岩小舎 9
雲の平 山行報告
8月
井上 宏
無名山塾研究生の井上宏です。
以下、恥を忍ぴ、哀れな老人山行の報告を致します。

 夏休みを前に、腹痛と下痢で島わや救急軍という目にあい、「またしても呪われた夏か」と暗澹たる気持ち、4日は会社を休み病院で点滴、5日、6日と水だけで暮らし、ようやくかゆなどが食えるようになったのは7日でした。15日までの長い休みを、去年・一昨年と同様、暑い家でうつとうしい思いで過ごすのはもう堪忍、山を歩けば治ると悲壮な思いで山行を決行しました。
 しかし、「今年こそは」と意気込んでいた山塾の合宿は、休暇との祈り合いがうまくつかずまたしても断念。代替案は2転、3転しましたが、出発前日になつてひよんなことから思い付いたのが雲の平行きでした。
 初日(9日)は、朝7時新宿発のあずさで松本から新穂高温泉経由でワサビ平に入っただけ。テントと6日分の食料を詰めたザックは家を出る時に23KGで、当初は「ボッカ訓練と思やよかなどと気楽に考えていましたがこれが大失敗と分かるのは後になつてから。
 2日目(10日)は、鏡平までの炎天下の登りでへろへろ。三俣行きをはたせず双六泊まりとなりました。
 3日目は、双六岳を空身で往復し、巻き道を通って三俣山荘へ。黒部源流からの登りの途中で雨が降り出し、景色はゼロ。日本庭園を通って雲の平のキャンプ場泊としました。前夜は餅と粥で用心したお陰で今日は腹痛も治まり、さあ何を食おうかな。一人で淋しいが楽しいキャンプ。
 4日目は高天が原へのんぴり湯治.爺が岳を越え、下る黒部源流の道の両側は−面のお花畑、索晴らし!
 一人で歩く脇のやぶの中から聞こえるのは何か?飛行機の音か、沢の音、そ九とも雷の音かと思い直したが、数歩進むと又聞こえるのはどう聞いても熊の咆哮。あずさで隣に座った救急ヘリ会社のオッサンから、「今年は熊の当たり年。1人歩きの女の子が読売新道で後ろから熊に襲われた」と聞いただけに、引き返そ!
 30分ほど戻った後で後からきた老夫婦と相談、笛の合奏でそこをやつと突破。熊で1時間以上時間をロスし、つきあいでのんぴり歩いた為、風呂に入ってからの雲の平へ帰る道は駆け足でした。今日は、サブザックの為昨日と打って変わって快調そのもの。岩ごろごろの急登も、エアリアの半分の時間で走破。好い気になっているところに、急遽ラデオに雑音が入り始め、てっきり雷と勘違い、雲の平小屋までの、残りの40分余は、必死の全力疾走となりました。これが老体には堪え、雲の平山荘へ着いてから急に気分が悪くなり、当日は山小屋泊まり。あくる日は、用心して鷲羽と水晶をあきらめ太郎平へ下る事にしました。
 翌日は薬師沢を出てから雨が降り出し、防水の全くヤ1かぬレインコートの下の体はびしょびしょ。ザックは石のように重く、とばとぼと辿る太郎平への道は敗走兵の気分でした。
 翌朝は、9時の折立発パスで富山へ出、快癒した腹に途中で酒類を流し込んで帰宅したのは夜9時でした。
 以上、何とも情けない老人山行となりました。

 山塾での教え、「IGでも軽く」「1人山行きはするな」等が身にしみて分かった学びの場になりました。
 
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