講習山行の記録

2005/2/26(土)〜2/27(日)
八ヶ岳・西岳〜編笠山・ラッセル訓練

◆メンバー 金沢和則(講師)、久野眞由美、山野昭人、山野美香、黒田記代、松永己幸、野中達也、尾久一朗、神森揮要子
◆記録 野中達也


2月26日(土)

 ところどころに浮かぶ雲はあるものの天気は晴れ、風は殆どない。
 今回の計画目標は、西岳を踏み、編笠山まで、さらに総合的に恵まれれば権現岳まで(!)といった、ボリュームたっぷりの講習山行である。
 船山十字路にてタクシーを降り、身支度を整える。ここでビーコンの装着の仕方、発信、受信の確認方法などを教えてもらう。異常ないことを確かめ、まずは旭小屋を目指し出発だ。
 立場川筋を歩き、1時間ほど経ったところでワカンを装着する。それまではワカンの前後左右さえ判断つかなかったが、一度教われば結構単純なものだと変に感心する。暫くして旭小屋を過ぎるが、ここから先はトレースがまったくない。約10分ずつで先頭を交代しながら、時には落とし穴にはまりながら堰堤下へ到着。
 「この先行けるの?」と内心思うが、ここでアイゼンに履き替え、堰堤脇の崖(60〜70度?)を登る。Kさんが枯れ枝を掴み、それがすっぽ抜けて滑落しかかるが事なきを得る。木の枝や幹も慎重に判断して掴まないと危険だと実感する。
 しばらくは明瞭でない尾根を進む。このあたりの雪の深さはほぼ膝上である。さらに交代しながらラッセルを続けるが時間は午後4時半をまわってしまう。この時点での標高は約2千メートル、西岳までの標高差にしてまだ4百メートルある。メンバーの善戦空しく今日は時間切れとなり、尾根筋のなだらかな樹林中に今夜を過ごすためのテントを設営し、明日の戦闘に備える事とする。


2月27日(日)

 今日も快晴で無風状態、絶好のラッセル日和(?!)となる。ここまでの行程として当初の予定からはかなり遅れてしまっているものの、とにかく、まずは西岳を目標として行動を開始する。
 積雪は膝上から股下までとなり、斜度も次第に増してきて、所によっては頭の高さの雪を手でかき分け、膝で崩し、脚で踏場を作り、僅か半歩前進・・・したかと思うと一歩後退・・・という場面もしばしばであった。しかし気がつくと空が開け、振り返れば遠く南アルプスの雄大な山々の連なりが望める。それから20〜30分、西岳山頂を踏む。阿弥陀岳や赤岳、権現岳を目前にし、遠く富士山が霞の中からすくっと浮かぶ。そして手に取れるかのように編笠山・・・しかし何の後悔もなかった。むしろ達成感で心は満たされていた。メンバーの皆はどうだろうか。心残りではあるが僅かな休憩を終え、ワカンをアイゼンに換えて南西斜面を下る。こちらのルートはトレースもばっちりで、少しも迷うことなく歩くことができる。さっきまでの苦労(?)がまるで嘘のようにぐんぐんと高度を下げ、富士見高原スキー場に出る。そこでは親子連れがのんびりとスキーを楽しんでいる。
 辺りには少しだけ春の匂いがした。

【今回の講習で特に勉強になったこと】
※ ワカンを装着しての歩行の仕方は、そのときの雪質、深さ、斜度等いろいろな条件により同じではないことがわかった。
※ 下りでのアイゼンを装着しての歩行は、アイゼンを装着しないほうが疲労が少なく、また、危険性も少ない場合があると感じた。
※ 冬山では、天候、雪質、体力(体調)、その他さまざまな条件によりその行動が影響を受けるため、都度の判断が必要になり、当初の計画とは大幅に異なることがあるが、それも醍醐味のひとつである。(→金沢講  師の受け売り)
※ 自分独りの力には限界がある、チームワークの重要性を実感した。


【行程】
2月26日 船山十字路(10:30)〜旭小屋(11:40)〜立場川堰堤(13:30)〜西尾根標高2千メートル地点テント場(16:30)
2月27日 テント場(6:40)〜西岳山頂(11:10)〜富士見高原スキー場(13:10)