入会案内「無名山塾のこと」
(1984年ごろ)
 はじめに
 山に登る喜びというものは、数え上げれば十本の指では足りないぐらいに豊かなものです。しかし、それらを本当に享受できているかとなると、いささか疑問が残ります。私は本格的な登山であれ.日だまりのハイキングであれ.享受できるものは同質なはずだと信じていますが、受ける側の姿勢にどこか油断があって、豊かな実りを取り逃がしてしまっているような気がしてならないのです。たとえば本格的な登山の場合、長い間アルピニズムという思想をアイデンテティの寄り拠としていました。より高き、より困難を目指す登山を、価格ある登山と認めてきた結果、ネームバリューのある山やルートへ登山者が集中するようになりました。いまや困難性まで普遍化され等級づけられる有様です。それは間違ったことではありません。  ただ、より困難を目指すこと自体が、登山の一側面でしかないはずなのに、普遍化された困難性にアイデンテティを委ねてしまうのでは本末転倒だと思うのです。話が固くなってしまいましたが、私が主張したいことは、自分の登山を位置づけること、評価することなど必要ないということです。
 マウンテニアリング・プロセス・デザイン−−−初めて耳目にする言葉だと思いますが、これが私からの提案です。この言葉を簡単に説明するのは難しいことですが、素敵な山との関わりを意識してクリエートしてゆきたいということです。そういう意識を持って集まってもらった仲間たちに“コスモス”と名付けました。歩くことだけで充分文句なしなのですが、テクニックを習得すると、山とビビッドな関係をもちやすくなります。より高きより困難を目指す目的でなく山とちょっといい関係になるために(安全で楽しく)マウンテニアリングの基本的な技術を学ぶ場、それが無名山塾なのです。

 チャンスメニューについて
 無名山塾の講師はガイドではありません。講習会はもちろん技術を学ぶ場ですが、これは一つのチャンスメーキングだと考えています。だからチャンスメニューなのです。私たちは講習会に参加するみなさんをガイドに対応する登山客だとは考えません。近い将来、仲間になる登山者だと考えます。本来マウンテニアリングとは自分の手と足とそして頭で関わるものであって、他人様にお金を出してまでひっぱりあげてもらうものではないと思っています。かっては山岳会に入会すればそこで技術を学び、パートナーを育て、自分の登山をクリエートできました。しかし、昨今では山岳会にそうした機能が弱くなっていることと、そうした組織での人間関係を考えてか、入会を逡巡し、自分のマウンテニアリング・プロセスをデザインできないでいる人が多いようにみうけます。その第一歩をコーディネートしようというのが、山塾のチャンスメニューなのです。
 チャンスメニューは初心者を対象にした第一ステップの講習会“友達になる会”と初級者のグレードアップを目的にした第二ステップの講習会“親しむ会”を中心に基本10ステップが計画されています。本科生として入会するには入会金( 5,000円)遭対基金( 5,000円)遭難保険(実費)が必要です。会費は月額1,000円。本科生は基本10ステップの講座へは*1,000円で参加(区谷川岳は半額)でき、10単位終了すると無名山塾同人として認められます。5単位以上習得した人は研究生、専科の講座へ半額で参加でき、必要単位を終了して実力ありと認められた人はアシスタントを至て無名山塾の講師に委嘱されます。
 ビジターとして必要なステップに参加することも可能ですし、山岳会ではないので、軽い気持ちで入会してみるというのも手ではないでしょうか?連絡をお待ちしています。尚、岩崎への電話はam9:30又はpm5:30頃、撰自由事務所までお願いします。不在の場合は名前と電話番号を伝言しておいて下さい。
岩崎元郎文書集トップ無名山塾ホームページ月刊岩崎登山新聞
 
2002 Company name, co,ltd. All rights reserved.