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偏りのない地道な努力を期待 |
(山塾通信 90年10月号) |
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岩登りの技術がマスターできてないと、沢登りは安全に楽しめない。だからしっかり岩登りのトレーニングに励む必要がある、というのは常々ぼくが主張していることだ。
無名山塾の教科書の一つとさせてもらっている『沢登りの本』は1983年に白水社から出版された本だが、すでにその中で岩登り技術の重要性を指摘している。プロテクションのシステムが理解できていない。三級の岩場も安定したリードができない人を、“ゲレンデ”のレベルを越える沢ルートに誘う先輩がいる。
ぼくの言う岩登り技術といは、あくまでも総合的なものなのだが、グレードの高いルートを登れることと解釈する人がいるだろう。しかし、それは誤解である
5.10をフリーソロしてしまう奴がいたとして、彼がもしパートナーとアンザイレンし、三級の岩場をリードしたとき、きっちりランニングビレーをとってゆかないとしたら、それは山塾がモットーとする安全で楽しい登山とは無縁なものなのだ。
登り始めたら、ランニングビレーをとらない限り、失敗すれば、グランドフォールする。仮に安全を期して、高さ3mの所でランニングビレーをとったとしよう。そこからさらに2mの所で二本目のランニングビレーをとる。それをしないまま登り続けて失敗すれば一本目のハーケンは意味なく、グランドフォールという結果になる。“ロッククライミングと友だちになる会”で学んでもらいたいと思っているハウ・トウやノウ・ハウは少なからずある。それを一回きりの講習でマスターできようはずがない。二回、三回と講習会に参加した方がベターに決まっているのだ。疑問点や理解できないことがあったら、遠慮なく質問して欲しい。
もちろん本科生同志の自主トレで自らのノウ・ハウを蓄積してゆくことも大いにけっこうなことである。
わが国では登山を、岩登り、沢登り、尾根歩きなどとジャンル分けしてしまうが、それはそれぞれの分野を得意とする人たちのアッピールにすぎないのであって、登山とは「山登り」なのである。
安全で楽しい山登りができる登山者を一人でも多く育成しよう、というのが山塾の希いである。山塾は沢屋の集団でもなければ、フリークライマーのサロンでもない。なによりもまず、登山学校なのだから、それを不満と思う人は、それぞれのジャンルのビックグループへトラバーユした方が幸福だろう。
山塾は天才向きでは決してなく、凡才向きの集団と考えて頂きたい。 |
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