岩小舎 9
西丹沢中川川流域の沢登り
平成12年8月19〜同月20日
悉知藤也(18期秋生)
リーダー:悉知(藤)
メンバー:松本、平林、佐々木、悉知(雅)
予定コース:1日目−モロクボ沢(遡行)〜畦ヶ丸〜白石峠〜用木沢出会
        2日目一東沢本棚沢(遡行)〜檜洞丸〜ツツジ新道〜西丹沢自然教室

第1日目 快晴
 車4台で用木沢出会の駐車場まで入る。通常、ここより40分手前の西丹沢自然教室までしか人れないと地図にあったのでラッキーと思いつつ、ここまで入ってきてしまった。これが後の苦しい尾根歩きの原因となる。今日のモロクボ沢は、中川川の源流となる中級の沢である。水量が多くナメと泳ぎを目的に、この沢を選んだ。朝、10時駐車場を出発する。装備は、登攀道具と30mザイルと20mザイルの2本である。廃止となった白石沢青少年キャンプ場まで林道を歩く。キャンプ場の入口に架かっている橋の下を流れている沢が白石沢である。この橋を渡り、何も無いキャンプ場の中をしばらく進とモロクボ沢がある。
 この沢に架かっている橋を渡り、右岸より入渓する。天気は良いし、水が綺麗で言う事なし。堰堤を2本巻く。この沢は、白い花崗岩でできているので全体的に明るい感じがする。また、フリクションも効くので気持ちの良い沢登りが楽しめる。20分程登ると、F1−35mが現れる。左側より巻く。一段上ったところで滝に向かってトラバースすると、滝の落口に出られる。巻きは、結構悪い。ここから先は、薄暗いゴルジュとなる。すぐにF2−15mのナメ滝が現れる。綺麗なナメ滝に皆ニッコリ。但し、手前に水を満々と湛えた大きな釜がある。久々に泳ぐが、水はそれほど冷たくない。泳ぎたくない人は、ヘツって直登する。フリクションが利くのでどこからでも登れる。すぐ上は、F3−8mのナメになる。ここにも滝壺が有る。相当深そうであるが、泳いで取り付く。水が綺麗なので気持ちが良い。
 F4−5mとF5−8mともに美しいナメ登りと滝壺の泳ぎを満喫する。ナメ滝の傾斜は緩いのでザイルはいらないが、滝壺が深いので、万一のことを考えザイルを出す。しばらく登るとゴーロとなり。陽が当たりだす。濡れた身体には、暖かく助かる。13:00左岸より水晶沢が流れ込む場所で昼食。丹沢にこんなに綺麗なナメ滝があるとは、信じられないと会話が弾む。
 身体が暖まったところで出発。ここより先は、普通のゴーロ歩き。ナメを楽しみながら登って行くと涸沢になる。左側の沢をつめていき、稜線に出られそうなところから、尾根に向かってヤブコギをする。30分程で善六のタワに出る。このまま下ると、2時間で西丹沢自然教室、そこから車道を40分登り返すか?尾根づたいに白石峠まで歩き、そこから用木沢出会まで登山道を下るか相談する。皆、車道を歩くのは嫌だと話す。車を西丹沢に1台置いてくれば良かったと悔やむ。尾根づたいならたいしたことは無いと軽く考え白石峠経由で帰ることにした。ところがどっこい、この尾根のアップダウンがきつかった。沢登りに来たのに、汗でビッショリ。歩けども歩けども白石峠には、なかなか着かない。息が上がり、足はフラフラ。最悪の選択をしたなと後悔する。16:00やっと白石峠に着く。2時間の苦しい登り降りだった。ここからは、下りだけである。17:00駐車場まで戻る。凍つたビールで乾杯!楽しい楽しい楽な沢と苦しく辛い尾根歩きだった。

第2日目 快晴
 今日は、東沢本棚沢を遡行する。この沢は、3級の沢で登學を目的に選んだ。F3の本棚25mとF7の涸棚40mが有名である。朝、用木沢出会から西丹沢自然教室の駐車場へ移動する。ここで、登禦の準備を整え、中川川沿いに車道を10分登って行くと、右側に檜洞丸4.8kmの道標がある。ここより、ツツジ新道に入る。約1時間でゴーラ沢出会に着く。左岸よりゴーラ沢が流れ込む。遠目に堰堤がいくつも見える。これを越えると思っただけでウンザリする。莫大な税金をかけて自然を破壊する砂防工事の見本市のようなものだ。堰堤がなければ、この下には美しいナメ滝がいくっもあるんだろうなと思いながら、無味単調なガレの中を歩いて行く。飽きるほどの堰堤を越え、やっと本棚沢の入口にたどり着く。その数11個、所要時間約1時間。炎天下でのこの歩きはきつかった。ここで1本。沢からの風がヒンヤリして、暑くなった身体に気持ちが良い。F1−5mの白いナメ滝より始まる。登り口には、深そうな滝壺がある。今日は、泳ぎが目的ではないので、右側より滝壺を越え直登する。フリクションが利くので、快適そのもの。ゴルジュの中に入って行くと、F2−10mが現れる。この滝では、ザイルを出す。右側から5m登り、左に3mトラバースする。このトラバースの1歩がなかなか出ない。勇気を出してアンダープッシュで切り抜ける。それから上は、ガバがあるので簡単である。皆も、このトラバースにはてこずっていた。全員クリアー。登攀大好き人間には、この緊張がたまらない。満足満足。 ナメ滝をいくつか越えて行くと右岸より、水量の多いカル沢が合流して来る。しばらく登って行くと、F3−25mの本棚が現れる。もちろん、直登であるが、どこでトラバースしたら良いのかが分からない。登れば分かるだろうとハーケンを持って左側から登りだす。進退極まった場合、ハーケンを打って下りてくるつもりだった。この滝は今まで登った滝と違い、ほとんど手掛かりが無い。さすがに3級の沢は違うと実感する。10mまで登って右側にトラバースしようとシャワーの中に入って行くが、ホールドが何も無い。しかたがないので、そのまま直登する。15m登った所でホールドが無くなる。ここまで、随分時間もかけているので、これで下りようとハーケンを打つ。全然入らない。何度やってもダメ。少し降り左側に移動しハーケンを打ったが、ここも駄目。進退極まった。でもハーケンがきかない。降りるに降りれなくなってしまった。ウ〜ン、必死で岩の割目を探すと足元にあった。これで降りれると思いながらハーケンを打つ。なんと、打った岩にヒビが入った。これでは降りれない。しかたがないので、このハーケンを使って2m左にトラバースする。ここに支点が有り。ホッと一息。5m上にテラスがある。そこまでは登れそうなので頑張った。テラスまで登り、残り5m。ここで滝を越え右側にトラバースする。左側はツルツルの壁でお話にならないが、右側の直登はガバだらけで簡単だった。「ビレー解除!」良かった良かった。ドット疲れが出てしまった。3級の沢は、あなどりがたいと実感した。皆をビレーする。皆も四苦八苦しながら登って来る。全員、無事登り終える。この滝に時間をかけ過ぎたので、先を急ぐ。F4−10mとF5−6mのナメ滝を簡単に登って行くと、急に目の前がパーと明るくなり、その先に大岩とF6−20mのハングの滝が見える。この滝は、左側の大岩との境目を登る。泥と草付きでスベリ易く悪い。ザイルをフィックスしブルージックで登る。そのまま、右に向かってヤブコギをすると簡単に滝の落口に出る。ここで岩の上を這っている3〜4cmのオオクワガタを松本さんが捕獲した。この大きさなら10万円で売れるなど話しながら登って行くと、目の前にドーンとF7−40mの涸棚が壁の様に立ちはだかる。「ウワ〜スッゲナ〜。これ登るのかよ〜!」と壁を見上げる。
 ここで、2チームに分ける。平リンと松本さん、つるべで登るチームと残り3名、50mザイルで一気に登るチームだ。右側の草が付いているクラックを目指して松本さんが登り出す。流石に旨い。登りが安定しているので安心して見ていられる。25m登った場所にビレーポイントがあり、平リンが後に続く。佐々木さんにビレーをお願いし、先行パーティより左側のルートを登ることにしたが、支点が何も無いので、あきらめ平リンの後を追う。15m登ったところで難しい部分が出て来たのでアブミをハーケンに掛ける。ハーケンがしっかり利いているかヌンチャクを掛け引っばり確認した。アブミに体重を移動し次の手掛かりを捜していると、突然、体が空を舞った。目の前の岩が飛ぶように上に上がっていく。次の瞬間、お尻に激痛が走る。駄目かと目をつぶった瞬間、体が止まった。グランドホールまであと5mだった。「助かった!佐々木さんありがとう。」皆、「大丈夫か?怪我は無いか?」と声をかけてくれるが、気が動転しているのとお尻が痛いので、言葉が出ない。しばらく休み落ち着いて佐々木さんに降ろしてもらうようお願いしたが、ザイルが何かに絡まって降りれない。ハーケンが抜けた場所を見上げ、落ちた軌跡をたどってみると、次の支点が飛んでいたら確実にグラドホールだった。支点を1つおきに取って登っていたので、10mも落ちてしまった。ここで教訓:[アブミをハーケンに掛けるときは、ハンマーで叩いて利いているか確認しなければならない。そして、アブミに長時間乗っていることは非常に危険であり、できるだけ速やかに岩に乗り移らなければならない。]以上のことも身をもって学んだ。いつまでも、ザイルにぶら下っていてもしょうが無いので、登ることにした。今度は慎重に登る。抜けた場所の手前では、しっかり支点を取り。アブミを掛けるハーケンは、叩いて確認し、アブミからは、すみやかに上の岩に移った。ここから、クラックの草付きを10m登り、残り5mの所で、左側にトラバースする。このトラパースが怖い。先に登っている松本さんに、アブミを出してもらいクリアー。残り3mザイルが重くて引っばられ、なかなか登ることが出来ない。腰を入れて引っばり上げ、やっとの思いでオンサイト。痛いお尻を我慢しながら「ビレー解除!」先行パーティーの平リンと松本さんに感謝。ビレー用のハーケンを松本さんに打ってもらい。佐々木さんと雅美をビレーする。2人とも恐怖と闘いながら登って来る。16:30全員無事にオンサイト。皆、3級の沢はやはり凄いと話あった。
 ここから檜洞丸までは稜線をたとる。急な坂で土が柔らかく、なかなか高度が稼げない。日没までに下に降りたいので皆、必死である。汗だくだくで登っているので、それを狙って何十匹ものブヨがまとおりつく。止まると耳や鼻にブヨが入って来るので休むことも出来ない。地獄のような登りが1時間。やっとの思いで山頂に着く。しばらく休み、ツツジ新道を下る。お尻と膝の痛みを堪えながら西丹沢自然教室まで必死に降りる。19:00到着。皆がビールを用意して待っていてくれた。乾杯!一気に流し込む。喉がビリビリと痺れた。苦しみが多ければ多いほどビールが旨いのは何故だろう。今日のビールは最高だ!今日は、みんなに心配をかけて申し訳なかった。皆に
は、ただ感謝。これに懲りず、また行こう。 
 
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