講習山行の記録
9/23(祝)
谷川岳 一ノ倉沢烏帽子沢奥壁・凹状岩壁
◆メンバー 新保司(講師)、伊藤幸雄、横川秀樹
◆記録 横川秀樹
辺りは暗闇に包まれていた。9月23日、午後8時、聞こえるのはゴーッという沢の音だけ。ヘッドランプで足元を照らす。今日中に帰れるのか、それともビバークか・・・不安な思いに口数も少なくなる。懸垂下降の支点は・・・、見つかった。これで何とか降りられる。一ノ倉出合の駐車場にようやく戻ってきた。出発してから15時間。「やった!帰ってきたぜ!」大声で叫ぶ。3人でガッチリと握手。体中の力が抜けていく。思えば長い一日だった・・・。
9月22日(月)に予定されていた一ノ倉の講習は、台風の影響で翌日に順延となった。私と伊藤さんは、その日の夜9時、新保講師の待つ土合駅へ集合。明日の登攀に備え、ギアのチェックを受ける。新保講師が不要と判断したものが、どんどん装備から外されていく。そして、持っていくガチャをギアラックに装着。明朝すぐに出発できる手はずを整え、一ノ倉出合の駐車場へと向かう。
当日。朝5時起床。周りは他のパーティーやアマチュアカメラマン達が、もう準備に入っている。我々はストレッチングをして5時半に出発。この時期、テールリッジまでのアプローチに雪渓は残っていない。アプローチには、踏み後がしっかりあったり、なかったり。ところどころ危ないところもあり、慎重に通過する。最後は、新保講師が残置用に持ってきた50mロープを張り、それを使ってテールリッジ末端へ懸垂でおりていく。
テールリッジはV級前後のゆるい傾斜の岩場。フラットソールのクライミングシューズに履き替え、ロープを出し、コンティニュアスとスタカットを使い分けて登っていくが、最初の取り付きでルンゼ状の部分をまたぐのがイヤらしい。(他のパーティーはアプローチシューズのまま、ロープは出さずに登っていた)
8時半に衝立岩中央稜の基部に到着。ここで休憩をとっていよいよ今日のルート、凹状岩壁の取り付きに着く。凹状岩壁は、ルートグレートでW級下(またはV級上)。南稜や中央稜よりも少しグレードが高いらしい。登るシステムは、新保さんがダブルロープでリードし、私と伊藤さんが後に続くというやり方だ。
1ピッチ目はいきなりトラバースから始まり、緊張感が否応なく高まる。2ピッチ目、3ピッチ目と進んでいくが、残置支点はそれほど多くないようだ。クライミングの難易度としては、それほど高くはないが、ここをリードするとなると相当なプレッシャーだろう。岩がもろいせいで、なお一層いやらしさを感じる。新保講師は一手ごとにホールドとなる岩を叩いて、大丈夫かどうか確認しながら登っていく。4ピッチ目、5ピッチ目は、ルートが右へ曲がる個所がありルート・ファインディングが要注意。クラックなどもあるのでカムデバイスもあったほうが安心だ。
最後、8ピッチ目を終わって衝立岩の上部に出た。午後2時前だ。少し休んで衝立岩北稜を下降する。懸垂で何ピッチ降りただろうか。最後は2度の空中懸垂で略奪点に着く。この時点で午後6時。日はとっぷりと暮れていた。
あとは衝立前沢を下降し、夜8時半に駐車場着。
長い長い一日、
精神的にクタクタになった一日、
ウ○コを我慢しすぎて辛かった一日、
そして、初めての一ノ倉という充実の一日が終わった。