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岩小舎 9 |
谷川岳 西黒尾根 |
平成12年3月9日 |
菅原博徳(18期) |
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3/4(土)5:30土合発。薄曇り。天気予報では群馬県が曇りのち雨となっていて、小同心同様、今回も土曜日一日しかも午前中勝負の山行となる。メンバーは菅原の他に松本さん、平林さん、りこちゃんの4名。
西黒尾根取り付きから膝上までの雪があり、ワカンを着用して急坂を登る。途中、カモシカがのんびりこちらを見ているのを横目に、ただひたすらラッセルする。4名かわるがわるトップを交代するのだが、松本さんと平林さんが距離を稼いでくれるので、大いに助かった。
ラクダのコル手前のくさり場から雪稜らしくなり、ここでワカンからアイゼンに切替え。雪庇に注意しながら進むと、先頭にいる松本さんが立ち止まった。なにやら決め兼ねている様子。追いついてみると、なんと、先に道がない。この先はコル。尾根上の積雪が多いため、コルの底まで7、8メートルぐらいだろうか足元からすっぱり切れ落ちているのだった。その先も、西黒沢側に張り出した巨大な雪庇の根元に亀裂が入っていたり、かなり悪そうな様相を見せている。先の状態が分からない、気温が高く雪崩の危険がある、天候が悪化しつつある、ということから、松本さんが撤退しようと言う。特にコルからの登り急斜面での雪崩の発生を心配した。
山頂は目の前に見えている。さて、どうしたものか。松本さんの意見ももっともだと思いながらも、周辺の状況や雪質、ここ2日ばかりの間の天気からして、雪崩はまずないと僕は判断した。それよりも問題は、悪化しつつある天候だと思った。降雨のあと、吹雪く可能性があった。典型的な遭難パターンだ。前進するとしたら、少なくとも肩の小屋まで、できれば天神尾根に入っていたかった。この先の通過に時間がかかるようだと、それも叶わなくなる。迷い、しかし迷って時間をつぶすのも惜しいので、結局もう少し先へ行って様子を見ることにした。
今来た道をやや戻り、尾根筋の下側のブッシュを繋ぐように、斜面をトラバースしてコルを巻く。ルートファインディングして横ばいしながら、雪ひだを乗越し、ウサギの足跡を追いかけてのトラバース、実は今回ここが一番面白かった。コルからの急登に入る。悪くなりかけた天気が少し回復してくる。あと2〜3時間は大丈夫だろう。松本さんがアイゼンを雪だんごで高下駄にしながらがんばる。危険地帯を早く通過したいという気持ちが伝わる。りこちゃんもトップでラッセルする。振り返ると、雪稜に僕らのトレースがくっきり残っている。みんなでがんばって、ザンゲ岩へ。ここは安全だろうというところで一本。天神尾根に小林隊が見えると言うのだが、僕には分からなかった。
トマの耳着が13:30。西側は暗い雲に覆われ、風が強い。いつも通りの握手と記念撮影後、早々に天神尾根を下る。15:30に小林隊と合流。雪洞を掘って行動を終えた。
松本さんの話では、2年前に比べると今回は雪の量がかなり多かったそうだ。谷川岳の美しさは堪能できたが、ラッセルがつらい山行になってしまった。また、天候悪化との追いかけっこで、こちらはぎりぎりセーフという感じか。実際、雪洞を掘っている途中で雨が降ってきたし、翌日は7時ごろから吹雪になった。西黒尾根上でビバークになっていたらと思うと、運がよかったと言うほかない。
最後に、僕らの掘った雪洞を見た小林さんの評価は…20点だった…。朝起きたときに天井に大穴が開いていたり、平林さんが滴で水浸しになっていたりして、それはそれでまた面白い体験だったのだが。
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