岩小舎 9
小同心クラック
2/19
菅原博徳(18期)
2/18土曜日、翌日の降雪が予報されていたので今日中に小同心クラックの登攀を終わらせたく、美濃戸口を5:00に出発した。メンバーは菅原の他に松本さんと平林さんの3名。おぼろ月夜の林道を赤岳鉱泉へと歩く。鉱泉にテントを張り、登攀具を持っての出発が8:30。風はなく、薄日が差している。絶好のクライミング日和だ。大同心沢左岸の踏跡をたどってすぐに左の尾根へ、急登をしのぐと大同心稜に出る。なおも続く急坂を登り切り、大同心基部へ。右に中岳のあたりを見ると、もうかなりの高度を稼いだことが分かる。ここまでで結構、疲れてしまった。ふくらはぎが痛む。他の二人はどんどん先を行く。菅原は遅れがちになりながら後に続く。実はこのとき風邪気味で…というのは言い分け。大同心基部から大同心ルンゼをトラバースして小同心クラックの取り付きへ。登攀準備をして11:00過ぎぐらいに登り始める。1P 目終了点のテラスが狭いということを聞いていたので、ここに2 名以上が集まらないようなシステムをとるようにした。

 1P目、菅原がザイルを2本ひいてリード。右の階段状から左上してチムニーを目指す。いつものように、支点を一本とるまでは緊張する。チムニー内はホールドもスタンスも大きくしっかりしているが、予想以上に傾斜がきつい。奥に入りすぎるとのけぞってしまうので、外側にあるガバを拾いながらチムニー沿いに40M 登って終了。終了点にはボルト2本にスリングが束になったビレイポイントがある。ここまでまず松本さんがフォロー、そのまま2P 目をリードしてもらう。彼が登り切ったところで平林さんに1P 目を上がってもらい、すぐに菅原が2P 目をフォローする。

 2P 目はビレイポイントから右に回り込んでチムニーに入る。両側の壁を利用して登り、小テラスへ。ここからルートは左右両方にとれそうだが、我々は左へ、体がようやく挟まるぐらいの狭く短いチムニーを登った。これを越して細かいフェースを右にトラバースすると2P 目終了点である肩に出た。肩はけっこう広く、ビバークぐらいできそうなところ。

 3P 目はそのまま平林さんリードで草付きバンドから簡単なフェース登り。全員が小同心の頭に揃ったところで握手と記念撮影して終了。横岳基部まで少し歩く。基部から大同心ルンゼへ下降できそうだったが、踏跡はなく判然としない。頂上まで行こうという松本さんの意見に異存もないので、ここから1P 、一応ザイルを付けて横岳頂上を目指す。

 14:00横岳頂上着。展望よく、はるか穂高まで見える。朝、美濃戸口にいたのが嘘のようだと言った平林さんの言葉にうなずく。大休止し、硫黄岳を経て鉱泉に帰着したときには16:00を過ぎていた。ビールとワインで祝杯。翌日は石尊稜の予定だったけれど、皆、口でははっきり言わないが、悪天で行けないだろうと、そう思っているので量が上がる。酒宴は続く、夜は更ける…。

 今回、冬壁初心者同士の自主山行だったが、手に余ることもなく、といって予想以上に手応えのある部分もあり、楽しめた山行となった。ただ、小同心自体はガイド写真などで見るのに比べて雪の量が少なかったようだ。冬壁というと、支点を掘り出したり、雪を払って登るというイメージを持っていたが、そういう部分は全くなかった。支点については全般に少ない様に感じたが、岩角を利用すれば結構こまめに作っていけると思う。その為にも、長めのスリングは余分に持っていった方がいいかも知れない。
 そんなこんなと色々あるけれど、何はともあれ、自分たちだけで冬壁へ行ったという満足感には変わりが無い。さて、この後はどこに行こうかな。
 
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