岩小舎 9
裏丹沢早戸川流域の沢登り
平成12年7月22〜同月23日
悉知藤也(18期秋生)
リーダー:悉知(藤)
メンバー:長田、高橋、悉知(雅)
予定コース:1日目一原小屋沢(遡行)〜姫次〜大平〜伝道
        2日目一円山木沢(遡行)〜円山木ノ頭〜太礼ノ沢下降〜伝道


第1日目 快晴
 朝8:30伝道を出発する。装備は、登禦道具と30mザイルと20mザイルの2本である。原小屋沢は、中級で雷滝やバケモノ滝およびガータゴヤの滝が有名である。この沢は、蛭ガ岳の東面、早戸川の本流になる。メンバーは、私と雅美の2名である。私達は、雷平まで登山道を利用することにした。伝道の林道終点で3本の登山道があり、一番右側の山に登る登山道を行く。途中、造林小屋の前を通り、しばらく歩くと早戸川を渡り右岸を進む。道にはリボンや白テープが付けられているので、間違えることは無い。しばらく進むと、また橋があり左岸に渡り、赤リボンとテープに導かれ崩れかけの道を登って行く。行き着いた所で大きな滝が行くてを塞ぐ。ドドドー出た〜という感じである。この滝がF2の雷滝である。水量が多いうえ、手掛かりが無さそうなので、左側から巻く。ちなみに、F1の大岩の滝は雷平から沢に入らないと登ることが出来ない。我々は、知らない間に雷平を通り越えF2まで登山道を登ってしまったのだ。
 F3のトイ状の滝をなんなく越え、ナメを快適に登って行く。この沢の水は、透明度が高く非常に冷たい。イワナと思われる魚をずいぶん見る。左岸から流れ込むカサギ沢を確認し、しばらく進むとF4のバケモノ滝が見えて来る。遡行図では右岸よりボッチ沢が1:1で流れ込むようになっているが、涸れ沢だった。バケモノ滝は、陰気な滝で多少ハングっており、岩がもろそうなので左側から巻く。F5の3段20mの滝は左側を薄く巻く。これだと懸垂下降する必要は無いが、出だしが悪いので注意すること。F6の10mの滝を右側から巻くと、正面にF7ガータゴヤの滝が見えて来る。この滝は30mの堂々とした滝で姿形が良い。ザイルを出し左側より直登することにした。当然、シャワークライミングになる。まず、3m登り頼り無いスリング2本にカラビナを掛け支点にする。1本では心配だから、必ず2本使うこと。ここから2mが核心だ。左側の土手の岩はボロボロなので右側の水線通しを登ることにした。水が異常に冷たい。なかなかホールドが無い。3分5分と時間が経つとともに手がかじかむ。手がシビレて真っ白になる。やっとホールドを探し出し体を上げる。下では雅美が水を浴びブルブル震えながらビレーしている。思った以上に難しく時間がかかってしまった。雅美をビレーをする。核心部分は、掛かっているスリングに足を入れA1で乗り越える。これならば、チビの雅美でも簡単にフェィスが登れる。F7終了後、指は真っ白、シビレたまま。この沢の水がいかに冷たいかが分かる。ガータゴヤの滝のすぐ上には、クサリのある滝がある。クサリが左側に取り付けられているので、簡単に巻ける。遡行図では、この滝で大きな滝は終了になっているが水量は、まだまだ豊富である。傾斜もゆるく森が深い。いつもの丹沢ならば、涸滝になり崩壊が見え傾斜がきつくなるのに、この沢は全然涸れる気配が無い。小さな滝をいくつか越え、滝壺で泳いだりしながら1時間程、登って行くとやっと水が涸れる。ここまで20cmぐらいのイワナを4匹ほど見る。ここのイワナは茶色であった。沢が涸れた所でスカルパに履き替え昼を摂る。今回は、下りが登山道であるため、できるだけ早く沢靴を履き換えることにした。ここから先、涸れた沢を登って行くといつのまにか笹原になる。藪漕ぎもなく姫次に着13:40。ここまで約5時間の遡行であった。
 この沢は、表丹沢と違い崩壊があまり進行していなくゆったりした感じがする。もちろん、水も冷たく綺麗である。下りは、登山道を太平まで下る。太平から先は、尾根道で早戸川まで下るが、降り口が草でなかなか見つからない。大きな看板に「春〜秋マムシに注意,ヒルに注意」とあるので藪に入るには勇気がいる。太平で30分ウロウロする。どうしようも無いので、思い切って尾根を下ると道が出てきた。これで早戸川まで下れる。ホッとした途端ヘビが目の前に現れる。ヘビをやり過ごし、川を渡渉し右岸を登りバス道に出る。伝道に17:00に到着、靴下を脱ぐとヒルが1匹ついていた。

第2日目 快晴
 朝、長田氏と幸ちゃんが車でやって来た。今日は、4人で円山木沢を登り太礼ノ沢を下る。7:30伝道を出発、早戸川を目指す。川を横切ると岩小屋がある。この岩小屋の左側を流れる沢が円山木沢である。水は冷たいが濁っており、泳ぐ気にはならない。F1−5mの滝は右から直登する。しばらく進むとF2−25mの大棚の下に着く。見上げるような滝である。下部はカバがいっばいありそうだが、上部は細いクラックが1本あるだけだ。登攀用具とアブミ4本を持って右側を直登する。登り始めは、泥や草がついているのでスベリ易い。約6m登った所でハーケンを打つ。岩が脆いので少し甘いような感じだ。ここから左に回りクラック沿いに登って行く。支点が結構あるので、楽に登れる。残り8mの所からスリングが何本も掛けてある。これらの支点にアブミ4本を回収せずに掛けていく。最後の乗越しは、手掛かりが無くなり、左のテラスまでトラバースする。ここが、この滝の核心である。角度は80度ぐらい、フリクションを利かせ、そ〜と体重移動をする。2歩でテラスに着く、アドレナリンがドット出る。これから先は、傾斜も緩く、安心して登りきる。滝の落口に2本のボルトが取り付けてある。ビレー解除、落ちなくて良かった。ホットしながら、皆をビレ−する。皆も核心では苦労している。垂直25mの滝の直登は、今までで最高の高さである。満足満足。天気は上々、木々の切れ間からは陽射しがさし。気持ちが良い。
 ザイルをしまい、イザ出発。しばらく登って行くとゴルジュの奥に8mのF3が現れる。遡行図では、巻くことになっているが、左右ともに悪い。そのまま、長田さんがゴルジュの中に入って行く。滝の右側にハーケンを見つける。傾斜がきつく、コケが着いていてスベリそうである。登る気がしない、かといって戻って巻くのも大変。迷っていると長田さんが、「リードするぞ−!」との強きの発言。もう、ここを登るしか無い。長田さんがアブミを使い、登り始める。4mのところで、足をスベらせ落ちそうになる。皆、「ウワー落ちる〜」と叫ぶ。ヌンチャクを掴み体を保持、落ち着いたところで、笑いながら大丈夫だと手を振るが、顔が青ざめていた。ここから上は、A1で登るが、難しいようだ。ハラハラしながらビレーを続ける。やっと登りきる。多分5級プラスのグレードだと思う。これをリードした長田さんはスゴイ。この滝が、円山木沢の核心である。セカンドで登る。アブミがあって良かった、これが無ければとても登れなかった。全員やっとの思いで登りきる最後にアブミを回収しながら登ってきた雅美はさぞかし大変だったと思う。
 F4−15mの滝はガバのある左側を快適に登る。万一のためザイルをフィックスする。全員、なんなく登る。次の15mのナメ滝を登って行くと、急に目の前がパーと明るくなり、その先にF520mの2段の滝が見える。滝の下は、広々とした広場になっていて、回りの景色が見渡せる気持ちの良い場所である。陽射しが強くシャワークライミングにはもって来いの天気である。左側より長田さんがリードする。1段目の滝を登り、トラバース用にハーケンを打つが、なかなか決まらない。何箇所か試したが入らないのであきらめる。支点無しで滝に打たれながらのトラバース。「ワー冷めて〜!」の声とともに姿が消える。滝の向う側に出る。旨く右側にトラバースしたようだ。ここから上は、ザイル無しでも登れるので、結局、支点無しで登ってもらう。ザイルをフィックスしてもらい、全員ブルージックで登る。滝のトラバースでは、ドドドーと滝に打たれ前が何も見えなくなる。皆、本格的なシャワークライミングが体験できて楽しそうである。さらに滝をいくっか越え二股にわかれる10mの滝F6に着く。この滝では、中央を雅美がリードする。支点が無いので3mの所でハーケンを打つ。初めて打つハーケンに満足。しっかり入っているので大丈夫。全員、フィックスで登る。この先、いくつもの小滝を登って行くと沢は涸れガレになる。この急な傾斜のガレを20分程登って尾根に出る。暑いので皆、汗だくだく。尾根を右に進むと本間の頭に出た。ここから、円山木の頭まで登山道を行く。
 暑くて辛いなか12:45に到着。ここで昼を取る。太礼ノ沢までは幸ちゃんのルートファインディングに頼る。登山道を太礼ノ頭に向けて出発。最低鞍部のコルより右側の尾根に降りていく。ここより約20分で目の前に太礼ノ沢が現れる。ヤッタネ幸ちゃん!この沢には、あまり大きな滝は無い。1時間程下るとF1−3段2Omの滝に着く。ここは、ザイルを出す。その後も遡行図には無い大きな滝が2〜3現われる。15:40早戸川出会いに着く。2時間の下りだった。ここから、この早戸川を伝道まで下る。水量が多く、体が流される。深い滝壺がいくつもあるので、注意しながら流れに身をまかせる。楽ちん楽ちん。泳ぎの沢下りは、何て楽しいんだろう。30分ほど下ると右岸に朝見た岩小屋を確認する。ここから川を横切り、伝道へ。
 今回の沢は、変化に富んだ面白い沢だった。皆が、それぞれ能力を発揮し、出来ることを実行した、納得のいく沢だった。
 今回のルートは、お勧めである。
 
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