個人山行の記録

2005/2/11(祝)〜13日)
大武川 一ノ沢 大滝


◆メンバー 新保司(昴)、青木義隆(神田、小田原)、H
◆記録 H


 この冬は新保さんのアイスマスタースクールという6日間アイス講習を受けることにした。今回は、そのうち後半の3日間となり、3連休を使って大武川一ノ沢大滝という170mのスケールを持つ滝を登ることにする。

(前半の3日間は、八ケ岳で、初日は鉱泉アイスキャンディ。二日目はジョウゴ沢で右俣大滝、乙女の滝、アイスキャンディ。3日目は大同心大滝を登るつもりが、信じられないくらい下手なパーティーが取り付いていたため登れず、ジョウゴ沢右俣大滝)

 同行者は神田山の会と小田原山岳会に所属する青木さん。新保さんとは初めての顔合わせのようだが、新保さんは最近労山系山岳会に指導をすることが多いらしく、そこからの繋がりで青木さんが参加することになった。(前回、八ケ岳で一緒だったチーム84の広岡さんは風邪のためリタイア)

 さて、アプローチは、前夜、中央道須玉インターから15分ほどの日野春駅(JR中央本線)へ行き、車で寝る。

 翌朝、コンビニやガソリンスタンドなどに寄り、大武川の人面橋手前まで移動。車を停められる広いスペースがあったが、ダンプの運ちゃんから、ここに停めると手前のゲートに鍵をかけられて出られなくなるよと言われ、ザックをデポしてから、車を置きに戻る。とは言っても、ゲートまでは500mほどだったので、それほど大きなロスにはならなかった。(ゲートそばには、狭い駐車スペースがありギリギリ2台停められた)

 人面橋を9時出発。林道を行くと10分ほどで一ノ沢橋。その手前から一ノ沢に入っていく。最初は堰堤が続き、その数4つ。一つ目は左から歩きで越え、二つ目は右、三つ目も右、最後の4つ目も右だが、この最後の堰堤が一番急で古いワイヤーがかかっている。先頭の新保さんが1mほど登ったところでワイヤーをつかむと、何とワイヤーが下部で切れて新保さんは転がり落ちてしまう。幸い怪我はないようだ。気を取り直して、慎重に登りクリア。大きなザックを背負っているので私は相当苦労した。
 
 そうこうして、二俣までは4時間ほどかかる。雪が結構積もっていてもぐるところもあったり、固くしまっているところもあったりとやや歩きにくい。滝も巻いたりとかで時間を食う。

 ようやく、「下の大滝」と思える滝が現れたが、あまり凍っていない。左が辛うじて凍っているので、そこを慎重に登っていく。ようやく登ったら、その先に、本当の「下の大滝」が現れた。ほぼ全面凍っているが、薄いところもあったり穴が開いていたりと、やや不安な状態。ここは左の雪がついたルンゼから登るほうが早そうなので、そうすることにした。上部だけ氷に移り、落ち口を抜けたところの平坦地で幕営とする。17時半ごろ終了。

●二日目
 6時起床。8時前に出発。30分ほどで大滝が姿を現す。大きい。高さもすごい。上部はほぼ垂直に見える。
 取り付き付近に大きな岩が転がっていて、そこで登攀準備。行動食だけをポケットに入れてザックをデポし登り始める。すべて新保さんのリード。50mシングルで、2番手は私。そのあとさらに50mロープで三番手は青木さんが登るという順番にする。

 1ピッチ目は左から登り、右上のテラスを目指す。傾斜はこの滝の中では、一番緩い箇所だ。「アイスクライミング(白山書房)」には倒木でピッチを切ると書いてあるが、今は倒木はなく、一気にザイルを伸ばし大きく右へ10mほどトラバース。トータル50mでちょっと足りないくらいだ。ボルトも見当たらず、ぼろい木の根っこで支点を構築。

 2ピッチ目。ガイドブックなどでは3ピッチ目となる箇所。核心部であり、上のほうは80度から場所によっては垂直に見える。新保さんが慎重にリード。氷が固く、しっかり打ち込むにはなかなか大変のようで3回、4回とバイルを振っている。傾斜が一団緩くなった箇所でピッチを切るかと思ったが、さらに上がる。2番手の私は同時登攀となる。上から新保さんが落とす氷が振ってきて、コワい。数メートル上がったところで、ロープが緩みだし、支点を作っているということがわかる。しばらくじっと耐えて、ようやくザイルが引かれる。登り出す。普通にトップロープで登るだけなら、まぁ、このぐらいなら問題なく登れるという感じだが、距離が長いのと、スクリューを抜いていくのがとにかく大変だ。(スクリューは、私が半分、青木さんが残り半分を抜いていった) 途中は、少し氷が柔らかいところがあり、水が流れていた。後で新保さんに聞くと、途中、スクリューで支点を作るつもりだったが、水氷だったのでザイルを伸ばすことにしたらしい。支点は潅木で取れる。
 ここまで来ると、上は傾斜が緩く、滝の落ち口を残すのみだ。どうやら、ガイドブックにある3〜4ピッチ目を一気に登ったようだ。それを信じると、90mの長さということになるがそれはない。せいぜい出だしのトラバース部分を入れても70mというところか。青木さんを待ち、精神的には、ほぼ終了した楽な気分となる。

 ラストの3ピッチ目。落ち口は氷がなく、雪を踏み抜きアワや水流に落ちそうになる。ここはかなりビビッタ。こういうところが一番恐ろしい。対処の仕方がよくわからない。まだまだ経験が不足しているようだ。(新保さんによれば、ピッケルで差しながら固さを確認するのが一つの方法だとのこと)
 落ち口を抜けて、右へ行くと潅木があり、そこで終了。13時40分。

 下降。14時開始。左岸側へ少し登り、小高い丘(小ピーク?)状のところから、ブッシュ地帯を懸垂。ダブルロープで、1回目は太い木から。2回目もしっかりした木から。3回目もしっかりした木から。これでテラス(1ピッチ目終了点の横)に出る。最後、ここから左のルンゼ方向へ懸垂して、都合4回、ダブルロープの懸垂で16時20分に終了。捨て縄を数本使い、捨てビナも一個使った。回収でトラぶらないようにするため慎重を期してとのことだ。

●最終日
 6時半に起床し、8時半に出発。下の大滝は右岸より懸垂。その先も、懸垂や巻き道などを使って下降していく。何度か、迷いそうなところもあったが、時間的に余裕があるのであまり不安はなかった。そして、ゲートに13時半ごろ到着。3日間の長い山行が終わった。


【行程】
2/11金 人面橋(9:00)〜「下の大滝」上(17:20)
2/12土 テン場(7:55)〜大滝下(8:35)〜登攀開始(9:15)〜登攀終了(13:40)〜下降開始(14:00)〜下降終了(16:20)〜テン場(17:00)
2/13日 テン場(8:30)〜ゲート(13:30)