岩小舎 9
北岳バットレス4尾根報告
1999年10月2日(土)〜4日(月)
坂口理子
メンバー:金沢和則・松本善行・坂口理子

10月2日(土)入山
 晴れ。8:30高尾駅集合。金沢号で広河原を目指す。
 広河原着12:30。この日、広河原の駐車場は車でいっぱい。ようやく国民宿舎前に駐車スペースを見つけ、準備をして13:00発。15:20、白根御池小屋着。小屋は雪崩れで全壊していたが、仮小屋で営業。テントは10張程。テントのパーティはほとんどバットレス狙いのようだ。夜半より、ものすごい大雨。緩傾斜帯でビバークしている菅原・平林隊は大丈夫だろうか…などと心配しつつ、寝る。

10月3日(日)停滞
 3:00起床。小雨。一応、行くつもりで準備を始めるが、雨はふったりやんだり。様子見ということで2度寝。天気は一向によくならず、この日は停滞。11:00ごろ菅原・平林隊が下りてきた。昨夜はずぶぬれだったとのこと。テントで暖をとったあと、下山する彼らをお見送り。前日から入山していたパーティは全てあきらめて下山してしまった。時間をもてあます3人は、あまりのヒマさに御池に石を…(以下、自主規制。)
 1時間以上遊んだ後、午後になって雨がやんだので、取り付きの偵察に出かける。ヒドンガリーには(何故か)「ピトン沢」、Cガリー、Dガリーにはそれぞれ「C沢」「D沢」と赤ペンキでデカデカと書いてあった。ガイドなどには「大樺沢の二又から2本目のバットレス沢をつめる」と書かれているが、二又の右又を1本目と数えてしまうと、ヒドンガリーが2本目になってしまうので要注意。ヒドンガリーを1本目と数えて、その次の沢がバットレス沢(大岩が目印)。すぐ続いてCガリー、Dガリー。3本の沢がほぼかたまって大樺沢と出合っているのがポイント。
 偵察から帰ってきて、夕食。テントが3張ほど増えていた。明日に賭けて、就寝。

10月4日(月)登攀・下山
 3:00起床。昨日より冷えているので好天が期待できそうだ。4:30出発。二又着4:50。ヒドンガリー出合5:00。バットレス沢・Cガリー・Dガリー出合5:25。ここまでは昨日の偵察のおかげで迷わずに行く。
 坂口が昨年の講習会で行ったルートを忠実にトレースするため、5尾根支稜をめざす。Dガリーをつめて、5尾根支稜取付き6:10着。既に3、4パーティが下部岩壁に取付いているようだ。7:07登攀具を身につけ5尾根支稜より登攀開始。リードは坂口。「山の非常識」3人パーティのため、ダブルロープで松本さん、金沢さんを同時に引き上げる形をとる。
 9:00頃5尾根支稜を2ピッチ半で終了。ここから、トラバースしていよいよ4尾根主稜登攀が始まるのだが、トラバースルートがよくわからない。坂口の昨年の記憶があやふやでルートファインディングに迷ったのと、懸垂で下りてくるパーティをやりすごしたので、少々時間を費やす。結局Dガリー沿いに1ピッチ直上し、横断バンドへトラバース。リードは松本さん。しかし、このトラバースが非常に悪かった。ほんの数メートルなのだが、上部は岩が張り出しているし、下部は崩れている。手がかりになりそうな岩も今にも落ちそうで信用ならない。昨年、通った覚えがないので、おそらく下部が崩壊したのだと思う。間違いなく、今回最大の核心部だった。松本さん、お疲れ様でした。
 10:20、横断バンドの潅木帯からリッジ沿いに4尾根主稜登攀開始。リードは坂口…が、これがなかなか難しい。4尾根にしてはピンも少なく、直上しようとすると頭上に岩が飛び出てきて、右に巻いたり、左の逆層のフェースに出たりしてなんとか登る。去年こんないやらしいところあったかなあ、と首をひねることしきり。(下山後、関崎さんに確認したところ、サブルートのひとつだろうとのこと。本来は、横断バンドから2ピッチほどノーザイルで潅木帯の踏跡をたどり、それから主稜のリッジに出るのだが、今回は横断バンドからすぐにリッジに出てしまった。かなりピラミッドフェース沿いに登ったようだ。)
 3ピッチ終わったところで、「白い岩のクラック」に出た。そこで、リードを松本さんに交代。5級のフェースも難なくこなす松本さん。ザイルさばきもスムースだ。14:10「マッチ箱のコル」の懸垂ポイントに着く。懸垂を終えたところで、リードを再び坂口に交代。3ピッチほどで終了点に達する。15:15着。とにかく、金沢さんも松本さんも登攀スピードが速いので、坂口のビレイが追いつかない始末。うーん、お粗末でした。
 踏跡をたどって北岳山頂着15:40。風が強くてむちゃくちゃ寒く、おまけに夕暮れが迫っているにもかかわらず、カメラをセットして写真を撮るなど、少々はしゃぐ3人であった。この日はめずらしく夕方まで快晴。雲海に浮かぶ富士山を見ることができた。
 松本さんが先行して草スベリルートで下山。17:30(松本さんは17:00)白根御池小屋着。テント撤収後、ふと見ると昨日の酒が1リットルほど入ったまま残置されている。「もったいないね」「うん、もったいない」「もったいないよね」と3人は……(以下、自主規制)。
 御池小屋発18:00。すっかり暗くなった登山道は「酒気帯び4級」のグレードだった。ヘッドランプの明かりの中、20:00広河原着。温泉計画、脆くも崩れて20:15金沢号で出発。松本さんの終電に間に合わせるため、金沢さんの華麗なるドライビングテクニック全壊、もとい全開。130km/hで高速をひた走りなんと22:30には八王子着。松本さんも終電に間に合いました。金沢さん、松本さん、いろいろと本当にありがとうございました。
 
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