岩小舎 9
地図の本の紹介です。
1999年10月
上田達夫
 この本を読んで私は目から鱗が落ちました。

 『2万5000分の1 地図の読み方』 平塚晶人 小学館 です。

 8月26日の山塾机上講座で工藤講師の読図入門のレクチャーがありました。恥ずかしながらシルバーコンパスの使い方をあのとき初めて教わったのですが、その他にも地図を“読む”ための基本的なお話がありました。時間が短かったので「ここから先はとにかく山で地図を」ということで終わったように記憶しています。もう少し細かいところを聞きたい!という気持になられた方は多かったのではないかと思いますが、この本はまさにその欲求に応えてくれました。

 豊富に出てくる具体例がすべて著者(東北大ワンゲル出身。東京の徒登行山岳会で沢を中心に登山を続けている)が実際に歩いた山行をもとに、当該地域の2万5千図とともに示されていることからもわかるように、徹頭徹尾、山を歩く人のための地図の“読み方”なのです。章の題名と見出しをいくつか拾ってみると、

第1章 地図読みの必要性 次に出てくる地形を予測して読む 地図が読めるとバテにくくなる 
第2章 山の見方と、地図上の表現 山は尾根と谷でできている 尾根と谷の等高線
第3章 尾根と谷 いろいろな尾根 沢をなぞる どんな小さな尾根や沢も見逃さない
第4章 地図読みのテクニック基礎編 尾根の読み方 沢登りにおける地図読み
第5章 地図の使いこなし
第6章 磁石の使いこなし
第7章 地図読みのテクニック実践編 判断の材料 迷いやすい地形

 これらが巻末に付けられている98種類の2万5千図を集めた別冊地図帳を使って、あくまで具体的に説明されています。

 実は、来る負荷訓練にそなえて、先日大倉尾根に行ってきたのですが、2万5千の「秦野」には大倉高原山の家の前を通る登山道は示されていない!ということに、この本を読んでいたおかげで気がつきました(私が使ったのは平成元年修正測量のものですが)。当日は20キロ背負っていてバテバテだったのが、まだまだ未熟ですが“先読み”をすることで「この急登が終われば次は少し平坦になるからガンバロウ」というふうに、非常に励みにもなりました。

 著者の平塚さんがこのように言っています。
「本書を読み終えると、地図が読めそうな気になると思います。でも、残念ながらそれは錯覚です。あなたがほんとうの意味で地図が読めるようになるかどうかは、この本を読んだあとに山でどれだけひんぱんに地図に目を通すか、その一点にかかっています。一本とっているときでも、ときには歩きながらでも、興味を持って地図に目を通す人はてきめんにそれを読む能力が向上します。」「初心者のうちは同行者に『何やってんの、早く行こうよ』と言われるようでなければ、地図はけっして読めるようにならないのです。」
 山塾みんなでこれをやったら時間が倍かかってたいへんかもしれませんが、この姿勢はぜひ見習いたいと思います。そして最後にもう一つ著者の言葉。

「最後に、これだけは断言しておきましょう。地図が読めると読めないとでは、山登りの面白さはまったく次元が違うものになるということを。」

 ぜひご一読あれ。
 
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