自主の記録
2003年11月24日(祝)
二子山西岳・中央稜
◆メンバー 横川秀樹(L)・伊藤幸雄(SL)
◆記録 横川秀樹
二子山の頂上付近はガスに覆われている。林道を進み高度を上げるにつれて、車の窓ガラスにも水滴がついてきた。雨か、それとも、霧のせいか・・・。
「降ってきたら、このまま日和田でも行きますか?」ちょっと、ホッとしつつ助手席の伊藤さんに話しかける。
「イヤぁ、おととい日和田でも一人死んでいるんだよね。知っている人だけにショックだよ」と、思いがけない返事にビックリ。伊藤さんはきのう日和田へ行ってそのことを聞いたらしい。
なんだか朝から嫌な予感がする。きのうインターネットで見た二子山西岳のそそり立つ怪異な容貌に圧倒され、最初からプレッシャーに負けているようだ。
が、とりあえず、林道の駐車スペースまで車を走らせる。その途中には、何組かのフリークライマー達がテントを張ってたむろしていた。
8時半頃、股峠まで5分という登山口の駐車スペースに到着。とりあえず準備。空中に浮かぶ水滴がハッキリと見える。この分だと、岩場もしっとりと濡れているかもという気がするが、偵察も兼ねて、中央稜の取り付きまでは行ってみることにした。
股峠から坂本方面に下り、祠エリア(フリーの岩場)を過ぎて踏み跡が二つに分かれる。壁沿いの方へ行けば取り付きに着くはずだと思ってそちらへ行くと、どんどん急傾斜になっていき、気が付いた頃には、藪だらけの岸壁の中という結構な危険地帯にはまり込んでしまっていた。落ちるとそれなりの怪我はまぬがれないという状況の中、ザックをおろし、ハーネスを着け、40mの懸垂で一旦下まで降りる。そこから、踏み跡を100mほど辿った所が目当ての中央稜取り付きで、先行のパーティーがこれから取り付こうとしているところだった。
我々は、と言えば、もうすでにかなりのアップをした状態になってテンションも上がっていたので、「登るしかない!」みたいな感じになっていた。
最初のピッチは私がトップで行くことにして、後はつるべ式で登ることを確認。まず1ピッチ目、見た目には簡単そうに見えたが、数メートル登ったところでフレークを右に移動する箇所が悪い。おっかなびっくり、なんとか乗り切って終了点へ。
2P目は伊藤さんがリード。オリジナルのライン取りは凹角のクラックを行くのだが、かなり手ごわく左のフェースへ一旦逃げて(ここも厳しい)から上へ抜ける。
核心と言われる3P目は巨大なピナクルの右側クラックを登る。最後の抜け口はかぶり気味となっていて、そこが難しい。しかし、なんと上のハーケンからお助け紐が垂れているではないか。それを遠慮なく使わせてもらって(さらに、フットホールドにRCCボルトも使った!)一応クリアー。トップは落ちないことが大事なのだ。細かいことにこだわってはいられない、と一人で納得。実際には納得のいかないクライミングだったけど・・・。
3P目が終わると大テラスに出るので、小休止。先行パーティーのクライミングを観察しつつ、ザックからお茶を取り出し乾いたノドを潤す。
4P以降は特に問題となる箇所はなかった。プロテクションのあまり取れないピッチもあったが、そういうところは概して易しい。
7P目の草付きを登ると稜線に出て、二人ガッチリと握手。そこから西岳頂上方面に向かうとしっかりとした道標があって股峠方面へ下る。
登攀開始は10時半。登攀終了は14時。駐車場到着は14時半すぎ。装備は二人で、ヌンチャク18本(60cmスリングで作った手製ヌンチャクを含む)。キャメロット2セット。アブミ1台。その他、スリング、カラビナ類をいくつか。実際には、アブミは使用しなかったが、あると心理的には安心だった。キャメロット(エイリアン含む)は小さいサイズから大きいサイズまで要所要所で活躍してくれた。なくても登れるとは思うが、万一落ちたときのことを考えるとあるに越したことはない。もう一度、チャレンジしてみたいルートだ。