岩小舎 9
安達太良山
平成12年2月11日(金)〜12日(土)
宮下裕史
メンバー 宮崎章人 幡鎌亮一 井上  宏 宮下裕史
行 程 『2/11』 東京(7:4 旬郡山(9:27 〜9:58) 二本松(10:23〜10
     :28)奥岳温泉(10:50〜11:40)勢至平分岐(13:30) くろがね小屋
     (13:58) 泊
    『2/12』 くろがね小屋(7:00)峰の辻(7:50〜7:5 旬安達太良
     山(8:20 〜8:35) 薬師岳(9:56 〜10:03)リフト終点(10:30〜  
     10:32)奥岳温泉(11:00)
装 備 (個人)一般冬山装備のほか ビッケル、アイゼン、わかん、スコップ、
     ビーコン、ツエルト、コッフェル  (バーナー、ボン入)
    (共同)ロープ (9mm×30 M) 1、トランシーバ2
記 録
   (第一日)
 二本松駅下車。快晴なのに、安達太良山は雪雲に覆われている。奥岳温泉ヘタクシー約2O 分で到着。雪が舞りているが、スキー場の積雪は110cmで、例年より少ないという。車もスキーヤーも少ないようだ。時間があるのでゆっくり休憩する。11時40分、高度計、ビーコン、トランシーバをチェック、パトロール事務所に登山届を提出して出発。
 ゲレンデの脇から右へ、登山道に入る。道は踏まれていて、迷うことはない。烏川橋で高度、方位を確認する。途中から登山道を離れてシヨートカットして進む。次第に雪が深くなるが、くるぶし程度のラッセルで問題ない。風弱く、乾雪で、快適な雪山歩きだ。途中、弱層テストのまねごとをする。
 勢至平は一変して強風。だだっ広い平坦で、視界が悪いときは迷う。一昨年までルート沿いに立っていた、旧い電話線用支柱が全て取り払われ、替わりに、福島気象台の気象計(地震・雨量)が設置されている。峰の辻分岐にも新しい標識が立っていた。
 雪まじりの強風に、一本たてる気にもならず、そのまま進む。湯川に落ち込む沢の急斜面をトラバースして尾根を回り込むとくろがね小屋はすぐだ。進入禁止の「湯道」を頭上に見ながら、右傾の凍結した下りを慎重に行く。14時少し前に小屋着。ビーコン訓練は悪天候のため中止にする。チェックインを済ませて、温泉に直行。

   (第二日)
 一晩中吹き荒れた強風が朝まで持ち越している。だが視界はある。7時、躊躇しているのか他のパーティは現れない。他人のトレースを行くのは山行の目的に反するから丁度いい。最初からアイゼンを着け、フル装備で風雪の中へ突入した。凍結と深雪のミックスで不安定である。目出帽とサングラスの隙間から顔を刺す雪粉が痛い。ラッセルを交代しながら進む。峰の辻の手前、標高1,500 m地点に新しい標識が設置されていた。昨日の勢至平といい、よく整備されている。50分で峰の辻に着く。ここは勢至平から牛の背へ続くルートとの交差点。尾根上だから、風は一層強い。牛の背ルートが、ほぼ同方位に向かっているで要注意だ。やや左へ沢に下りる。高度20mを下りそこからコンパスを195 度に振って直進すると、頂上直下の標識に突き当たった。この山で一番の強風地帯だ。乳首の岩峰下までの30mを耐風姿勢をとりながら必死に這い上がる。ザックを岩陰にデポし、みんなの到着を待って頂上へ。遠くは望めないが切れ込んだ烏川から五葉松平が拡がっている。これから向かう尾根ルートと、中間目標点の薬師岳のゴンドラ頂上駅の建物もぼんやりと確認できた。無事下山が保証されたような安堵感を意識する。記念写真をと皆に並んでもらったが、風でどうやっても身体が静止しない。とうとうシャッターを押せなかった。強風を越え、暴風レベルのひどい風だ。峰の辻で合わせた高度計が1,715 mを示し15mの誤差がででいたが、修正どころではなかった。
 下山は、高度を下げれば風は弱まるので気は楽だ。しかし、広い尾根の下りでルートどりに気が抜けない。コンパスと高度計を使って進む。夏道からそれるとモそまで踏み抜く。わかんを着けようかと迷ったが、結局着けずにドタンバタンしながら歩き通してしまった。途中、何組かの山スキーヤーに出会う。皆、上部の風の状態を心配して聞いてくる。安心させたいが、過去6回のスキー登山の中でも今日の風は厳しい方だ。「相当きつい。気をつけて」というほかなかった。山頂から1時間20分で薬師岳に着く。ここからゴンドラが通じているが、風速18m/sでストップだそうだから、エスケープに使えない。銀行のようだ、と思わず笑った。ここからリフト終点まで、五葉松平のルーファンも疲れる。沢の急斜面を避けて大きく回りこみ、尾根の樹林帯をラッセルして、あえいで下りたら、沢を直降した後続パーティが先着していた。ここは斜度30度を越える、無立木の沢。雪崩がないと、どうやって判断したのだろう。
 リフト小屋からはゲレンデの端を下る。スキーヤーが少ないので安心して歩ける。幡鎌氏のショートスキーを奪い合って、楽しく奥岳温泉に戻る。富士急ホテルの温泉で手足を思いきり伸ばして安達太良山は終わった。

   まとめ
(1)厳冬期、荒天、視界不良下、コンパスと高度計で行動することを目的としてこの時期を選んだ。結果的に移動性高気圧の周期に入り、東北地方以北で冬型の影響が残ったため、山中は両日風雪だったものの、視界を全閉するほどの悪天にならなかった。随所に竹竿が立ち、赤布が付けられていて、想定したほどの「計器飛行」にならなかったが、地吹雪が視界を閉ざす場面もあり、それなりにルートファインディングの実践訓練ができた。
(2)雪崩に関しては、ルートを外さない限り20度を越す斜面は少なく、基本的に安全という判断だが、要警戒 (斜度30度超) は、くろがね小屋へ回り込む最後の尾根の手前、湯川を見下ろす沢のトラバースと、薬師岳からリフト終点に向かう最後の沢状のトラバースの2個所。前者は逃げ道がなく、慎重に通過、後者は五葉松平寄りに大きぐ巻いて尾根の樹林帯へ逃げた。また、ホワイトアウトでトラブれば危険地帯は一杯ある。その意味で最低必要な装備を揃えた。 (主宰にご報告時「弁慶のようですね」と冗談をいわれたが・・・)
 
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