岩小舎 9
雪崩対策メモ
宮下裕史
              一雪崩対策メモー


               目   次
      1.基本認識              1
      2.雪崩対策の注意点          1
      3.雪の知識              2
      4.弱 層               2
      5.雪崩の種類             3
      6.雪崩の諸データ           5
      7.雪質観察              5
      8.弱層テスト             5
      9.捜 索               6
      10.搬送方法(別途)          7
      11.危険地帯の行動判断         7

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         A4で4ページ分の添付の図があります。
      パティオに図は掲載できません。別途に請求して下さい。
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               索   引
[ア行]圧縮力(応力)1  圧密2  あられ3  安息角3
[カ行]乾きざらめ2  危険斜度1  降雪(量)1,2 降雪結晶2
[サ行]ざらめ(・化、堅固な・)2,3 最大(最小)受信距離7  弱層(・の生成、
    要因、テスト)1,2,3,5  上載積雪1  焼結2  昇華2  しまり雪2  霜ざら
    め(・化)2,3  消失点6  スラッシュ(雪崩)2,4  スクラムジャンプ(ル
    ッチブロック)5  スキージャンプ5,6  スカッフ&コール7  セルフレスキ
    ュー(自力救助)1,6  積雪(・量)1,2  全層雪崩3,4  剪断力(・応力)
    1  雪庇1,7,8  生還率5  遭難点6  ゾンデ捜索7
[夕行]縦の層1  沈降1  デブリの到達距離5  低体温症状(・障害)5,7 電波特
    性7
[ナ行]雪崩注意報1  雪崩誘発行為1  雪崩危険度6  濡れざらめ3
[ハ行]発生斜度5   ハンドテスト5  ビーコン捜索7 引っ張り力(・応力)1
    表面霜2  表層雪崩(点発生・、面発生・)1,3  氷(河)雪崩3,4  氷盤4
    風成雪1  変態(乾いた 2  匍行1  放射冷却2
[マ行]マジック三十八1  三つ道具1  見通し仰角4,5
[ヤ行]雪の結晶2                              
「ラ行]ルッチブロックジャンプ(スクラム・)5  レスキューデス7

                (目次・索引)

[参考文献]「最新雪崩学入門」山と渓谷社・[ツアースキー教程]ベースボール・マ
 ガジン社・「体育指導者教本」日体協・「冬山レスキュー」都岳連・「雪山に入る1
 01のコツ」えい出版社

                 雪崩対策メモ          宮下 裕史

1.基本認識
 (1)雪の斜面は雪崩が起きる。
 (2)雪崩は登山者自身がひき起こす。
 (3)「過去発生してない」や「前の人が通過できた」は安全を保証しない。
 (4)完全な防衛策はない。遭遇した場合も救援を頼む時間余裕はなく自力救助{セルフ
  レスキュー)が前提。(自力救助三つ道具:ビーコン、スコップ、ゾンデ棒)}

2.雪崩対策の注意点
 (1)発生要因
 ・地形、斜度、植生、気象状況(積雪量、降雪量、気温変化、雨量、風速)など
  [雪崩注意報](各地基準)一長野県の例一
   (表層雪崩)積雪50cm以上で、降雪20cm以上、風速10m/s 以上、または積雪70cm
         以上で降雪30cm以上
   (全層雪崩)積雪70cm以上で、最高気温が平年より5℃以上高い、または降水量
         が15mm以上
 (2)90%以上が面発生表層雪崩。弱層の存在と上載積雪の量が発生要因。積雪の駆動力
  (引っ張り力、圧縮力、剪断力*)が弱層の抵抗力(引っ張り応力、圧縮応力、剪
  断応力)を上回ると発生。
  積雪には斜面の下方に進もうする動き(沈降と匍行)があり、上部で圧縮力、下部
  で引っ張り力、積雪層の上部で剪断力が働く。これらが雪崩を発生させる力。それ
  に耐えようとする力が応力。弱層の破壊で応力のーつまたは全てが損なわれると雪
  崩が起こる。
  *[剪断力]上の積雪層は下の積雪層より速く匍行する。上の層が下の層と剥離し
   て滑り落ちようとする力。
 (3)斜面(特に沢)のトラバース、荷重(人)の集中は危険(雪崩誘発行為)
  沢筋、雪庇下部(縦の層)、吹き溜まり(弱層上の上載荷重の増大)、風下の風成
  雪(風で砕かれた雪が強く固い面を層で形成する。荷重でひび割れて雪崩れる)は
  要注意。快適にスキー滑降ができる斜度は危険。
 (4)ルート採りのセオリー・・・尾根、樹林帯(上部の状況による)、露岩付近。
 (5)深い弱層(スキーで50cm、靴で70cm〜80cm)まで通行者の影響(圧力)が及ぶ。
 (6)現在地だけでなく、上部の状況(斜度、雪庇の有無)にも注意。
 (7)危険斜度20度以上。最多35〜40度。マジック38(斜度約80%)。常に斜度を計算し
  て行動することが大切。

                 ー 1 −


3.雪の知識
 ・雪の結晶は水蒸気が凝結したもの。
 ・積雪(積もっている雪)と降雪(降ってくる雪)
 ・積雪はどんな温度下でも、圧密・焼結、(昇華)蒸発・(昇華)凝結、凍結、融解
  によって変化していく。これを雪の変態という。
 ・雪は適度に湿っている(水分が少ない)と強い結合力の雪に変化するが、水分が多
  すぎる*と粒子の球形化が進み、流動性力が高まる。
    *「非常に湿っている(握ると水がしみ出る程度)」または「スラッシュ<水
    べた雪>(水分が多く、隙間の大部分が水で満たされている)」状態。
 ・雪の変態(3種)                       (図2−2)
 (1)しまり雪へ…圧密・焼結(昇華蒸発一昇華凝結)*による。0℃以下、温度変化小
        での乾いた変態)[弱層にならない]       (図2−3)
   *[圧密]上に積った雪の重みで圧縮されて密度が大きく(雪粒同志の接触が
     大)なっていく変化。
    [焼結]積雪内部で、接触する雪粒の、温度の高い部分や凸部で昇華蒸発、低
     い部分や凹部で昇華凝結(氷点下では氷が溶けなくても蒸発、凝結する)が
     おこっていて、最初は単に接触していた2つの雪粒の角の部が蒸発して丸く
     なり、凹部に凝結して、接合部が堅固に発達する変化。  (図2-2-a)
 (2)霜ざらめ化…同じ0℃以下の乾いた変態でも、温度変化が過大で雪粒子間に大きな
        温度差が生じた時は、蒸発一凝結により霜の結晶(霜ざらめ)に変化
        する。
    [弱層になる]
 (3)ざらめ化… 融解で、雪粒の連結が切断または細くなって弱まる。融解水が雪粒の
        凹部に凝集し球形化して、涸ざらめに。 (0℃以上、水による変態)
    [このままだと弱層だが、変態のあと0℃以下になると乾きざらめ(堅固なざ
    らめ雪)に変わり、弱層にならない]

4.弱 層(weak-Iayer) 
 ・結合強度が小さい雪結晶からなる数mm〜数cmの薄い層でもろい。5っの生成要因。
  すべて表面付近で形成される。上載積雪の重さが弱層の支持力をーヒ回わると弱層
  が破壊され、表層雪崩を起こす。しかし、弱層も永久でなく、変態により強固な層
  に変化していく。                       (図3−6)
 (1)降雪結晶(広幅六花)…無風下で雪結晶に雲粒や壊れた雪片が着かずに積もる。結
  晶同志の連結が弱く、焼結が進みにくいため、長時間弱層として振る舞う。
                           (図3-2,3-3 写真3-2,3-3)
 (2)表面霜…放射冷却(地表面から、上空に向かって熱を放出して冷却する現象)時、
  空気中の水蒸気が積雪表面に凝結して成長する。高湿度(90%以上)、微風(水蒸
  気を運ぶ)と合わせて3つが条件。一夜で形成。固く角張っていて連結部が細いの
  で圧密一焼結が進みにくい。縦に連結するが横の連結が弱く強度が小さいため、長
  時間弱層になる。                      (図3−2)

               ー 2 −

 (3)霜ざらめ…少量の降雪(1〜3cm)、昼間の日射、夜間の放射冷却の3つが条件。
    温度差による蒸発、凝結。表面霜と同様、一夜で形成される。角張った形状の
    ため焼結が進みにくい。南斜面で形成されやすい。     (図3−1)
 (4)あられ…降雪中、過冷却の雲粒(-30℃でも凍らない1/100mm 以下の微水滴)が雪
    結晶に付着して凍結したもの。固くて、圧密されにくいため、長時間弱層とし
    てとどまる。                      (図3−4)
 (5)濡れざらめ…イ.雨で濡れ大粒球形化→雪粒同志の結合が弱まる→濡れざらめ。
        ロ.積雪表面に日射→溶解→濡れざらめ。     (図3−5)
   ・気温低下→一転強固なざらめ雪…弱層にならない
   ・直後に大量降雪→斯熱性で寒気侵入せず→濡れざらめ(弱層)
    (この弱層は水分が下方へ浸透したり、寒気で凍結して、結合の強い堅固なざ
     らめ雪に変化するので長続きしない)

5.雪崩の種類
 (1)分 類           (2)         (3)
         (1)  ・・点発生表層雪崩・・・点発生乾雪表層雪崩
     ・・表層雪崩・・          ・点発生湿雪表層雪崩
     ・      ・
  雪崩・・      ・・面発生表層雪崩・・・面発生乾雪表層雪崩
     ・                 ・面発生湿雪表層雪崩
     ・・全層雪崩
     ・・氷雪崩
     注(1)すべり面の位置:積雪内部(表層) 地表面(全層)
      (2)発生の形:一点から(点発生) 広い面が一斉に(面発生)
      (3)雪の乾湿:始動積雪が水気を含まない(乾雪) 水気を含む(湿雪)
 (2)[表層雪崩(surface-layer avalanche)
  イ.点発生表層雪崩
  ・積雪表面の一部分が安息角(雪粒が自然に崩落する臨界角度。雪質、温度、含水
   率により変わる)をこえて崩れ、周囲の雪を巻き込んでいく雪崩。積雪表面から
   発生するので弱層テストでは危険性の判断ができない。急斜面でおこるので雪が
   流れやすいかを調べるのが簡単で確実。雪の塊を投げたり蹴ったりして、その刺
   激で周りの雪を取り込んで流下していけば危険、ブロックがすぐ止まれば安全と
   いえる。面発生に比べて規模は小さいが沢が合流する狭い谷の下部などは注意。

   <点発生乾雪表層雪崩>
   急斜面、寒冷、数cmの降雪(結合力の弱い降雪結晶)が発生条件。雪崩雪は軽く
   一般に小規模。

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   <点発生湿雪表層雪崩>
   降雪後の強い日射または急激な気温上昇、多量の降雨が条件。融解や雨で雪が多
   量に水分を含み流動性を高めるため。表層の雪を握ってみる。水がしみでる位だ
   と要注意。乾雪に比べて雪の密度が高く、雪崩の衝撃力大。デブリは堅く重い。
  ロ.面発生表層雪崩
  ・弱層を境に、上載積雪が面状に崩落する。雪の重みや登山者の刺激で弱層が破壊
   されて発生する。雪崩遭難の9割を占める。ほとんどが登山者の誘発。前兆無く
   発生。規模、破壊力大。弱層が、しまり雪の間にサンドイッチされている状態で
   発生。テスト(弱層の状態、積雪量、気温の変化、風等の総合的判断)が有効。
 (3)[全層雪崩1(full-depth avalanche)
  ・積雪全層が地表面から崩壊する。春先、気温が上がると、自然発生する。融雪水
   や雨が浸透して地表而を滑りやすくするもので、底に霜ざらめ層があると雪崩の
   危険はさらに高まる。(雪粒が濡れて球形化し結合力が弱まる)
  【特徴】
  ・(1)急斜面(2)積雪量が厚い (3)気温0℃以上で雪が解けているの3っが発生条件
   で、前兆現象がある。雪が地面の上をゆっくりと滑り始めるので、発生域ではク
   ラックが、斜面下部ではこぶ状の雪皺が生じることが多い。クラックや雪皺が見
   られたらその下方を通過しないことが最良の対策。(見通し仰角24度までデブリ
   到達の危険)
  ・全層雪崩に限って、気温が低下し、融雪が止まった夜間や早朝は安全と言える。
 (4)[スラッシュ雪崩](ゆきしろ)
  ・スラッシュ(水べた雪)は多量の水を含んだ雪と水の混合体で流動性が高い。降
   雨、急な気温上昇、氷盤(地表面の凍結)が条件。20度の緩斜面でも発生する。
   大規模。富士山が典型で、凍土が融雪水の浸透をさまたげてスラッシュを形成す
   るため表土を巻き込んだ大規模なスラッシュ雪崩が起きる。
 (5)[氷(河)雪崩](ice avalanche)
  【発生原因】
  ・懸垂氷河(hangjng glacier)(懸崖に垂れ下がるように張り付いている氷河) の末
   端部で氷塊が重力で崩落或いは剥落し、斜面に衝突した衝撃で粉砕されて流下す
   る。クレパスから剥離することが多く、流下時爆風を伴う。規模、被害とも大。
  【対策】 
  ・走路と判断される斜面への入域を避ける。
  ・氷河の流下が発生原因だから安全な時間はなく、夜間の報告事例も多い。
  ・懸垂氷河の末端付近にクレパスが見られるときは警戒を強める。
  ・堆積域に氷ブロックが散在すれば氷雪崩の常習地との考える。
  ・多量の降雪後の雪崩は予想以上に遠くまで到達する。
  ・20m程度の小山では防壁として不十分。



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6.雪崩の諸データ(北大研)
 (1)発生形態
  表層雪崩97% 全層雪崩2% 複合1%(284件)
 (2)きっかけ
  自然発生38% 人為的誘発62%(262件)
   (人為的誘発が90%以上というデータもある)
 (3)発生時天候
  吹雪・雪56% 雨2% 曇り16% 晴れ26%
   (降雪時以外でも4割の発生率)
 (4)発生時刻
  日中94% 夜間6% 
   (時間的な特徴はない。行動の少ない夜間でも6%の発生率)
 (5)発生方位
  風上斜面(SW−N)36% 風下斜面(NE−S)64%
   (卓越風向WNW 。データ数 197件。福沢卓也1993年)
 (6)発生月別
  10月  11月  12月   1月   2月   3月   4月   5月   合計
   2    12    50    63    28    87    25    30    297件
   0.7   4.0   16.8   21.2   10.6   29.3  8.4   10.1   100%
   (月別の因果関係はない。春、正月休み、GWなど山行機会の多さに比例)
 ≪発生斜度 (勾配:度。日本、米、スイス100 例。雪崩の平均層厚1m)
  (1)35〜40 50%, (2)30〜35 25%, (3)40〜45 21%,
  (4)45〜50 3%, (5)25〜30 1% 
 ≫生還率 (掘出までの所要時間)
  (1)15分以内=97%、(2)45分〜90分=26%、(3)120 〜180 分=5%
  (スイス・332 人。6時間経過でも生存例あり。諦めないこと。ただし、45分は窒
   息の、120 分は低体温障害のリミット)        (図7-1-1,7-1-2,8-1)
 √デブリの到達距離…発生点への仰角(見通し仰角)(高橋経験則)
  ・表層雪崩  18 度地点まで ・全層雪崩  24 度地点まで    (図5-1,5-2)

7.雪質観察
 ・層の確認…弱層の有無、層の向き。・
  (着色で鮮明に。メチレンブルー(粉末を溶かす)霧吹き、バーナー、ハケ)

8.弱層テスト(ハンドテスト、スクラムジャンプ、スキージャンプ)
 ・実施することが重要。弱層の有無だけでなく、その性質、位置、上下の雪の状態、
  さらに気象条件の数日間の継続的な変化などを勘案した総合的な判断が必要。
 (1)ハンドテスト 直径30c重、高さ50〜70cmの雪柱。上部から力を加える。主観的。

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 (2)スクラムジャンプ (Rutsch--block test ルッチブロックテスト ブロック滑粉テ
   スト) 
  幅2m、奥行1.5m、高さ1.5m〜2mのブロック状に掘り下げる。背部はコブ付きロー
  プまたはスキー板で切れ目を人れる。山側の端にのってジャンプ。 (図4−3)
 (3)スキージャンプ ルッチブロックテストの簡易版。幅はスキーの長さ、奥行はスト
  ック長、高さ50cm (靴またはスキー板が沈んだ底から) の小ブロックに留める。
  ー人で10分程度で可能。実戦向。
 (4)雪崩危険度
       安定度   ハンドテストの目安  ジャンプテストの目安
  評価 1.安定    腰でひく。 崩れず  2回ジャンプ。崩れず
     2.概ね安定  腕で抱えて。剥がれた 1〜2回ジャンプで崩れた。
     3.結合悪い  手首で引く。剥がれた 乗ったら崩れた。
     4。非常に悪い 雪柱製造中崩れた   ブロック製造中に崩れた。
    [テストに基づく行動判断基準]
  評価 1.雪崩発生の危険小さい。行動可能。
     2.危険(小) 急斜面に多人数が同時に入ると危険。行動注意。
     3.危険(中) 斜面に一人でも人ると雪崩れる。行動不可。
     4.危険(大) 接近ずるだけで雪崩れる。

9.捜 索  (時間との勝負。セルフレスキューが基本)
 (1)事故発生時の初期動作
  1.安全確保(二次発生防止。デブリが再び雪崩れることはないが、別の斜面から
    の発生はないか)
  2.現有の人数、装備、技術で何が出来るか。
  3.遭難点、消失点の確認。
 (2)セルフレスキューの組織
  1.リーダー、捜索班、伝令者 (2名) の決定
  2.サポート体制
    ・見張り (避難ルート確保)
    ・設営 (ツエルト、加温準備)
    ・記録(現場見取図)、通信、ルートエ作
      (構成人数はメンバー数により調整)
 (3)埋没位置の推定(埋没の可能性の高い場所)
  イ.デブリの末端 ロ.遭難点と消失点を結ぶ延長線上 (図7-2-2)ハ.樹木・岩
  の下部、傾斜が変化する区域 (図7-2-3)ニ.曲がり角の外側 (図7-2-4)
  このほかに、テントや雪洞が襲われた場合は元の位置に埋没することが多い、比重
  が重いほど遠く深くへ (例えばピッケルは人より下方で発見される) 、雪崩速度の
  速い中央部の遭難者は深く埋没する、遭難者が泳ぎ、もがく脱出行動をとれば、埋
没は浅く、逆に意識を失っていると深く埋没する、などの性質がある。最悪の場合は呼
吸空間を確保する。(図7-2-1)
                 − 6 −


 (4)捜索開始
  イ.ビーコン捜索(15 分以内) …捜索者は受信モードに。
  ・[電波特性]電波発信は1秒間隔。アンテナと平行に左右に相似楕円を描く。 
  ・最大受信距離(縦方向の電波到達範囲)50〜100m (オルトボックスで80m)、最小
   受信距離(横方向の電波到達範囲)15〜20m 。つまり、縦方向により遠くとぶ。
   従って発信ビーコンと受信ビーコンが直角に位置すると、最小受信距離ので感知
   になる。                        (図6-1-1,6-1-2)
  ・複数捜索の場合は発見の都度オフモードにする。(他の埋没者捜索に支障。但し
   安全地帯への搬送は再び発信モードで)
  ・電波誘導法がベター(性能向上による)。体の正面に構え、体を振る。1秒以上
   停止。2mレンジ(ピンポイント)に入ったらビーコンを雪面に近づけて信号の
   強いと思われる所を直ちにスコップで掘るかゾンデ棒で探る。
  ロ.ゾンデ捜索…多人数の本格的捜索の場合に有効
  ・横一列で下流から上流に進む。捜索者は30cm間隔、前進幅60〜70cm。リーダーの
   号令で体の中心1ケ所(スピードゾンデ)、または中心と両足先の3ケ所(三点
   ゾンデ)に鉛直に2m刺し込む。二点法もある。
  ハ.スカッフ&コール(足踏み、呼び掛け)
  ニ.遭難者の掘り出しと処置・・・気道確保と保温・加温がポイント
  ・頭から掘り出す。
  ・口、鼻の雪を掻き出し気道確保する。雪を体の回りに薄く残した状態でシートを
   掛けるなどして保温に努める。
  ・確実に低体温症状を示す。急速加温不可。動脈(脇の下、そけい部、首)及びコ
   ア部分を加温。 (図8,8-2)手足のマッサージも厳禁(四肢の冷えた血液が流れ
   こみ心臓停止の危険)。
  ・意識なしは蘇生法 (気道確保(無呼吸)人工呼吸(心停止)心マッサージ) 。
  ・首、手足の異常確認(外観では分かりにくい。慎重に扱う)。安全地帯への搬送
   時もショックを与えな・ 、ように極めて慎重に。とくに頸椎保護が重要(死亡の
   大半がレスキューデスという報告がある)。
   *レスキューデス…搬送で動かすことによって遭難者がうけるショック(痛み、
    出血或いは冷えた血液の心臓への強制流入等)を原因とするショック死。

10.搬送方法(プルアップ、プルダウン、背負 (八シート、ツエルト) (別途)

11.危険地帯の行動判断
 (1)樹林帯のルート
  樹林帯内で一部分が坊主だったり植生が少ない場合は、雪崩通路の可能性。
  上部または下部を迂回するのが原則。              (図5−3)
 (2)疎林帯のルート
  ルート上に危険地帯(急・大斜面、雪庇)を避けて、尾根状の高い所にルートをと
  る。(全体の状況から総合判断)                (図5−4)
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 (3)危険地帯の通過方法                      (図5−5)
  (通過前)・弱層テスト実施
       ・安全ルートの確認(雪崩走路・退避方向予測)
       ・ザックのベルト、スキーの流れルめ等を外す
       ・ビーコンの発信の再確認
       ・状況によりロープで確保
  (通過中)・一人づつ、静かに、停止せず、速やかに通過する。
       ・待機者は通過者と斜面上部の状況、まんいち流された場合はその方向
        を監視する。
 (4)視界がきかない場合
  安全地帯や斜面上部の状況が読めない場合は撤退するのが原則。やむを得ないとき
  には間隔を開けて (状況により15m〜20m) 行動する。
 (5)雪庇のでた尾根
  尾根の高みの内側を通過するのが鉄則。平坦なら中央より内側。、雪庇直下は弱層
  ができやすく(風成雪)、縦層もあって雪洞造りは危険。     (図5−7)

                                   以 上

                 − 8 −
 
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