り休憩。樹林間が広く、緩やかな最後の斜面と空を仰ぎ見、芽吹きを見ながらバス停に向かった。

【行程】 ロープウェイ山頂駅(9:40)〜シール着け(10:00)〜赤倉岳(11:40)〜ブナ林(12:20)〜バス停(13:00)

≪中央ルート≫
 箒場岱コーススタート地点より90度くらい南寄りに滑り出て、沢に入り込まないよう流れるように毛無岱に向かう。グランドのように広い所で講師からのココアサービスを受け、マッタリとした休憩で天気に恵まれた春スキーの楽しさを感じる。酸ヶ湯に向かうシュプールに沿い、各自の好きなように滑り、コース最後の湯坂に到着。気を引き締め、それぞれの技を駆使し一気に滑り降り、山行を終了した。
 山スキーを始めた方々、八甲田のゆったりしたスキーも素敵です!

【行程】 ロープウェイ−山頂(14:30)〜1120m地点(15:00)〜酸ヶ湯(16:00)



[5月2日(日)天候・朝方まで小雨のち晴]報告者:福田 洋子

≪銅像ルート≫
 心配していた夜半の雨も山頂駅ではややガスがかかる程度となり早速1326m地点に移動。左手のだだっ広い尾根から前嶽へとコースを確認して滑り出る。いつもボーゲン一辺倒の私とSさんとTさんを見かねていたのか前の夜から指導意欲がむくむくと沸いてきたI氏がターンの実技指導を個別チェックしてくれる。ゆるゆるの緩斜面では心掛けていても斜度が増すとすぐにボーゲンに逆戻り。これは何度も何度も繰り返し身体に刻み込まなければいけないらしい。教えを聞くとやはり板に乗っている歴史と経験が違う。
 尾根から沢を一つ越えて前嶽の鞍部に着く、今度は前にも増して広い斜面、その先にブナの林が目一杯手を広げて待っている。工藤さんが「雨の後は雪が適度に湿り気を含んで滑りやすい」と云っていたが納得。今までのシュプールの跡とかも板に引っかからず気にならない。まるで風の中を泳ぐようにすべり適度な間隔のブナ林に入ると梢から可愛らしいさえずりが聞こえてきた。スズメよりかなり小さな小鳥がブナの新しい芽をついばんでいるようだ。その場があまりに気持ち良すぎてしばし休憩してTさんよりダケカンバ・ブナ・白樺の植生について教わる(Tさんごめんなさい、家に着いたら忘れました)。
 その後は樹林の気持ちの良い斜面をそれぞれが堪能していたらいきなり銅像茶屋に到着。ちゃんと止まらないと2mの雪の壁から車道に落ちる所でした。

【行程】 ロープウェイ山頂駅(9:30)〜銅像茶屋(10:35)

≪大岳環状ルート≫
 1本目の銅像ルート終了からいいタイミングでバスに乗れたので午前中に又ロープウェイ山頂駅に戻ってこれた。
 今回の八甲田山スキー最後のコースは大岳まで行って酸ケ湯温泉に戻るルートとなる。昨日の箒場岱ルートのように赤倉岳経由の尾根状を行くのかと思っていたら工藤さんが地元のガイドにリサーチをして少ない登りで大岳に行けるコースを聞いてきたので先ずは皆で確認する。
 1日目に入った宮様ルートの沢沿いを一滑り。左から張り出す一つ目の尾根を巻いてから現在地の確認。二つ目の尾根から登る事になり各自シールを付ける。昨日使ったシールは一晩部屋で乾かしたがマダ湿っている。どうもこのシール乾きが悪いようだ。前にKさんから「シールにもスキー用のワックスを塗るといいよ」と云われていたが次回は絶対やっておこうと心に刻む。水気を吸って余計に重く感じる所為なのか、体力が無いからか、まだまだ板に安定して乗れていないからなのか前の人との間が1度引き離されるとなかなか縮まらない。
 井戸岳から派生する尾根上にあがり、ここから井戸岳と大岳のコル目指し黙々と登る。上から吹き降ろす風が段々強くなり斜度がなくなると大岳の避難小屋がみえた。この辺りの積雪は避難小屋の1階部分をまだ十分埋めるほどあるが、小屋の周囲は管理の為か掘り下げられている。風を避けてしばし休憩の後、希望者のみ大岳を往復。今までの4本のコースと違いここまで来る人は少ないようで今ここで大岳を行くのは私達だけだ。それぞれのペースで好きなルートを取り30分程で山頂に到着。風が強く土が剥き出しになっている、南面を覗き見ても這松だらけで柵には今朝方まで降っていた雨が海老の尻尾を作っていた。
 山頂からの出だしは30度弱の斜度かと思うが、とにかく広いし誰もいないので私はミットも無かろうが何だろうが転ばなければ良しとするボーゲン滑りで鞍部まで行った。こういう斜面を滑るI夫妻は実に楽しそう。もちろん工藤さんもかなりカッコ良く滑っていたがギャラリーは私達だけでした。
 鞍部で待つ2人と合流しマーカーに沿って大岳環状ルートに入るが古くから有る標示板と竹ざおの指導標と微妙にルート取りが違っている。共に附けられた時の積雪量によるものだそうでその時に最適なルートをマークするからだろう。込み合った樹林の間をキックターンでしのぎ大岳東面にトラバース大きな斜面を一滑り。下り過ぎたかと思ったが毛無岱を右下に見て左の支尾根の壁のような雪面をトラバースぎみに取り付き階段登降で乗っ越すと「オオッー!!」一斉に歓声が。今度は今までの中で一番の大斜面。ガスっていたらさぞかし大変だろうがこの最高のお天気に大感謝。竹ざおが樹林に混じる所まで好きな所を思い思いのルートで楽しみました。
 今シーズン転びに転んで足をパンパンに何度もさせて、新雪・深雪・湿雪と毎回替わる状況の中で、又そのコース取りでと苦労して自分が上達しているのか否かとても不安に思っていました。でも、この3日間ほとんど転んでいないのです。振りかえって「あそこ滑ったよね、あっちも滑ったよね」と滑りを始めて堪能した八甲田山、夏に歩いた時も良かったけど春の山スキーも格別でした。

【行程】 ロープウェイ山頂駅(11:35)〜1250m付近宮様ルートを分ける(11:55/12:10)〜大岳避難小屋(13:25/13:35)〜大岳山頂(14:05)〜酸ケ湯(14:40)


【付録】
[シールについて考えた]
 今シーズン3種類のシールor板を経験しました。と言っても山スキー自体、今シーズン始めた私の言う事ですからあんまり適切ではないかもしれませんがシールについてちょっと考えました。
 靴や板・ビンディングを選ぶ時は誰しも真剣ですよね。なんといっても高価。買い直しなんてそう簡単に出来ないじゃないですか。靴は足型があっているかとか、板は深雪のときの浮力もあってクラストした斜面でもOKのオールマイティでおまけに引きずって歩く時軽くてなお且つ初心者の私でもターンがしやすい物をとか散々考えて予算にあった物を選びました。なのに「シールはどうします?」とお店の人に聞かれた時に「一番安いので」と答えてしまいました。そうなんです、ついついオマケの様に考えてしまったのですが、いざ使い始めて(あれ!なんか違う、こんなに重いの?)と思ったんです。
 このおニューの板とシールを使う前に友達から借りてスキー登高した時とずいぶんな違和感がありました。そして御嶽で使ったフリーベンチャーのシールと手触り・吸湿・速乾性と格段の差が有る事に気がついたのです。
 調べてみたらシールの素材には大まかに三種類、まずは『アザラシの毛皮』昔はみんなこれだったそうですが今は余り見かけませんね。とある登山用品店(S山荘)で出しているオリジナルトレッキングスキーではシールが『アザラシの毛皮』か『モヘア』で選べるそうです。次に『化繊』最近ではこれがもっとも一般的。そして『モヘア』と呼ばれるウールで出来ているらしい物、フリーベンチャーに付属してきたのはこれらしい。肌触りとっても滑らか、生地でいうなら別珍ですね。片方向に向いた毛足が逆毛でザリザリこれがすべり止めになり湿った雪でも水分を程よくはじいて足送りはとっても軽やか、乾きも格段に早いんです。それに比べて『化繊』の安物(と言っても約一万円するんですが)は足捌きが重い重い、友達から借りた物も『化繊』だったと思うのですが多分値段と質が違うのでしょう。私のは水分たっぷり含んで乾かないし、ちょっとした下降の時なんか下向いてもピタッと止まったまま動かない。毛足の寝方が甘いので触った感じが既にゾワゾワってしています。教わった対処方はワックスを塗る、お店ではシール専用の撥水スプレーなる物も出まわっております。でも、それじゃ何の為に安いのにしたのって思いませんか?
 厳冬期や春、新雪やクラストしている場合などの毛足の長さや硬さそれぞれに適したシールの薀蓄もネットで詳しく報告しているページがありました。来期こそ山スキーを始めるぞ、どんな板にしようかなビンディングはどれが良いかな、なんて考えているそこの人。くれぐれも「付属品だろ」なんて言ってシールを軽く見てはいけません。素材やカッティングにも色々あるんです。山の用具は奥が深い。予算の都合もありますでしょうが、よーく考えて選んでみてください。ま、それしか知らなければ「こんなモンか」で終わりますけどね。(FUKU)